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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
クロスファイト戦国時代

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表彰式にて(2)

「ツインブレイカーズもシーズン内昇格でいよいよAA(ダブルエース)クラスですね? 意気込みは?」

「こんなもんじゃ終わらねえぞ。シーズン昇格も決めてやるには、次は優勝しねえとな」

「優勝宣言ですか。これは大胆ですね」


 昇格(クラスアップ)には二種類ある。今回、ツインブレイカーズが果たしたシーズン内昇格はかなり厳しめのポイント設定がされている。AA(ダブルエース)なら300ポイントだがリミテッドともなると800ポイント。メジャー7大トーナメントのうち四つを制してようやくというレベルのハードルの高さ。

 対して、シーズン成績クラスアップは少々甘め。リミテッドクラスでも500ポイントと、メジャー二つ制覇と幾つかの入賞、あるいはランク下トーナメントの優勝などで貯まる。


(確か次優勝すりゃギリギリってとこのはずだが)

 ミュッセルの記憶も怪しい。


 というのも、シーズン内昇格を決めると累積ポイントは減算される。シーズントータルのポイントは下がるのだ。丸っきりリセットされるわけではなく、計算が複雑なのですぐには出てこない。


「贅沢言うわね。譲りなさいよ。あんた、今回はとんでもない副賞まで受け取ってるんだもん」

「副賞?」

「ビビ!」

 即座に察したエナミが止めようとする。

「ふん、賞金で誓いのプレゼントくらいしときなさい。余所のコマンダー奪っといて忘れたら承知しないんだから」

「お前、馬鹿言いだすんじゃねえ!」

「はい? エナミさんが移籍を……」


 そこまで言ってプレゼンターのパメラも気づく。一人だけ真っ赤になっている少女がいたからだ。


「あらあら」

 ニンマリと笑う。

「もしかしてミュウ選手とエナミさんが熱愛ですか? これはスクープですよ」

「熱愛とか言うんじゃねえ! 付き合うことになっただけだ!」

「はい、言質いただきました。交際宣言のようです。いいですね、青春っぽくて」


 この展開は非常にマズいとミュッセルは思った。これに食いつかない誰かさんではない。


「おーっと、これはなんたる暴走!」

 予想どおりフレディが黙っていない。

「血縁とは関係ないとはいえ、星間管理局本部局長の孫娘のお嬢様に手を付けるとは無謀にもほどがあります!」

「手ぇ付けてねえ! 気持ちを確認し合っただけだっつーの!」

「しかも、お父上は現内務部長! 平然としていられるとは我々下々には信じられません!」

 貫くような舌鋒が続く。

「出てこい、フレディ! 一遍、拳で語り合おうじゃねえか!」

「これは遠大なる作戦か!? とうとう天使の仮面を持つ悪魔が宇宙征服に向けて、その牙を剥き出しにするのか!?」

「んなわけあるか、馬鹿野郎! 俺はユナミに首輪付けられてるようなもんなんだ!」


 例えは悪いが、民間治安協力官の権利行使条件からそうだと思っている。しかし、知らない人間からするとそうは聞こえない。


「例の件ですね?」

 ノリノリの声である。

「恐るべき悪魔は、ユナミ局長への協力の条件に孫娘を人質に差しだすよう仕向けたようです! 憐れなり、エナミ嬢! 彼女の未来は暗闇の向こう! 救いの手を差し伸べてあげたいところ! しかし、恐ろしくて誰も手が出せない!」

「そんなことありません!」

「ほう?」

 あまりの煽りの内容に黙っていられなくなったエナミだがそれはフレディの罠である。

「パメラさん、ここはお任せいたします!」

「承りました。エナミさん、ミュウ選手のどこが良かったのでしょうか? きっかけは? 最近はどこにデートに行かれました?」

「はぅ!」


 怒涛の質問攻めが始まる。アリーナは大盛りあがり。発端となったビビアンはどこ吹く風。他のメンバーも下手に間に入るとこじれそうで二の足を踏んでいた。


「運営、さっさとあいつの首に縄を掛けろ! 選手をオモチャにしやがって!」

「いえ、運営は関係ございません。これは個人的な興味と、お客様の好奇心を代弁しただけです」

 アリーナからは「そうだそうだ!」とヤジが来る。

「全周が敵だと? 下手な試合より怖えじゃん」

「運営は運営の仕事をしております」

「ああん?」

 急に仕事モードになる。

「一昨日の試合の模様はいつもどおり会員様には一ヶ月の無料公開となっておりますが有料コンテンツもご用意しました。全カメラ全シーン完全版、総尺百五十分におよぶ試合全容を網羅したノーカット版と、全てのドローン映像を使用した3D再構成バージョン百二十分が本日の試合日程終了後から販売開始で視聴可能となっております。皆様、奮ってご購入ください」

「俺たちをダシにしっかり儲けんじゃねえ!」

「こちら、運営費はもちろん、賞金の原資ともなっております」


 最大の口封じを放ってくる。彼ら二人はともかく他の選手は止めろとは言えない。


「だそうです! みんな、買ってね!」

 ビビアンが真っ先に日和る。

「あちきの活躍を観るのにゃー!」

「ちょっと格好悪いけど、わたしのシーンも観てください」

「最後の足掻きが勝利を呼んだの。観てね」

「よろー」


 フラワーダンスメンバーは愛想を振りまいている。開いた口が塞がらないとはこのこと。


「お前ら、裏切りやがって!」

「三週間後の炎星杯も頑張るからよろしくねー!」

「聞きやがれ!」


 グレオヌスに抱えられて制止されるミュッセルであった。

次回『変化する暮らし(1)』 「恥ずかしいぞ、お前ら」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 姦しさの前に勝てなかったか……。
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