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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
ゲームチェンジャー

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222/409

リバイバルパワー(3)

 ツインブレイカーズが颯爽と(ウィナー)サイドに凱旋していくのを眺めつつオネアスはスタンバイに入る。この日のために数年の時間を費やして準備してきたアームドスキン『イオノインカ』は万全である。


(アリーナの観客が度肝を抜かれるさまが目に浮かぶようだ)

 それだけの自信が彼にはある。


 ゲートのカウントがゼロになり機体を歩ませる。その向こうは照明がまばゆく彩るリング。まるでイオノインカの将来を暗示しているかの如く華やかだ。


「次なる登場は話題騒然! あの『コーファー重機械産業機構』が繰りだすアームドスキン『イオノインカ』を駆る『コーファーワークス』の登場です!」

 リングアナの煽りに観客の目が集まる。

「大々的な発表から数日、いよいよ姿を現した新型駆動機搭載アームドスキン! どんな力を私たちに見せてくれるのでしょうか! いやが上にも期待が高まります! まずはリーダー、オネアス・ピオン操る1番機がリングの土を踏みます!」


 アリーナから届くのは歓声というよりどよめきであった。誰もまだイオノインカの真価を知らない。計りかねている様子。投票権(チケット)の売れ行きがそれを如実に表している。


(次の試合からは変わる。売れはしても美味みのない投票権(チケット)になるだろう)

 オッズが大きく下がるとわかっている。


「対するはチーム『ゾニカル・ネイキッド』!」

 メンバーのコールが終わり対戦相手の紹介がはじまる。


 普通であればオープントーナメントの初戦からAAA(トリプルエース)クラスのチームと当たるのは不運と考えるだろう。しかし、オネアスの場合は違う。イオノインカを白日のもとにさらすのに絶好の相手と僥倖に感じている。


(今日は晴れの舞台。華を添える役割になるのだから恨まないでもらおう)

 相手にとっては不本意であろうが。


「静かに対峙する両チーム! これは言葉は要らないという意思表示か!?」

 間を埋めるようにリングアナが言うが両者とも口を開かず。

「実力で証明せよという姿勢は潔し! これぞプロの仕事! では試合を開始しましょう! ゴースタンバイ? エントリ! ファイト!」


 様子見をしているゾニカル社の非カスタム機チーム。彼は軽く指で合図を送り、一斉攻撃を指示した。雇っていたコマンダーが休止期間に契約解除を申しでた以上、オネアスがリーダーとして指揮をするしかない。


「細かい作戦はなしかい、リーダー?」

「不要だ。機体状態が把握できているのなら問題ない」

 メンバーは十分に完熟訓練を行い、イオンスリーブの特性を理解しているだろう。


 三機の前衛(トップ)が横一線で突進を開始。対して弾幕で牽制を図るゾニカル・ネイキッド。足留めを掛けたつもりだろう。


(ぬるい)


 リフレクタをかざしたイオノインカはそのまま押し切る。反動をものともせずに、わずかにスピードを緩めただけで彼我の距離を詰めていった。

 相手も練達の選手たち。それくらいで動揺は誘えない。一定の距離まで寄せた時点で後衛(バック)前衛(トップ)がスイッチしてくる。


(前衛後衛の比率は同等。ここからはマッチアップになる)

 中央の一機に狙いを定めた。


「自信があってもゴリ押しが通用するほど甘くはない」

「なら、試してみるがいい」

 相手パイロットの言葉の牽制に耳を貸す必要もない。


 向かってくるブレードの一閃は彼の自信を打ち砕こうと意思の込められた力強いもの。しかし躱すまでもなく受けにいく。合わせたブレードが互いに噛み合うとすさまじいまでの紫電が火の粉のように舞った。


(ここからだ)


 力場同士が干渉する。両機体のパワーが接している一点に集約している。干渉の余波が激しい稲光となって顕現していた。

 それを幾度となくくり返す。両者の間で交わされる衝突は空気を熱し、人間には耐えられない領域へと進む。コクピットでは外気がビームコートの溶解温度に近づいている警告が出た。


(そろそろ驚いている頃だな)


 相手のコクピットでは別の警告が出ているはずだ。それは駆動機の過熱を表すもの。普通の斬撃を受けただけでは生じない負荷がそれを誘起する。


(認めさせてやろう)


 オネアスには感じられる。イオノインカのアクチュエータでは素子の発する電荷にイオンスリーブが反応し伸張する。無数のスリーブが同時に伸長を行い、それが凄まじいパワーとなって腕を駆動させている。

 脚部のイオンスリーブもその力を示す。イオンの反発力が強固に、かつ弾性を持って固定される。下半身の安定性が斬撃の効果をより増幅させ、一撃の強さを強めていく。


「なん……とぉ」

「理解できたか?」


 相手砲撃手(ガンナー)も座視しているわけではない。まわり込んで側面からバックを取ろうと動いている。しかし、コーファーワークスにも後衛(バック)はいる。それもイオノインカの特性を熟知したパイロットが駆る。

 脚力を発揮して素早く移動すると牽制砲撃を入れていく。相手も対処しようと変化するがイオノインカのパワーあふれる速力に追いつかない。逆に側面を取られるとリフレクタに直撃をもらって後退していった。


(戦局は決したな)


 そこからはイオノインカの独壇場になるとオネアスは確信した。

次回『リバイバルパワー(4)』 「違いを理解しろ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 今更ながら[対ビーム被膜]ってなんだろうね?
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