表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
ゲームチェンジャー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

225/409

担い手、集う(2)

「ここで二刀流(デュアルウエポン)が走り込んでくるぅー!」

 リングアナの絶叫を背にビビアンは走る。

「今日は相手に合わせて剣士(フェンサー)装備での参戦だが機動性は健在! 驚くべき速度での急襲だー!」


 二機になっても足掻く敵チームにとどめを刺すべく走る。すでにサリエリとレイミンの狙撃で縫いつけられているので迷うまでもない。

 カウンター気味に叩きつけてくるブレードを跳ねあげるとそのまま胴を撫で斬りにする。もう一機もウルジーに突き倒されユーリィが一閃して勝負を決めた。


「もはや風格さえ感じさせる試合運び! 危なげなく勝利を掴み取ったー!」

 慎重に慎重を期した作戦だったと思う。

「チーム『フラワーダンス』、桜華杯一回戦突破ぁー!」


 センタースペースに戻ってホライズン同士で拳を合わせていると凄まじい歓声が押し寄せる。メジャーチャンピオンチームとなると平日夜でも観客の入りは上々だった。


(ちょっとプレッシャーに感じるほど)


 優勝を重ねていてもリミテッドクラスに届くほどではない。桜華杯の結果如何でシーズンオフの評価査定にぎりぎり引っ掛かるか否か。それなのに勝利を義務付けられているかのような雰囲気がある。


(これでリミテッドクラスになんていたら、どれほどのプレッシャーなのかな。ミュウはなにを思って独りでそこにいたの?)


 そんなふうに感じるが、実際に彼はプレッシャーなど覚えていなかっただろうと思う。ただ、上だけを向いて走り続けているミュッセルならば。


(そんなだから追いかけたくなったんだし。そろそろ、この想いにも決着をつけてあげないと)


 赤毛の背中に追いついて、そして横に並んで手を繋いで走り続けるのか。あるいは別の目標に向かって仲間との絆を深めるのに邁進するのか。宙ぶらりんなままではいけないと思っている。


「うん、このままじゃ駄目」

「え、もっと攻めたほうがよかった?」

 独り言に返事がきてしまう。

「違う違う、なんでもない。エナのナビはちょうどよかったわよ。新しくなったホライズンの味を聞くのにぴったり」

「それなら。でも、ちょっとずつペース上げていかないと上を狙うのは厳しいかも。桜華杯は荒れそう。南で控えている先輩方とか」

「あー、あの人たち」


 ゲートの向こうの暗がりにはアームドスキンの影が並んでいる。そのシルエットはヘヴィーファングのものだ。『ギャザリングフォース』が次の試合に向けて入場待機している。


「ミュウも要注意だって言ってたもんね」

 忠告を受けている。

「うん、たぶんあれもイオンスリーブ搭載機だって。昨夜のチーム、『ピースウォリアーズ』のGPFパイロットが乗ってたカシナトルドってアームドスキンと同じ。バックに兵器廠がいるだろうって言ってたでしょう?」

「こっちのほうがヤバいって言ってなかった?」

「初見だと限界あるけど厄介な感じするって」


 ミュッセルは大々的デビューを飾った『コーファーワークス』のイオノインカより開発部兵器廠が打ち出しているアームドスキンを警戒している。技術力が比べ物にならないとまで言っていた。


「偵察したほうがいいかも」

「今、ヴィア主任にお願いしたから」

「ごめんなさい。メンバーは退場後もホライズンで待機。機体センサーで見える範囲のデータを取ってくださるかしら? 私もすぐに降ります」

「ラジャ」


 公開される試合映像以上のデータを欲するならそれ以外の手段はない。ヘーゲルは偵察(スカウト)面だけはまだ整備が追いついていないのだ。

 障害物(スティープル)の中での動きまでは捉えられないが、(ノース)サイドのゲートからならセンタースペースの様子はうかがえる。ないよりはマシ程度ではあるものの。


「気にしなくても、ミュウとグレイがボコボコにしたのにゃ」

 ユーリィは気楽げに言う。

「逆にいえば、デビアカップでメインフレームにまでダメージ負ってるのに復帰してきてるのが不気味でしょ? それだけの資金力と技術力がないと変な話。兵器廠が裏にいるって納得できる」

「サリの言うとおりよ、リィ。油断しない」

「ごめんに、ミン」

 叱られて凹む猫娘。

「よく見てて。一番目がいいのはリィなんだもん」

「おかしい。軽そう」

「ウルも感じてる?」


 動体視力などは猫系獣人種(パシモニア)のユーリィには誰も敵わない。しかし体術に関してはウルジーも精通している。ビビアンも赤毛の友人相手に鍛錬に励んできただけ目は肥えてきていた。


「タフなのと当たりが強そうとしか感じてなかったのに」

「印象が違うわね。試合始まってみないとわからないけど」


 デビアカップの準優勝でシーズン中昇格をしてノービス1クラスになっているとしても、それだけでは語れない違いがある。初めてのメジャートーナメント参加にしては余裕が感じられた。

 学生の身分でも軍務科生となればアームドスキンに触れる機会は多い。自信を培う時間は公務科生の比ではない。そして別の要因も。


(先輩たちの自信の根拠はやっぱりイオンスリーブ?)


「おーっと、開始早々チーム『ギャザリングフォース』が動いたー! これは速い! 速攻だぁー!」


(あれは!?)


 直接目にするヘヴィーファングの動きはビビアンの目を瞠らせるに十分だった。

次回『担い手、集う(3)』 「真似っこ、ズルいのにゃー」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 戦争は数(資金力)!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ