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対決への前進(1)

 チーム『フラワーダンス』は抽選で(ノース)サイドを引いていた。勝利者サイドからの堂々の入場となる。メンバーとまたここに戻ると誓ってからホライズンを歩ませた。


「まず先頭を切るのは話題沸騰『二刀流(デュアルウエポン)』ビビアン・ベラーネ選手! 今日もビームランチャーを携えての登場だぁー!」

 定番になってきている。

「次なるは鋭さまで増してきた弾けるブレード『元気な猫娘』ユーリィ・ユクル選手! 今日も華麗なステップインを魅せてくれぇー!」


 選手紹介が続く。少しづつアレンジが加えられるのは人気が伴っているのだと自覚できる点。アリーナの観客を飽きさせない工夫が施されている。


「以上が『花摘み乙女の舞』、チーム『フラワーダンス』の五人! 乗機はホラーイズーン!」

「そろそろここも変えてほしい」

 いつまでもトイレネタでは格好がつかないし企業イメージにも悪い。

「善処します!」

「する気ないでしょ!」

「あくまで善処です!」

 一応はツッコんでおく。


 相手チームの『キメラッシュ』はすでにセンタースペースでスタンバイしている。あいかわらずごちゃごちゃとした一機ずつ違う合成機体が並んでいる。


(あれできちんと動くのは優秀な整備チームを抱えているからってミュウは言ってるけどピンとこないのよね)


 提供を受けたパーツを組み合わせて実用投入するスタイルのカスタマーチームである。組み込みが大変で、外見が歪になるのはどうしようもないのかもしれない。フォルムに洗練された印象はない。

 総合設計されたアームドスキンはスマートなフォルムをしている。ホライズンは中でも実用的で、いうなれば無愛想なシルエットをしている。それでも全体のまとまりがあって不格好ではない。


(あの丸いのなに? 車輪? あんな大きな物あるのね)


 ビビアンには奇妙な構造に見えた。歴史上の話ならばともかく、彼女の世代で円筒形の車輪を備えた大型機械や乗り物など都市部では見られない。道路には全てリニア構造が敷設されているし、そうでない場所も反重力端子(グラビノッツ)車両が走る。


(重たい家具の収納キャスターくらいしか見たことなかった)


 軌道エレベータが現役時代は道路以外では普通に使われていたと聞いている。反重力端子(グラビノッツ)もなくリニア構造も持たないスペースでは他に術がなかった。しかし、現代ではほぼ無縁の代物となっている。


「サリ、どう見える?」

 幼馴染の親友も同じ印象を抱いているはず。

「走行用? アームドスキンを車輪で走らせようとしてる? 理解できない」

「ちゃんと走るもの? 機械構造に詳しいミュウとかなら判断つくんでしょうけど」

「待って。計算してみる。ヴィア主任もバランスが微妙だって言ってるから」


 迷っているとエナミが混ざってくる。機械に詳しい人物はフラワーダンススタッフにもいた。プロ中のプロともいえるメンバーが。


「計算上は構造的に脆弱だって。ただし、反重力端子(グラビノッツ)を効かせて軽量化した状態でなら走行も可能かもしれないって言ってる」

 素早く結果が伝えられる。

「よくわかんないのは足裏に付いてるんじゃないってとこ。あれどうやって使うの? しゃがむ?」

「可動式になってるみたい。普段は普通に歩けるように」

「ずいぶん面倒なギミックを使ってるものだわ」


 車輪走行するなら接地する足裏に付いていないとおかしい。ところがキメラッシュのアームドスキンは脛の前後に配置している。最初は膝を折って使うものかと誤解した。


「今日はリング上の高速走行の覇者が誰か証明してみせましょう」

 開始前に相手のパイロットが話し掛けてくる。

「このグラウンドローダーがアームドスキンの悪路走行のシーンを変えてみせます」


 そう言うと、説明を受けたように車輪が可動する。脛から前後に開くと車輪が接地し、わずかに機体の背が伸びる。接地しているのが車輪である証拠だ。

 車輪は足の前後に二輪ずつ付いていてアームドスキンを持ちあげている。斜めの支えのようなものはシリンダ構造になっているか。それでサスペンションが効くのかもしれない。


「もたもたと走るアームドスキンなど過去の遺物になってしまうでしょう」

 自信満々で言ってくる。

「もちろん走行安定性は足の比ではありません」


 つまり、脚を動かさないことそのものが振動を軽減させると言いたいのだろう。ビビアンにはピンとこないが理論的には合っているのかもしれない。相手チームなので誇示する相手としては間違ってないのだろうが、微妙にズレている気もする。


「驚くのも仕方ありませんね」

 どう応えたものか迷っていると沈黙をそう受け取られた。

「実践してみせます」

「これは早くも新時代の覇権を競う激突の空気だぁー! クロスファイトに革新の波がやってきたか!? それでは試合を始めます! ゴースタンバイ? エントリ! ファイト!」


 開始がコールされてゴングが鳴る。それと同時にキメラッシュのアームドスキンは一斉にスティープルの中へと下がっていった。フラワーダンスのお株を奪わんとする行動に見える。


(うーん、驚くっていうより呆気にとられてたんだけど)

 素人の彼女は実際に見てみないと判断がつかない。

(あれが車輪で走るってこと?)


 キメラッシュチームはビビアンの視界から土を蹴立てて消えていった。

次回『対決への前進(2)』 (やってみないとわからないスタイルとかミュウたちに似てきちゃってるかも)

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