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ミュウ対策会議

 投影パネルでは拍手を受けてフラワーダンスのホライズン五機が誇らしげに(ノース)サイドへと退場していくところ。それを見守っているのは『テンパリングスター』。明日、碧星杯決勝でツインブレイカーズと対戦するチームである。


「どうやら彼らもいずれ戦うべき相手に成長しそうだな」

 リーダーのレングレン・ソクラは素直に称賛する。

「意外と厄介かもしれん」

「他はともかく、リングというフィールドでは馬鹿にできない機動力(あし)だね」

「あの回避能力は手こずらせてくれるかもな」


 現在はチームブリーフィングの最中。息抜きがてら話題のフラワーダンスの試合を観戦したのだが、余計に脱線する羽目になっていた。

 メンバーは剣士(フェンサー)の紅一点フェチネ・シュミルに以下砲撃手(ガンナー)のワイズ・オークネー、シュバル・ポッカ、ゼド・ビバインと続く。


「それは良しとして今は明日の決勝。相手はあのツインブレイカーズだ。彼らには一度煮え湯を飲まされている」

 地下訓練場の一件がある。

「言っても、分かれての遊びだったじゃん。チームで当たれば敵じゃないって」

「そうか、フェチネ? 君はワイズの援護ありでもグレイ君に歯も立たなかったが」

「く、普通に五機編成なら負けないって」


 非常に嫌な面持ちで答える。しばらくは荒れ模様だったから相当気にしているはずなのだ。プライドに傷を付けられたと感じているだろう。


「彼に関しては対策が取りにくい。剣闘技であれば、おそらく私より上だ。単機で当たるのは悪手といえよう」

 そう読んでいる。

「まさか! いくらなんでも」

「事実は認める。そうしないと負ける。これは鉄則だ」

「そうだけれども……」

 彼女はまだ不満げである。

「だからチームで戦う。息の合った砲撃手(ガンナー)の援護があれば我々は負けない。そうだろう?」

「ああ、もちろん」

「そのためにはグレイ君には決して一人で当たらないことだ」


 方針を示す。それが勝ちへの道筋だから徹底しなくてはならない。


「それはミュウ君についても同様なのだが、彼には大きな欠点がある」

 かねてより思っていたこと。

「それは間合いだ。格闘士(ストラグル)タイプ最大の欠点。腕と足の長さというどう足掻いても克服しようもない欠点がね」

「でも機動力(あし)を使われると潰される。この前もそれでやられた」

「ああ、前衛同士一対一でならね。だが、彼とて剣士(フェンサー)二人に挟まれれば身動き取れなくなる。不用意に背中を見せれば終わり」

 立てた親指を下に振って撃墜(ノック)判定(ダウン)を示す。

「その状況を作って攻め立ててればいずれ落ちる。ブレードの間合いでなら一発二発食らってもノックダウンまではいかない。伸び切った手足の打撃力は知れている」

「時間は掛かるけどそのとおりだと思うよ? でも、その間は?」

「ワイズたちに頼もうと思う。純粋な剣士である彼はビームによる撹乱が有効だ」


 つまりチームの分け方は一つ。通常のフェンサー・ガンナーペアを捨てて、フェンサーとガンナーに分けて使うということだ。


「グレイ君を足留めしておいてもらう間にミュウ君を落とす。そのあとに全員で掛かればあの剣士も怖くはない」

 全員が納得して賛意を示す。

「ただし、一つだけ注意しておかなければいけないことがある。これだ」


 レングレンは投影パネルの内容を切り替える。それはツインブレイカーズ対キングスカウチ戦のもの。ヴァンダラムが触れただけでアームドスキンが吹き飛んでいる様子が映っている。


「ち、俺がくらったやつだ」

 ゼドが舌打ちしている。

「これだけはもらったら駄目だ。味わっているゼドにはわかっていると思うが一撃でノックダウンまで持っていかれる。訓練場では本当に手加減してくれていたらしい」

「っぽいな」

「あのデロリアスが乗れなくなったという。それほどの威力だということだ」


 デロリアス・トクマキの引退が告知されている。ミュッセルの必殺技の直撃をコクピットに受けた彼は、それ以来シートに座ると身体が固まって操縦できなくなったらしい。


「っても、これ、触れただけで発動する技じゃん。どうやって防ぐのさ」

 フェチネは渋い表情になる。

「だから分析してもらった。これを見てくれ」

「弱点を見つけたんだね?」

「いや、正確には違うんだが」


 烈波(れっぱ)を放つときのヴァンダラムの姿勢の静止画が映る。そこにレングレンはフリーハンドで線を引いた。


「この形が作れないと打てない」


 他の静止画にも線を引いていく。ジャンプ中のものは特殊だが、重力波(グラビティ)フィンの状態から線が引けた。


「つまり?」

「この体勢を取れる状態、かつ触れられる間合い。ブレードの間合いの一歩外には絶対に届かない。逆にいえば、その距離さえ確実に守れば烈波(れっぱ)は防げる」

「そうか。パンチの間合いを意識するから食らう。その外にいれば当たらないってことだね?」

 正解にたどり着く。

「ああ、ブレードなら一足の間合い。これを守ってヒット&アウェイをくり返せば彼は崩れるはずだ。少なくとも焦れて攻撃が雑になっていくだろう」

「そうなればこっちのもんだね。レン、頭いい」

「この方法ならミュウ君は攻略できる。最終的には我らの勝利だ。どうだい?」


 レングレンの主張に、メンバー全員が会心の笑みを返してきた。

次回『決勝を前に(1)』 「敵情視察?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 ……さて、そんなに簡単に行くかな?
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