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クイーンの証(1)

「圧倒的力の差を見せつけた女王杯・夢一回戦勝利から一夜明けてまたもやリングに再登場はチーム『フラワーダンス』!」

 リングアナの呼び込みが掛かる。

「彼女たちの快進撃はどこまで続くのかぁー! 今や留まるところを知らずぅー!」


 タイトスケジュールの連戦が始まったビビアンたちは休んでいる暇もない。この五回戦から六回戦準々決勝までの間が一番ハードである。


(とはいえ組み合わせはマシなほう。次が順当に行くと四天王『フローデア・メクス』との対戦になるけど、できるだけ短時間試合でクリアしていけばどうにかなる計算……、というか希望)

 ここ一週間が勝負である。

(それに比べて、ミュウたちなんて順当なら毎週末四天王と対戦していくんだもん。『ナクラマー1』を突破したから今度は『ゾニカル・カスタム』? 勝てば次は『テンパリングスター』? 正気の沙汰じゃないわ)


 そこを勝ち抜いてきたら皮肉にも再び決勝でフラワーダンスと対戦することになる。お互い、消耗しきった状態での試合になりそうで微妙な気持ちになった。運命とは悪戯なものである。


(まあ、なんとかなるでしょ。あいつもあたしもパイロット馬鹿。試合になったら疲れも忘れてハイになっていつも以上のパフォーマンス。で、終わったらダウンっと)

 苦笑いする。


 普通の人から見ればおかしな状態も平気になる。試合の次の日の朝、シャワーを浴びようと思って裸になったら絶望するのだ。青痣だらけになった自分の身体に。


(あいつに責任取らせようと思ったのに。今はすぐ消えるけど、大人になったら消えなくなったりするんだから)

 乙女の柔肌はデリケートなのだ。

(あれ? あたし、大人になっても選手やる気になってる。ミュウもグレイもたぶん、公務官(オフィサーズ)学校(スクール)卒業したら星間(G)保安(S)機構(O)星間(G)平和維(P)持軍(F)の機動部隊にそれぞれ入隊する気なのに)


 影響されてクロスファイトの世界に入ったのに、自分だけ取り残されてしまいそうでなんだか怖い。ビビアンや他のメンバーはふわっと将来は管理局アテンダントになるくらいの進路しか考えていなかった。それが今や押しも押されもせぬ人気クロスファイト選手である。


(ごちゃごちゃ考えてたらわかんなくなる。とりあえず集中)

 身の振り方など卒業までに決めればいいと思った。


(ノース)サイドからの登場はチーム『ラズ・ガイステ』!」

 メンバーコールは終わって気が付けばセンターのオープンスペースにいた。

「ガイステニアワークスの男子チームが女子チームからクイーンの称号を奪ったフラワーダンスに雪辱の一戦を挑む! 大手アームドスキンメーカーの誇りを懸けての勝負は彼らに軍配が上がるのかぁー!」


 女子のデオ・ガイステと同じアームドスキン『ヨゼルカ』が悠然と歩いてくる。汎用性が高く、乗り手次第でどうにでも化けると言われる機体だ。イオンスリーブも搭載されてさらに難敵となっているだろう。


(デオ・ガイステは早々にあいつらと当たって敗れてるけど嘗めちゃ駄目。エナの分析だとかなり動きは良くなってるしパワーも比較にならないって話だった)


 ラヴィアーナ主任も改修型ヨゼルカを高く評価している。ヴァン・ブレイズやレギ・ソウルと違って、慣れさえすれば誰が乗っても最大限の性能を発揮できる仕様になっているだろうと言っていた。ガイステニア社はそういう設計が非常に上手い。


「先頭を切るはバモン・ノット選手!」

 コールが始まる。

「彼は炎星杯からのコンバートで見事なショートレンジシューターに転身しているぅー! 果たして本家二刀流(デュアルウエポン)のショートレンジシューターとどちらが上か決戦のときだぁー!」


 注意すべき点はこちらのほうだとコマンダーのエナミは言う。ラズ・ガイステのエースはコンバートの成功例。かなり極めているとの分析だった。

 そして、続くピート・アガマン選手もショートレンジシューター転向組。バモンほどではないにしても十分走るヒットマンと化しているらしい。2トップが両者とも転向したチームは全員がビームランチャー装備となっていた。


(曲者だわ)

 絶対に単純な砲撃戦になるなどあり得ない。

(もしかしたら、後衛(バック)の三人だって)


 後衛(バック)は元から砲撃手(ガンナー)のジニュー・セルビー選手、ステル・パヴァーラ選手、バニシュラ・ビッコーラ選手と続く。彼らが走りだしてもおかしくない。

 現状その気配はないが、彼女たちに対する隠し玉として備えている可能性は捨てきれなかった。四天王ではないにしても要警戒チームである。


(女王杯に比べると、やっぱりメジャーの本トーナメントは軒並みレベルの高い相手ばっかり)

 リミテッドは伊達ではなかろう。

(流せるうちは女王杯(あちら)を流して、こっちに本腰入れないと足元を掬われる。まずは決勝まで着実に)


 チームブリーフィングでもそういう話になっていた。エナミも炎星杯にウェイトを置く方向で時間を割いている。この七日間でなんと六戦。ここを駆け抜けないと決勝へと駒を進められない。


(記録上はツインブレイカーズに勝利したことになってるけど、桜華杯決勝(あれ)は偶然の要素が多かった。本当の勝負を付けるにも再戦しないことには始まらない)


 ビビアンはゆっくりと息を吐いて集中力を高めた。

次回『クイーンの証(2)』 「できるだけスピーディーに終わらせたいです」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 フラワーダンスはこのままプロに!?
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