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グレイ参戦(2)

「今日試合でしょ? 観に行くね」

 ビビアンたち女子グループに囲まれる。

「ああ。でも、いきなり敗退とか恥ずかしいからネット観戦でいいよ」

「駄目ー。アリーナ行くし。みんなも来るでしょ?」

「もちー」


 全員が来るらしい。あまり恥ずかしい試合はできない。妙なプレッシャーが掛かってしまう。


(負けるつもりもないんだけどさ。実戦である以上、なにが起こるかもわからないから)


 試合映像は観ている。決してレベルが高いわけではないが低くもない。本当に玉石混交でなんとも言えないところである。


「タイプは剣士(フェンサー)。正統派ね?」

 もっとも人気選手が多いスタイルだという。

「僕はそれしか知らないんだよ。ビームランチャーも使えなくもないけど」

「普通の人は砲撃手(ガンナー)から入ること多いわよ。見た目有利に思えるもの」

「あのリングを見るかぎり砲撃手(ガンナー)が有利だなんて思えないね」


 障害物(スティープル)が多すぎる。もっと開けていればかなり砲撃手(ガンナー)の有利に働くだろう。


「玄人目線だわ」

 高評価だ。

「思ったよりずっと考えられてるよ。剣を振るには最低限の広さがあって、遠間から狙うには狭すぎる。狙撃するにも詰めなきゃいけない」

「見ただけでわかるのね。普通は経験しないとわからないものだわ」

「僕もそれなりに乗ってきてるんだ」

「専用機持ってるくらいだもんね」


 彼女らにもレギ・クロウを披露している。唖然として見上げていた様はちょっと愉快だった。


「エース級は剣士(フェンサー)の割合が多いの。それだけ有効ってこと」

 彼女もたいがいには玄人である。

「それに華があって人気も出やすいし」

「そっちはどうでもいいんだけどさ」

「そんなクロスファイトに拳と蹴りで殴り込みかけるお馬鹿さんもいることだし」

 揶揄がたっぷりと含まれている。

「うるせえよ。剣士(フェンサー)だけの場所じゃないって俺様が証明してやってんだろ?」

「それで『紅の壊し屋』とか呼ばれてたら世話ないんじゃない?」

撃墜(ノック)判定(ダウン)基準がアレだから仕方ねえじゃん。胴体に有効打何発とか決めてくれりゃ加減もできるのによ」


 現実には難しいだろう。機械的判断が困難になる。触れるだけでいいのか、ある程度の打撃力が必要なのか、あるいはストロークに基準を設けるか。人のジャッジが必要になるでは不公平が生じるだろう。


(機械判定ができるからこそ今の運用ができてるんだから)


 瞬時に反映されるようでないとまた不公平だ。ビームやブレードの接触はそういう意味で明確である。腕や足、頭部破損によるセンサーダメージも即座に機体に反映される。それで公平性が保たれていた。


「なんで格闘士(ストラグル)タイプなんて最初から設定されたんだろう?」

 疑問である。

「簡単なことだろ?」

「どこが?」

「熱いからに決まってんじゃねえか。ガチの殴り合いが一番だぜ」

 ミュッセルは鼻をそびやかす。

「そう考えてるのなんてあんたくらいのもんよ。実際、格闘士(ストラグル)でリミテッドは他に一人もいないし」

「根性が足りねえだけだ」

「根性でなんとかなるなら武装なんていらない」

 一言で切って捨てられた。


 ミュッセルは悔しそうな顔をしているが、あながち間違っていない。徒手格闘はアームドスキン戦闘では最後の最後の手段である。


(熱いのは事実だね。あのアリーナの盛り上がりは本物)


 銀星杯の決勝も凄まじかった。狂喜乱舞する観客から頭を抱えてうずくまる者まで悲喜こもごもである。ギャンブルの一面を見事に体現していた。


「オッズの旨みもすごいんだろうな」

 ついもらしてしまう。

「前はなー。かなり恨みを買ったもんだぜ」

「君が勝ちすぎてかい?」

「俺は気にしてねえんだが、すげえことになってたらしくてよ。直接当たってくるような輩もいなくはなかったぜ」

 難なく撃退したようだが。

「クラスが上がってからはそんな馬鹿もいなくなった」

「悪名のほうが轟いたからよ」

「うっせ」


 初期の苦労は語り草になっているという。色々あって運営も整備されてきた結果が今の成功に繋がっている。


「ってなわけで、あんまり目立つなよ。ビギナーがトーナメントに出るだけでなんだかんだ言われっからな?」

「そのつもりだけど、どのくらいの力でいけばいいのか今一把握してないんだよ。負けたくはないからさ」

「顔見せは本気でいかないと。観客に憶えてもらえないわよ?」


 グレオヌスはのちにビビアンの謝罪を受けることになるのだった。


   ◇      ◇      ◇


「それでは金華杯オープントーナメントの一回戦を行います」

 リングアナも序盤は大人しめにいっている。

「なんとビギナークラスから唯一の参戦。登録したばかりの選手が(サウス)サイドからの入場です。異邦よりの若き戦士の参戦、グレオヌス・アーフ選手です!」


 彼がレギ・クロウで粛々と入場するとアリーナがざわつく。レンタル機でもない見慣れない機体に驚いているのだろう。


「乗機はレギ・クロウ!」

 拍手は歓迎の意味か。

「対する選手は不運にも(エース)クラス、『剛力』ゼッタ・ナクルデ選手! 乗機はピアザ!」


 勇壮なメロディに合わせて(ノース)サイドから入場してくる。そんな仕組みもあるのかと黙って聞いていた。


「幸運だったな、小僧。俺がクロスファイトってやつをしっかり教えてやる」

「よろしくお願いします」


 グレオヌスはレギ・クロウを一礼させた。

次回『グレイ参戦(3)』 「それはお互い様でないかと?」

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