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溺愛されてる貴族令嬢は、小さな竜人を義弟(おとうと)にしました。  作者: 竜ヶ崎彰
4章 ささやかな日常

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43.誕生日ってそんなに嬉しいの?

 ヴィスト、ピノンを送り出して2日後。

 リタはティオと一緒に厨房で料理をしていた。


 作っていたのは、ケーキであった。


 近々孤児院で、誕生日を迎える子供がいるようでリタはその子供の為にケーキを作っていた。


「ティオ、クリーム塗るの手伝って!」

「は~い!」


 ティオはリタと焼き上がったスポンジケーキにクリームを塗っていた。

 塗ったクリームをティオは美味しそうに眺めていた。


 クリームを塗り終えると今度はイチゴとホイップクリームの盛り付けを始めた。


 そしてティオの手伝いのお陰もあり、ケーキはすぐに出来上がった。





 ケーキを作り終えた2人は、余った材料を使って小さなケーキを作りそれをおやつとして食べる事にした。


「おいしい!」

「小さくても美味しいね!」



 2人は満面の笑みを浮かべながらケーキをゆっくり味わって食べた。


 ケーキのお供として紅茶もカップに注いでいて、その紅茶を飲む2人。


「この紅茶、いい匂いする!それに美味しい!」

「でしょ!この前ね、領民の人がね、お父様がお仕事手伝ってくれたからってお礼としてもらった物なの!」


 仲良くおやつタイムを終えて後片付けをしたのち、誕生日用のケーキを箱詰めにして、冷蔵庫へとしまった。




 孤児院での誕生日パーティーを壮大に祝う事を楽しみにしているリタとは反対にティオは少し考え込んでいた。


「ねえお姉ちゃん…」

「なに?」

「誕生日ってそんなに嬉しいの?」

「・・・、うん!だって誕生日って言うのは、その人が生まれた日の事だから、とっても嬉しいことだよ!」

「・・・そうなんだ、でも僕、そういうの分かんないや…」


 リタはそのティオの言葉に疑惑を抱いたが、その疑問はすぐに理解した。


(そういえばティオって、確か実験の材料にされていたんだよね…やっぱり誕生日祝ってもらった事ないのかな?)

「・・・・お姉ちゃん…?」

「そういえばティオって誕生日いつなの?やっぱりわかんない?」

「うん、前にいた所でも誕生日とかわかんなかった…あ、でも…」

「でも何?」

「前に、ヴィンツェルト学院でやった面接で校長先生が魔法で僕の事見ていたけど、その時僕の誕生日も載っていたんだ…」

「本当に?」

「確か、僕の誕生日は、2()()2()0()()ってあった」

「え?」


 ティオが自分の誕生日を言った途端、リタは気付いたことがあった。


「もうすぐじゃん!」

「え?」

「うん!ティオって、1()1()()って言ってたわよね?」

「そう…だけど…?」

「実はね、お姉ちゃんの誕生日は1ヶ月先の3()()2()0()()で~す!」

「え?」

「1つ違うって思ってたけど、11ヶ月違うんだね…」

「11ヶ月…」


 何言っているのか分からないティオであったが…


「あと2週間だ!2週間経つとお姉ちゃんと1ヶ月の間だけ同じ12歳だね!」

「同じ12歳…」


 ティオは少し嬉しそうだった。


 いつも自分に優しく接してくれた義姉と繋がりを感じられた気分がしたからであった。


「じゃあティオの誕生日パーティーもやろうね!勿論ケーキはお姉ちゃんが作ってあげる!」

「ケーキ!」

「うん!」

「わ~い!ケーキ!」

「うふふ、その前に、まずは孤児院の誕生日パーティーをやろうね!」

「うん!」


 初めて自分の誕生日を祝ってくれる事にティオはものすごくうれしく感じた。





 ーー1週間後。


 孤児院にて、誕生日パーティーが行われた。



「「お誕生日おめでとう!!」」



 パーティーの主役である女の子の名前はチコ。今日で"5歳"となった。そんなチコは今、たくさんの友達や管理人、そしてリタ、ティオに囲まれて嬉しそうに笑いながらケーキに刺さった蝋燭の火を吹き消した。


「おめでとうチコ!はい、これ私からのプレゼント」


「わぁ!もふもふだ!リタ様ありがとう!」


 リタがプレゼントしたのは大きなウサギのぬいぐるみである。


 そしてそれをもらったチコも嬉しそうであった。



 みんなはケーキを食べたりゲームをしたりをして楽しんでいた。




(こんな風にお祝いされるのって…いいなあ…)



 ティオは内心羨ましく思っていた。


 自分の誕生日もこんな風に祝ったもらえたらと密かに思っていた。

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