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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
クロスファイト戦国時代

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ポールマスター(2)

「ホンファイは同郷なのもあってね、困ってる彼女たちを見過ごせなかった」

 ビビアンが黙っているとウェンカイは続ける。

「皆をヘッドハントしてチーム運営を上申したらあっさりと通った。時期が良くもあったお陰でね」


 テレンキ社は自社のアームドスキン『カイナム』にイオンスリーブを搭載するとともにチーム運営を始める決断をした。そうしないとメルケーシンを含むセントラル宙区では生き残れないと判断したのだ。


「お陰でアバラン社は沈んじゃったけど」

 撤退の報を知るレイミンが皮肉を交える。

「仕方ないさ。あのコンプライアンススキャンダルはひどかった。そういうの特にうるさい地勢じゃないか」

「否定しない」

「ただし、僕の所為で彼女たちは女王杯には参戦できなくなった。それだけは申し訳ないと思ってる」

 フラワーダンスが彼女たちと争ったのは女王杯・虹であった。

「もうすぐ始まる女王杯・夢は断念してもらった」

「だから、別に構わないって言ってるじゃないの。ウェンカイには感謝してる」

「そうかい?」


 全員が女性でなくては参加できない女王杯の後期ももうじき並行して行われる。フラワーダンスはその『女王杯・夢』にもエントリしていた。元よりクイーンチームの参戦は義務のようなものである。


「そんなわけだから、お手柔らかに願いたいね」

 優男が言ってくる。

「加減はできない」

「そう言わずにさ」

「できるわけないじゃない、その編成で」


 ビビアンはわざわざホライズンの肩をすくめさせてみせた。


   ◇      ◇      ◇


 ビビアンが言うのはもっともだとミュッセルも思う。なにしろ新加入メンバー四人のうち二人がビームランチャーを装備しているからだ。


「確か、彼女たちは全員剣士(フェンサー)だったはずだよな」

 グレオヌスも渋い面持ち。

「おうよ。つまりはな、やってみて適正あった二人がショートレンジシューターにコンバートしたってこった。ただでさえ腕利き剣士(フェンサー)だったのによ」

「前みたいに、なんちゃってシューターじゃないよな?」

「そんな馬鹿する奴らじゃねえ。仕上げてきてるに決まってる」


 後ろに控えている、先ほどから発言していた元四人のまとめ役のファウナ、そしてもう一人ホンファイが砲撃手(ガンナー)に転向。ウェンカイと残り二人、ミッカとルイムが剣士(フェンサー)で前に布陣している。

 それも半ば迷彩でしかない。開始のゴングが打ち鳴らされたら全員が走ってくること請け合いである。


「まいったな。炎星杯はこんなことばかりになりそうじゃないかい?」

「だから言ったろ? 完全にぶっ壊れちまったのさ、チーム戦カテゴリのセオリーってやつがな」

「君の望んだとおりになってしまったわけだな」


 肩に肘を置いてくる相棒にミュッセルはニヤリと笑って返した。


   ◇      ◇      ◇


「涙なしには語れない身の上を持つビーガ・テレンキが今トーナメントに新たな旋風を巻き起こすか? それともフラワーダンスがチャンピオンチームとしての威厳を示すのか?」

 リングアナの煽りも激しい。

「負けろって言ってるみたいに聞こえるんだけど?」

「気の所為ですバレないうちに始めましょう! ゴースタンバイ? エントリ! ファイト!」

「バレるって言ったぁ!」


 フラワーダンスリーダーのクレームは通らないまま試合が開始される。ビーガ・テレンキのファウナは相手チームの開幕序盤の動きを目で追う。


(速攻阻止の牽制だけ入れてスティープルエリアに。この流れは彼女たちの鉄板ね)


 リーダーのウェンカイは急がない。事前に打ち合わせていたとおり彼がホンファイと、ファウナがミッカとルイムを先に立てて追撃する。これさえも実は迷彩である。


(急拵えでコマンダーを雇えなかったのは残念。でも、ウェンカイが予想外に策士だったお陰でフラワーダンスを崩せるかもしれない)


 彼はなかなかの手練れ。しかも、フラワーダンスのメンバーのスタイルに色濃く映るツインブレイカーズの色を読み取っている。ソロ時代にはあの紅の破壊者を翻弄して勝利したこともあったらしい。


(そこが弱点になると言ってた。強そうに見えて弱いところ。あの指摘は正しいと思えた)


 お膳立てが必要だ。撹乱すれば自動的に形が作れると推測している。まずは一押ししてみるところ。


「見えてる?」

「ええ、まだ。サリエリのチェックはお願い」

「ああ、角度のある彼女は野放しにできない」


 ウェンカイと彼女で一基ずつ索敵ドローンを使っている。画角にはターゲットの姿が明確に捉えられていた。双剣使いと並走しているうちは手出し無用である。


「僕が突っつこう。二刀流(デュアルウエポン)を見失うのは痛いけど仕掛けないと始まらない」

「任せる」

「ポイントを間違わないように」


 彼がチェックしている三次元スナイパーは双剣使いの猫娘とセット。そこを狙えば動きが出ると見越している。

 二刀流(デュアルウエポン)とバディはフリーにしてしまうが、まずは面倒なターゲットを落とす。均衡は破られるはずだ。


(動いた)


 ウェンカイのカイナム1番機の猛追に合わせてターゲットがルートを変える。遊撃した黒ストライプ(・・・・・・)のホライズンは神出鬼没の二つ名のとおり姿を消そうとしていた。


「ホンファイ」

「あーい」


 ロックしたターゲットのポイントを飛ばしたファウナは彼女と走りだした。

次回『ポールマスター(3)』 「なんてトリッキーな」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 棒術は刀剣術の基礎。 ……但し刃はついてないから……。
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