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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
クロスファイト

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紅の挑戦権(1)

 ビビアンたち女子グループがグレオヌスを激励に来てくれている。ただし、そこは待機エリアであった。


「ここまで来ちゃうとはね。頑張って」

 フィットスキンの背を叩かれる。

「もちろん。応援に来てくれた君たちの期待に応えたいし。これからアリーナに上がるのかい?」

「ううん、今日はあたしたちも試合。金華杯のチームトーナメント三回戦なのよ」

「はい?」

 キョトンとしてしまう。

「そいつら五人のチーム、夕方のメインゲームはそっちだぜ。どうしてもチーム戦のほうが人気があっからよ」

「そうじゃなくてさ」

「あたしたち、チーム『フラワーダンス』。待機室のモニタで観てるから。その気になったらこっちも応援してね」


 ビビアンを先頭にユーリィ、レイミン、サリエリ、ウルジーと彼を激励していく。ミュッセルとも当然のように拳を合わせていた。


「知らなかった」

 唖然と見送る。

「わざと黙ってやがったからな。素人のわりに詳しすぎると思わなかったのかよ?」

「いや、クロスファイト競技そのもののファンなのかって」

「今日ばかりは同じサイドの待機スペースだからよ、誤魔化せなかったんだろ」


 グレオヌスがいるのは(サウス)サイドの待機スペース。そう言われれば、いくら知人でも入っていい場所じゃない。


「フラワーダンスかぁ」

 驚きのあまりフィットスキン姿の女子たちを無遠慮に凝視してしまう。

「あれでもAA(ダブルエース)クラスのチームなんだぜ。女子スクール生チームってことで男のファンがたんまり付いてる」

「可愛い子ばっかりだもんね」

「そうか?」

 親しすぎてピンとこない様子。

「だから運営も参加要請してんだよ」

「スクール生じゃ試合時間の調整、大変だよね。五人ともなると余計に」

「あいつらも結構本気だから、こっち優先すっけどな」


 オープントーナメントも三回戦となるとAA(ダブルエース)クラスでも挑戦者(チャレンジャー)サイドらしい。ビギナーのグレオヌスは当たり前にサウスサイドだし、同じリミテッドクラスと対戦するミュッセルも今回は抽選でこちらからの入場だった。


「そろそろだぜ。気合い入れていけよ?」

「もちろん。いよいよだ」


 レギ・クロウの手に乗ってσ(シグマ)・ルーンで命令信号を出す。腕が上がってアンダーハッチに足を付ける。地上のミュッセルに手を振ってヘルメットを被った。ワイドタイプのバイザーシールドは上げたまま。


σ(シグマ)・ルーンにエンチャント。(スリー)(ツー)(ワン)機体同調成功シンクロンコンプリート

 機体システムが同調をアナウンスする。

対消滅炉(エンジン)出力戦闘レベルまで上げ。機体各部チェック」

『出力を110%に設定します。コンディショングリーン。いつでもどうぞ』

「ありがとう」


 前の試合で敗退したアームドスキンが退場してきて、ゲートサインが入場へのカウントダウンを始めている。それに合わせてレギ・クロウを歩ませた。


「次なる入場は本トーナメント再注目の選手です」

 リングアナが徐々に声を張っていく。

「なんと、ビギナークラスでオープントーナメントの七回戦準決勝まで駒を進めたのは史上初! 驚きの成果を引っ提げて入場するのは『狼頭の貴公子』!」


 ルートを進むほどに声援が高まっていく。おかしな数字だったオッズも徐々に落ち着きを見せていたのだが、今回は再び異常値になっていた。それもそのはず、相手は同じ剣士(フェンサー)タイプながらリミテッドクラスである。


(皆がここまでだと思ってる。僕に賭けているのは一攫千金狙いのギャンブラーばかり。それも小額がいいところ。さて、彼らを後悔させてやろう。ここまで来たら負けられないんだよ)

 グレオヌスの意気も半端ではない。


「『ブレードの牙持つウルフガイ』!」

 二つ名まで増えてしまっている。

「グレオヌぅース・アーっフ選手ぅー! 剣技に酔いしれろとばかりに静かに入場です!」


 煽り文句まで半端ではない。彼は普通に礼儀正しく入場しているつもりなのだから。


「対するはクロスファイトの誇る剣士(フェンサー)! 『白銀の聖騎士(パラディン)』!」

 マットシルバーのアームドスキンが進んでくる。

「デぇロぉーリアぁース・トぉクぅーマキ選手ぅー!」


 いっそうの歓声が降ってくる。新参者のグレオヌスにはわからないが、かなりの人気選手だとミュッセルから聞いていた。


(チーム戦のトップも張る手練れって話だけど、どのくらいの腕前なんだろう)

 基準が正規軍の彼にはイマイチ把握できていない。

(全力で当たるまでだけどさ。今回ばかりは際どい技は使わず本気でいかせてもらう。たぶん気にするまでもないんだけど)

 接戦になれば否が応でも盛りあがろう。


「素晴らしい実績だ。君はいずれ僕のライバルになると確信しているよ」

 デロリアスが話し掛けてくる。

「それは光栄です」

「しかし、残念ながらここまでだ。クロスファイトソロの頂は高いものだと教えてあげよう」

「いえ、それは大丈夫です。友人のミュウがしっかりと叩き込んでくれてますから」

 一瞬の沈黙が挟まる。

「あの壊し屋を代表選手だとは思わないほうがいいね。品性に欠ける。毒されないうちにこちら側に来たまえ」

「ここは実力の世界でしょう? 分かつものはありませんよ」

「ふむ、忠告はしたよ?」


 グレオヌスはちょっと苛ついてしまった。

次回エピソード最終回『紅の挑戦権(2)』 「ライバルと認めよう。まさに好敵!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 リングアナも花形職業?
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