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溺愛されてる貴族令嬢は、小さな竜人を義弟(おとうと)にしました。  作者: 竜ヶ崎彰
3章 魔法&剣術指導

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29.こういうのも、大切なんだよ…

 今日の授業は、なんとヴィスト・ピノンの所属する冒険者組織(ぼうけんしゃギルド)の社会見学であった。

 発端は、2日前に遡る。


 ーー2日前


組織(ギルド)での俺達?」

「はい!先生達はギルドで一番強いとリーベル先生から聞いていたのですが…ギルドではどのような感じだったのか、気になったので…」

「あ、僕も気になっていました!ピノン先生のギルドでのお仕事知りたいです!」

「そうなの?ヴィスト…だったら一回見せてあげない?私たちのお仕事」

「そうだな、今後役立つかもしれないからな!よし分かった!じゃあ今度の授業は社会見学だ!俺達が入っているギルドに連れてって俺達の本職である冒険者の仕事を見せよう!」

「わ~い!」

「やった~!」


 こうしてリタとティオがヴィスト、ピノンの本職に興味を抱いた事で社会見学が始まった。


 ーーそして現在


 アスタルト領から離れた街にある冒険者組織に向かってリタ達を乗せた馬車が歩いていた。


 そして2時間後。


 目的地である冒険者組織に到着した。


 ヴィストはさっそくギルドマスターにリタとティオの事を話して仕事内容の見学の許可の了承を得る事に成功した。


「君達がリーベルの教え子か?はるばるようこそ冒険者組織へ!」


 あいさつをしたギルドマスターは厳つい見た目であったが、とても優しそうな男性であった。

 また、リーベルの友人なだけに彼も年齢は50代である。


「前にリーベルから、ウチの冒険者を家庭教師にしたいって聞いた時は驚いたが、まさか領主のお子さん達だったとはな…」

「はじめまして、アスタルト家の次女のリタ・アスタルトと申します」

「僕、ティオ・アスタルト…です…」


 挨拶を終えてギルドでの仕事内容の説明を聞いた。


 ーーギルドでの仕事内容

 ギルドではまず、提示板に貼られた依頼書から仕事をを選び、始めて仕事に挑むことが出来る。

 仕事内容は討伐、護衛、雑用、お手伝いなど様々なものがある。

 内容によっては得られる報酬が異なっており、初心者向けから上級者向けまで幅広い仕事があった。


 そして今回ヴィストが選んだ仕事は…。


「よし、じゃあこの"草むしり"の仕事にするか?」

「え?討伐とかしないんですか?」

「普段はしたりするけど、今回はあくまで社会見学だから…」

「冒険者と言えど人だ、無理の無い仕事を選ぶことだってある、それに今回は授業の一環としてだからな、危ない思いをさせられねえし…これでいいだろ?」

「草むしり…楽しそう」


 ティオは面白そうに感じた反面、リタは気分が少し沈んだ。"せっかく冒険者の本領が見られる"そう感じたからであった。


 仕事開始の手続きを終えた一行は、仕事先へと向かった。


 向かった先は大きな屋敷で、見た感じ庭の雑草がぼうぼうに伸び放題状態であった。


「それではよろしくお願いします」

「あいよ!」

「任せてください」


 2人は早速草むしりを始めた。

 リタからしたら地味な作業にしか見えなかった。

 冒険者を"かっこいいお仕事"と言うイメージを抱えていたリタは少しだけショックを受けていた。


 逆にティオは面白そうに見ていた。

 普段は自宅でも、よくリタとガーデニングの為に雑草を抜いているからかその作業はまるで娯楽のように感じていた。


 そして数分が経ち、草むしりは終わった。


「ふぅ…どうだ?こういうのが俺達の仕事なんだ」

「でも、なんかおかしくないですか?」

「え?」

「先生達は冒険者ですよね?なのに、これも仕事だなんて…」


 リタはついに抱えていた不満を口に出した。

 だが…。


「こういうのも、大切なんだよ…」

「え?」

「確かに俺達は本来巨獣の討伐とかお偉いさんの護衛とかをやっている…けど、こういうのも、ちゃんと必要な事なんだ…」


 ヴィストは清々しい表情でリタの問いに答えた。その時、依頼主がやって来て…。


「ありがとうございました、とても綺麗になりました!こちら報酬です」

「お!あんがとな!」


 依頼主はお礼を告げると、報酬であるお金の入った袋を渡してきた。


「え!本当に受けとるんですか!?報酬!」

「ああ、ただ、今回は草むしりだからな…銀貨10枚と銅貨30枚って所だな」

「あら、貰えただけでもいいじゃない!」

「……それもそうだな!」


 2人は満足げに、笑った。



 ーーそして、ギルドへの帰り道


「結局冒険者の仕事って…」

「でも、僕は楽しそうに思えたな!」

「そうかい、今度また機会ありゃ見せてやるからよ!」

「はい!」


 不満げなリタと楽しげなティオは、ヴィスト・ピノンと帰り道を歩いていた。




 しかし、その時だった。



「ぐああああああああああああ!!」


 突如として獣のような叫び声が聞こえた。


 振り向くとその先には、自分達の方に向かって突進してくる牛がいた。


「うわああああああああ!」

「きゃああああああああ!」

「お、お姉ちゃん…」

「大丈夫よティオ!お姉ちゃんが守るから!逃げましょ!」


 驚いたリタとティオは、その場を離れた。


 しかし、何故かヴィストとピノンは動こうとしなかった。


「せ、先生!なにやってるんですか!?」

「な~に!任せな!」

「ここは私達が!ね!」


 ピノンがヴィストにウインクをかまして、2人は構えるのだった…。

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