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ゼムナ戦記 クリムゾンストーム  作者: 八波草三郎
狼の休暇の過ごし方

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翠華杯スタート(1)

 週末からオープントーナメント『翠華杯』が始まっている。ソロ、チーム合わせるととんでもない試合数を誇るシーズン有数のトーナメントだけあって、この期間はマッチゲームが少なくなる。

 チームだけでも256枠、数は十分にあるので希望すれば参加できる類のトーナメントだ。なので埋まらない枠の分、成績優秀な有望チームはシード枠に入れられる。


「二ヶ月以上翠華杯一色になっちまうもんな」

 平場など平日のみとなる。

「四華杯トーナメントだもん。仕方ないんじゃない?」

「参加しないチームは開店休業かい?」

「ほとんどね。だから始まる前に稼ぎまくるわ」


 週明け、いつものメンバーでカフェテリアのテーブルを占拠している。ビビアン含め、皆で学校でも情報交換中である。


「いつもならため息交じりの時期。出ることは出るけど、四回参加して賞金獲得は一度もなし。運営の配慮でレンタル料割引になっても掛け捨てみたいなもの」

 回収はできていない。

「そのフラワーダンスが今回は斡旋のうえにシード枠。すごくない?」

「一回戦免除は選手的には大きいわ。チーム運営(ヘーゲル)は一戦でも多くしてほしいかもだけど」

月給(ギャランティ)あるから申し訳ないのにー」

「勝ち上がって宣伝して還元すればよし」

「それで」


 フラワーダンスの女子陣はほくほくである。初めての賞金獲得も夢ではない状況。


「お前ら、AAA(トリプルエース)まで上がったんだから順当だろ?」

 女王杯の結果でシーズン内昇格を果たしている。

「あんたらだって(エース)までジャンプアップじゃない」

「さすがにオーバーノービスを穫ればね」

「俺らはシードなしで試合は週末からだな」

 クラスが加味されているか、一試合でも多く戦わせようとしているのか、運営の思惑はわからない。

「あたしたちも二回戦早々からってことになったから週末トリアの日」

「同じか。んじゃ、午後から二回戦だな」

「どこで当たるかしら」


 トーナメント表は存在しない。二回戦から四回戦までは再抽選されて組み合わせが決定する。選手側としては次を見越しての戦略が立たないので目先の勝ちを狙うしかない。

 それが運営の思惑である。有力チームが力を温存するのでは盛り上がりに欠ける。常に白熱する試合を演出するための手法なのだ。


「ランダムだから読めねえんだよ。下手すりゃ二回戦からリミテッド同士なんて馬鹿なカードが組まれる」

 一回戦だけはシード枠の関係で散らされている。

「午後にもう一戦、うちとやったりして」

「なくもねえのが笑えねえ」

「そんなケースも有りかい?」

 グレオヌスは未経験だ。

「過去、修理が間に合わずに泣いたチームもあるぜ。五機中二機が数時間で復帰できねえくらいイカれててよ、三機で出てボロ負けした」

「相手を壊すのは君くらいかと思った」

「言ってろよ。下のチームなんか特になんでもやる。タックルだショルダーアタックだので障害物(スティープル)にぶち当てにいけば壊れる機体だってあるぜ」


 プライベーターやカスタマーチームであれば翌日までの修理だって間に合わないときもある。涙を飲んで棄権(リタイヤ)するケースも少なくない。


「貪欲だな。オープンのチーム戦の序盤は要注意か」

「気にすんな。迎撃してやれ。俺たちにはそれがある」


 格闘士(ストラグル)タイプとスタイル分けされているが、剣士(フェンサー)砲撃手(ガンナー)に格闘が禁じられているわけではない。パンチやキックも有りである。なのでグレオヌスも剣士(フェンサー)でありながら拳闘もする。


「ヴィア主任もツインブレイカーズの戦い方を勉強して対策取ろうとしてるわ」

 サリエリが情報開示する。

「ナックルガードの搭載とニープレートの強化をするって」

「殴り合いなら歓迎だぜ」

「あんたたちとなんて真っ平御免よ。他のチーム対策」

 ビビアンは渋面を返す。

「面白いかもしれないのにゃー」

「間合い操作に使える」

「うちの前衛(トップ)を感化しないで」

 ため息が出る。


 距離を詰められたときに突き放す力がほしいだけだ。自分から進んでその距離を作りにいきたいわけではない。


(でも、正直近距離でのステップイン、ステップアウトってショートレンジシューターするとき武器になるのよね)


 女王杯決勝で実感した。自分よりパイロットスキルの高い相手を前にしたとき、密着してのビームランチャーの取り回しが有利に働いたりもする。現状、ほぼ確実に意表を突けるのだ。


「とりあえず初戦はビームランチャー装備でよろしくって運営に押されちゃった」

 かなり自分のものにしているので不安はないが。

「早いうち、どんな相手でも最適の距離の取り方ができる体捌きをマスターしなくちゃいけないわ」

「なるほど、そいつは腕や足もそれなりに使えるようにならねえとマズいな」

「ぼくも」

「ウルもか」


 棒術使いも立候補する。ウルジーの技能は有利不利が明確なため、常に突破口を欲している。


「週末までにもうちっと鍛え直しとくか」

「まだ一緒に訓練する気? 今度こそほんとに当たるかもしれないのに?」

「同じだっつってんだろ。お前らとの絡みは俺にとっても仕上げになってんだよ」

 ミュッセルは譲らない。

「それに週末の試合は両親にも観てもらえそうだ。いいところ見せたいから手伝ってもらえるかい?」

「大事じゃない」

「実戦感覚を掴んでおきたくてね」


 二人にそこまで言われてビビアンは拒めなかった。

次回『翠華杯スタート(2)』 「お前があんなもので満足するわけがなかろう」

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