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四天王ゾニカル・カスタム(3)

 砲撃手(ガンナー)が左右に展開。援護からの鋭い突進のあるビストミアを先行させシラオファが続く。最後にセーウェンのダメ押しでどちらかを押し切ろうと考えていた。

 ところが、赤と灰色のアームドスキンはビームを弾きつつ両サイドに分かれて障害物(スティープル)の林に消えていく。策を弄するまでもなく、自ら連携を断たれた形。


「どういうことだ? そんな会話はあったのか、コマンダー?」

 すかされた格好のシラオファは訊く。

「ああ、それぞれに敵を引き込んで始末するといった打ち合わせがあった。やはりパシャとスニルが電子戦カスタムであるのは見抜かれてる。下手に傍受されるくらいならパイロットスキルの差で勝負する旨の発言だ」

「別個に動くということだな。ならば乗ることはない」

「もちろん手管に掛かるのは愚策だ。どちらを攻めるかだが」

 逆に難しいところ。

「ドローンは付けてあるか?」

「いや、意表を突かれて見失った。捜索するなら片方に振り向けたほうがいい」

「了解だ。では、レギ・ソウルを攻める。ゲリラ戦をやられるとヴァン・ブレイズは難しい」

 リーダーとして判断した。


 格闘士(ストラグル)タイプのミュッセルはスティープルの中でもよく動く。戦力を集中しても同士討ち(フレンドリファイア)を狙われる危険性がある。


(ならば先にグレオヌスを落とす。ミュッセルは孤立させてからビームであぶり出せばいい)

 あとからゆっくり料理すると決める。


「では、敵チーム帯域にジャミングを。相対位置情報だけ消してしまえばなにもできない」

 電子戦での勝ちパターンに入っている。

「奴ら、無謀にも索敵ドローンも使ってないからな。レーザー回線も気にしなくていい」

「スニル、残ってヴァン・ブレイズを警戒しろ。発見したらただちに報告」

「了解」


 無警戒とはいかない。動きだけは把握しておきたいが無理をするほどではない。砲撃手(ガンナー)を一人残して合流する気配を探る。


「これほど速やかに情報遮断されるとまでは思っていなかったのだろうな」

「ゾニカルの電子戦能力を侮っていたんだろうよ。どう足掻こうがプライベーターにすぎない。ヘーゲルのサポート受けているにしても、あそこも新参だ」

 コマンダーは知識も技術蓄積もないと指摘する。

「では、まずレギ・ソウルを捕捉しよう。まだ見つからないか?」

「見えないな。リングエッジに陣取るのは悪手だと思うが後背を狙われるのを嫌って寄ったのかもしれない」

「ならばミーアを走らせよう。俺も動く」

「待て」


 コマンダーに止められる。新たな情報があった様子だ。


「電波発信源を確認。レギ・ソウルだと思う。予想外の状況に救援を要請しているのか? 強めの発信で打開しようとしている」

「どこだ?」

「ポイント送る。エッジ付近だ」


 自ら包囲されるような位置に逃げていた。情報遮断は大きな心理的ダメージになったようだ。若さが出ているとシラオファは思う。


「包囲する。全機、フォーメーション」

 指示を送る。

「スニル、ヴァン・ブレイズは確認できたか?」

「視認しました。追尾中です。ポイント送ります」

「よくやった。等距離を保って追尾続行。攻撃する必要はない」


 応答を聞いた彼は戦況パネルを確認。ほぼ反対側の位置にミュッセル機のシンボルアイコンが表示されるのを確認する。万が一に備えてシステムに接近警報を命じてから包囲フォーメーションの位置取りへと移動した。


「ミーア、そのまま右回り。俺が左へ。交戦開始で攻撃に入ってくれ、セーウェン」

 包囲の段取りをする。

「了解、ラオ」

「では、交戦まで控える」

「レギ・ソウル確認。正確な位置送る」

 コマンダーの操る索敵ドローンがグレオヌス機をキャッチ。

「パシャ、狙点は任せる。牽制程度でいい」

「あいよ。三機もいると隙間がないからさ」

「それでいい。では接触する」


 順調に思えるのになにか不安感がよぎる。おかしな空気が流れていた。原因を探ると答えはアリーナにある。

 よく見れば観客が口元を押さえる様子がうかがえる。最強レベルの防御フィールド越しに小さな笑い声がわずかに漏れてきていると感じた。


(なんだ? なにがおかしい? なにかミスってるか?)

 緊張感が神経を鋭敏にさせる。


「ギュリっ!」

 そんな音がかすかに耳に届く。


 困惑して背後を振り返ると、ゆっくりと接近してくるセーウェン機の前に赤い機体が落ちてきた。即座に放たれた拳がブレードを構える右手を叩く。弾けた腕の中にヴァン・ブレイズが入り込む。低い位置からの拳打がフロントハッチの下を捉え跳ね飛ばす。


「くぅお!」


 耐えられたのはセーウェンのジーゴソアが重装カスタムをしていたお陰にすぎない。地面でバウンドする様子が衝撃の大きさを物語っている。


「なんでだ!」

「えっ!」


 ゾニカル・カスタムは一気に混乱した。誰一人、現状を把握している人間がいない。正確には一人を除いて。


(アイコンはそのままか!)

 戦術パネルのヴァン・ブレイズの位置は変わらずリングの反対側。


「スニル、なぜ見落とした!」

「はい? ヴァン・ブレイズなら現在も追尾中です」

「馬鹿を言うな。今、俺の近くにいるぞ?」


 シラオファはなにがなんだかわからなくなっていた。

次回『四天王ゾニカル・カスタム(4)』 「いつから貴様のチームメイトは幻影使いになった?」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 相手(四天王)はある意味王道だから?
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