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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
波乱の桜華杯

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コマンダー対決(6)

(逆手に取られた。ビビに張り付いてたドローンは見せ球)

 エナミは下唇を噛む。

(ここでビビを動かしてもあまり効果はない。場所は知られてる。背後に回しても挟撃で崩しは掛けられない。だったらどうする?)


 頭をフル回転させる。大逆転の目はない。それくらい周到に配置されている。そのままであればサリエリから落ちていくだろう。決断のときだ。


「みんな、高速機動戦に移行します」

 できるだけ冷静にはっきりと言う。

「承り!」

「全部は見れない。みんなの力が頼り」

「ラジャ!」


 ギャザリングフォースは省エネ戦法で下せるほど甘くはなかった。最大の切り札をここで切らされる。ツインブレイカーズ戦に向けて特訓していた秘策を。


「ミン、深めに」

 一番危うい局面から打破する。

「承り」

「サリ、よろしく」

「任せて。間合いが取れたら挽回する」


 サリエリに向けて殺到している3番機と4番機。そこへレイミンが駆け込む。まるでショートレンジシューターばりに。


「ちょ! マジ!」

 3番機のマルナ・ショルダンが動揺している。

「グリーンラインまでショートができるなんて聞いておりませんわ」

「マズ! メリル?」

「付け焼き刃? そうかもしれませんけども!」


 対処に戸惑う二機の剣士(フェンサー)。稼いだ時間はそれだけで十分だ。


(付け焼き刃なんてとんでもない。フラワーダンス(うち)はみんな走れるようになってるの)

 ツインブレイカーズ戦対策をここで開陳せざるを得ない。


 レイミンが土を蹴立てて走り込む。ブレードの間合いに入る直前でステップアウトしつつ連射。真正面からなのでリフレクタをノックしたのみで駆け抜ける。

 その間にサリエリがジャンプして背後のスティープルを蹴る。別のポール型スティープルに手を掛けて旋回しながら速射。3番機を跪かせた。


「やってくださいましたわね!」

「まだぁ!」


 サリエリは旋回の勢いそのまま二機の上空を飛翔している。4番機はリフレクタを上にかかげてビームを阻み、タイミングを合わせてジャンプしてくる構え。連射で抑え込む。


「ここですわ!」


 連射に耐えきった4番機がジャンプしようと身をかがめる。サリエリは空中で急激な姿勢変化はできない。


「もらい」

「え?」


 4番機にビームが直撃する。急ブレーキで停まったレイミンが脇抜きのビームランチャーで狙撃していた。胸部右に被弾したヘヴィーファングが反動で転倒する。


「ノックダウーン! 押し気味に見えていたギャザリングフォースの4番機がカウンターアタックを受けて脱落ぅー!」

 リングアナがここぞとばかりに絶叫。


 サリエリは通り過ぎてスティープルに横向きに着地。視界に3番機を捉えている。


「堪るもんかー!」

「逃さない」


 地を蹴って後ろ跳びに避ける3番機。サリエリのヒートゲージはまだ回復していない。


(使えて一発。使いどころ)

 そこへレイミンが戻ってくる。彼女のヒートゲージは余裕がある。

(間に合った。これで決まり)


 地面すれすれを仰向けで飛ぶ3番機は回避困難な状態。それでも踵をこすらせて急速旋回を試みてレイミンの連射を躱した。

 転がりながら躱しつづけるヘヴィーファング。しかし、その上空に影が落ちる。ライトの光を遮ったのはサリエリだった。


「こんなぁー!」

「手札切らせたんだから黙って落ちて」


 至近距離からの一撃は躱せない。胸の真ん中に直撃を受けた3番機は反動で地面にバウンドして、そのまま強制機動停止に陥る。


「さらに決まったぁー! サリエリ選手の三次元戦法が炸裂ぅー! 二機目がノックダウーン!」


 一気に形勢逆転に持ち込んだ。高速機動戦が綺麗にハマる。


「アリーナも驚いていますわね」

「ツインブレイカーズ並みの機動戦だってコメント飛び交ってますよ」

 ラヴィアーナもジアーノもしたり顔。

「たぶんあきらめてくれません」

「ですわね」

「まだ向こうの切り札が生きてるね」


(集中!)

 エナミは緊張を切らせずナビしている。

(1番機のウィーゲン先輩に2番機が付いてた。ビビをフリーにして、二機でうちの後衛(バック)を落としにきたってことは、5番機(ガンナー)は……そこ!)


 ビビアンにポイントを指示する。彼女は立て膝の姿勢に変わるとビームランチャーを安定させた。スティープルの隙間を狙って一射。林を縫うビームが抜けていく。


「なに? 狙撃を受けた?」

 ウルジーと交戦中のウィーゲンが口走る。勘は当たった。

「見破られてる。移動しろ」

「マジかよ。こいつら、神がかってやがる」

「バーネラとマルナが落ちた。まずは立て直す」


(神がかりとかそんなんじゃないの。これくらいできないと対抗できない二人がいるから)


 秘策は二つ。ビビアン以外の四人、特にサリエリとレイミンも機動戦ができるようになること。そして、ビビアンは砲撃手(ガンナー)レベルの遠方狙撃ができるようになること。戦局に合わせた臨機応変な対処なくしてミュッセルとグレオヌスに打ち勝つなど不可能である。


「5番機はしばらく不自由にしたから。ビビ、ゴー!」

「待ってました。承りっ!」

 ホライズン1番機が勇躍駆けだしていく。


 エナミは詰めの駒運びを始めていた。

次回『コマンダー対決(7)』 「簡単ではないぞ、二刀流(デュアルウエポン)!」

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― 新着の感想 ―
[一言] エナちゃん、わざと負けようなんてことが一瞬でも頭を過ったとは思えない素晴らしい采配……! (というか、あの考えをすぐに「いけない」と改められるのは、本当に芯の強い子の証ですよね!)
[一言] 更新有難う御座います。 まぁ、ツインブレイカーズは二機で翻弄出来るし?
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