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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
波乱の桜華杯

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桜華杯準決勝(2)

 今度は順番が入れ替わっている。レギ・ソウルの影に真紅がちらつく。同じことをやってくるとは思えない。


「崩せ」


 勝手をさせれば受け手が疲労する。前衛のフューイとキュロムが進路上に突っ込み迎撃する。

 躱しにくい胴の高さでの横薙ぎをフューイが放ち、時間差でキュロムが斜め上からの斬撃を落とそうとしている。それで足は止まるはずだ。


「両手突き」


 ヴァン・ブレイズが胴の高さより低く滑って抜けている。その位置ですでに両手は掌底の形に。放たれた一撃がフューイを弾き飛ばす。


「はぎゅっ!」


 そしてレギ・ソウルまでもが低く抜けて構えを取る。切っ先が新月を描いて斬り落としを迎撃すると、ボディの下で虎視眈々と溜められていた左拳が唸りをあげた。


「ふぎゃっ!」


 キュロム機までもが跳ね転ぶ。カシナトルドの強靭な装甲なくしては一発で撃墜(ノック)判定(ダウン)を奪われかねない攻撃だった。


(しかしだ)

 体勢は変わりスピードは落ちている。


 そこへジェリコとメンメが追撃を掛ける。完全に崩れたほうに彼オレガノが追い打ちを掛ければ、さすがのパイロットスキルの持ち主でも対応しきれまい。フォーメーションが真の力を発揮するとき。


「眺めてんじゃねえ」


 ところが少年二人はジェリコとメンメの攻撃を避けざまに進路変更。オレガノ機へと攻撃目標を変えていた。


「なに?」

「あの程度じゃ崩せてねえんだよ!」


 反射的にかかげたリフレクタにはグレオヌスが同じくリフレクタをぶつけてくる。押しのけられて隙間を神速の突きが縫ってきた。逸らせるのが限界である。

 そこへ旋回しつつ低く忍び入ってきたヴァン・ブレイズ。烈火の肘打ちが躱しようのない胴体を貫く。猛スピードで衝突したかの如き衝撃が彼を襲った。


「かはっ!」


 視界がクロスファイトドームの天井に変わる。次に認識できたのはツインブレイカーズが入ってきた(サウス)サイドゲート。オレガノはもんどり打って倒れていた。


「たいちょっ!」


 殺到したメンバーが反撃してくれたお陰で追撃はない。もし追い打ちを掛けられていたらバイタルロストしていたであろう。


「大丈夫かよ?」

「平気だ」


 半分嘘だ。舌の根あたりで血の味を感じる。切れているのではないだろう。痺れによる錯覚だ。昏倒寸前までいったときに味わうもの。


「なんてとんでもない腕前(スキル)の持ち主?」

「まともじゃないわね。こんなの、どこの国軍の腕自慢にもいない」

 仕切り直しの合間にキュロスとメンメが焦りを見せている。

「今のをアドリブでやってる? それとも、こんな練習を普段からしてるとでも?」

「そんなん普通じゃないぜ」

「普通ではない相手なのはわかっていたはずだ。でなければレイディがあれほど警戒したか? 我らの中に残っていた侮りが生んだ結果である」


 悔いに身を任せていていい時間ではない。目の前にまだ()がいる。悠長にしていれば命がない。そんな感覚が呼び覚まされてきた。


殲滅(アニヒレーション)シフト」

「了解」


 隊員の声も締まりを見せる。完璧に実戦モードへと入った証拠だ。相手は訓練された兵士のなんたるかを味わうことになる。


「セット。コンバットオープン」

「ゴー!」


 本来なら攻守交代になる場面。フューイとキュロスが先頭に立って列をなし突進している。だというのに、ツインブレイカーズの二人までもが同じくダッシュを仕掛けてきた。


「無謀な」

 隊員からは試合として魅せるつもりは消えている。


 逆袈裟の一撃が赤いアームドスキンに躱されるのは計算済み。力場を消したブレードグリップをひるがえし肩口に落とすというエグみのある攻撃に変化。


(受ければ左の拳が刺さる)

 フューイは次手をひそませている。


「かひゅっ!」

 ところが悲鳴をあげたのは彼女だった。


 上半身を反らせたヴァン・ブレイズはそのままスライディング。前傾のカシナトルドの頭を膝で打ち抜き動きを止める。真下に入り込むと、そこで背中をこすらせつつ掌底で打ちあげる。コクピットを直撃する破壊的な力に中のパイロットまでもハンマーで打たれたような衝撃を受けていた。


「なんだと?」


 レギ・ソウルが横に飛びだしたところをキュロスが迎撃。死角でセットしていた突撃が避ける暇もなく襲う。しかし、下から撫であげるように振られたブレードでボディからは逸らされた。

 キュロスは引き戻さず、そのまま肘を飛ばして顔面を狙う。ところがグレオヌスは首を傾けただけで躱していた。


「ぶほっ!」

 キュロス機が吹き飛ぶ。


 見れば、レギ・ソウルの左拳がカシナトルドの重心を綺麗に打ち抜いている。カウンター効果もあり、地から足が浮くほどの一撃でキュロスも情けない息を吐く。

 だが、そのときにはメンメがスイッチして連撃を仕掛ける。とどめを刺す隙など与えない。


「抑えてろ」

 指示を飛ばす。

「嘗めくさって!」

「ああ?」


 スライディング姿勢のヴァン・ブレイズにブレードを逆手にしたジェリコが迫る。その後ろにはオレガノも続いて確実を期していた。


「お終いだ!」

「抜かしやがれ!」


 吠えるミュッセルにオレガノは二機掛かりで間断なく攻め入っていった。

次回『桜華杯準決勝(3)』 「リング(ここ)はサーカスか!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 まぁ、複数機で攻め切れてないし?
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