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クイーンの証(3)

「機も熟したようです! では試合を始めましょう! ゴースタンバイ? エントリ! ファイト!」

 フレディ・カラビニオの軽快なコールで開始のゴングが鳴った。


 五機のホライズンはエナミが事前に周知していたとおり全員で左の障害物(スティープル)エリアへ。相手の索敵ドローン()から外れたところで配置転換をする。


「ミンとサリの配置よし。ビビ、前面に」

「承り」

 目立つよう大胆に動かす。

「どんな感じ?」

「追ってきてる。1、2番機先行。3、4、5は広域展開」

「網を広げてきたわね。少し揺さぶる?」

 ビビアンは彼女の意図を読んでくる。

「いいかも。あまり露骨なのもね」

「サリ、ミン、ついてこれる?」

「承り」


 ただの確認作業だろう。元から指揮棒振り(バトントワラー)のビビアンの要望に応えられなければフラワーダンスの後衛(バック)は務まらない。


「相対位置注意。エナ、両サイドガンナーマークよろ」

「承り。スティープルデータ反映から予想射線までまわす」

「ありー」


 ラズ・ガイステは正面に前衛砲撃手(ガンナー)二機を置き、スピードで敵チームの前衛(トップ)の各個撃破を狙う。後衛(バック)砲撃手(ガンナー)三機のうち一機は前衛の背後に配置。残り二機が両翼に展開してターゲット以外のアームドスキンを牽制して網の中に入れる作戦だ。


「ビビ、速度予想範囲内」

「ラジャ」

「接敵までカウント。(スリー)(ツー)(ワン)、ゼロ!」


 サリエリ機のガンカメラで前衛ガンナーの動きも監視していたので戦況パネルは充実している。エナミは三基目の索敵ドローンを持っているようなものなのだ。

 さらにミュッセルにねだってマシュリからせしめた高速解析ツールがある。ビビアンのホライズンのモニタには、センターおよび両サイドの砲撃手(ガンナー)からの開放射線が模擬的に黄色で表示されているはず。


「せやっ!」


 ビビアン機はアングル型スティープルを迂回し即スライディング。胸の高さをビーム狙撃が通過している。体勢を崩すと踏んでいた前衛ガンナー二機は慌てる。


「どういう目をして! いや、どうやって!」

「避けるしかないじゃない。どっかの誰かさんみたいにビームを斬ったり殴ったりできないんだもん」

「それでもねっ!」


 スライディングから即座に姿勢を立て直したレッドラインのホライズンに正対するのを避けるバモンのヨゼルカ。ビビアンの砲口のフェイントだけで翻弄されている。


「ピート、まわり込め」

「無理だって。狙撃来てる」

 二機ともレイミンとサリエリの的になっている。

「ちっ、射線分析。ステルとニッシュに牽制させろ」

「きっと無理」

「む?」

「なんでリィもウルもここにいないと思ってるの?」


 ビビアンの言うとおり、両翼ガンナーをエナミがマークしていたのは誘導するため。スティープルエリアに入ると同時に離れた二人は外側を迂回して網の裏側にまわっている。


「ま、マークは!?」

「見失ってる。ヤベ、今確認した」

「冗談だろ!」


 遅れて確認したのは両翼ガンナーがユーリィとウルジーに接敵したからだ。エナミが置いている二人の機体カメラにも二機の様子が映っている。


「逃さないのにゃー!」

「げぇ、速っ!」


 バックを取られたスニル機が離脱を試みるも、すでにトップスピードに入っているユーリィ機の疾走には敵わない。即追いつかれる。動きの良くなった足周りのお陰でどうにか耐えている状態。


(そんなに時間は掛からない)

 確認する必要も感じない。


「もらー」

「勘弁しろよ!」

「駄目ー」


 棒高跳びを決めたウルジー機がヴァニシュラのヨゼルカの逃走路の先に着地。慌ててブレーキを掛けるがスティックの間合いの中に飛び込む形になっていた。


「スパイラルショットぉー」

「また技の名前違うじゃねえかぁー!」


 ツッコミを残してリクモン流掌底撃を喰らう。跳ねた機体が転がるともう動けない。


「あーっと、バイタルロスト! 早くもラズ・ガイステは一機……、と言ってる間に二機目も落ちたぁー! 途端に窮地ー!」

 リングアナがユーリィの結果も伝えてくれる。


「お疲れ、リィ、ウル。もう一機もお願い」

「うけたまにー」

「うい」


 言うまでもなく動きだしている。各機の戦術モニタパネルにはラズ・ガイステ全機の位置が映っている。迷うまでもない。


「ビビ、もう狙撃は気にしなくていいから二つ落として」

「そこまで欲張らないし。振りまわすから良きところで」

「ラージャっ!」


 後ろの二人に任せるらしい。とはいえ躱さねば当たる一射を重ねていく。完全に翻弄された新参ショートレンジシューターは一機ずつ狙撃に倒れていった。


「スピンドルブラストぉー」

「うっぎゃあー!」

「名前のバリエーションは豊富に取り揃えておりますのにー」


 後衛ガンナーも片づいたようだ。結局、試合は計算どおりに終わる。


「リミテッドチーム『ラズ・ガイステ』、全滅ぅー! なんと試合開始から五分も経っていないぞー! 圧倒的戦闘力の差でチーム『フラワーダンス』が五回戦を突破ぁー! これをジャイアントキリングと呼んでいいかさえわからないほどの強さでーす!」

 フレディも興奮気味に実況する。


「見事にはまりましたわね、エナ?」

「はい、上手くいってよかったです。明日は休養できるので、少しは体力、精神力ともに復活できるかと」

「まだ厳しいスケジュール続くけど頑張ろうね」

 ラヴィアーナ、ジアーノと握手を交わす。


(かなり短縮できた。いい感じに進められてる)


 エナミは胸を撫でおろした。

次回『学年末の教室(1)』 「じゃあ、ミュウ、説明してあげて」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 ビームを殴る……比較対象が、ね?
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