16.私よりは適任です。
アスタルト家の家庭教師"リーベル・モード"。
彼はリタの魔力の変化がティオを使い魔として迎えた事が関係していると察する。
そんな状況下で、リーベルはある事を思いつくのだった。
ーーアスタルト邸
邸内では、リーベルはガイアと何やら話をしていた。
「え?別の家庭教師を?」
「はい、リタ様の魔力量の増加を見て察しました…魔法学に関しては私には到底教えきれません、なので私よりも魔法を教えるのにふさわしい人物を講師として紹介します」
「リーベル先生よりふさわしい人物って?」
「その人物は2人いて、王都でギルドマスターを勤めている私の友人が経営している冒険者組織の一員なのです」
「組織の一員か…?」
リーベル曰く、その人物は組織内でも最優秀な実績を持つ2人組であるらしく、父親は期待にあふれていた。
「それと、剣術も使える人材ですので、今後の事を考えればリタ様とティオ様には剣術もついでに学ばせてはいかかでしょうか?2人ともまだ若いですが、私よりは適任です」
「ん~、とりあえず、先に会ってみてからだな…おかしな奴だったらリタに会わせるわけにはいかないからな!!」
尚早悩んだガイアであったが、まずは会ってみてからと結論して対面優先で事を勧めた。
その後でリーベルがリタとティオにも例の講師について説明をした。
「最優秀の人達ですか?」
「はい、ですが今は別の任務で遠出をしているらしいので、会いに来るのはおそらく1.2週間後あたりになるかもしれません…」
「怖い人?」
「さあ、私もマスターである友人から聞いた程度なので…悪い噂は耳にしていないのですが…今の所は何とも言えませんね…」
怖い人かもしれないというティオの不安はある一方でリタはワクワクしていた。
「きっとすごい人なんだろうな~!待ちきれないな~!」
眼を輝かせて楽しみに待っているリタであった。
そして時間は経って夕食の時間となった。
食卓を囲む一家。
食事中、ガイアは家族にある話を掛けた。
「そうだ、実は近々、キレイヌ商会が新しい品を家の領地で売りたいからと言って申請の許可を貰いに来るのを兼ねて家に泊まり込む事となったんだ…」
「ほお、キレイヌ商会が、それでお父様、商会は今回一体どんな品を?」
「まだ分からないが、悪いもんじゃないだろ…」
『キレイヌ商会』という名を口に出した事でリタが食いついて来た。
「お父様!キレイヌ商会という事は?」
「ああ、テレシー嬢も来るぞ!」
「やった~!テレシーが来る!!」
「テレシー?」
喜ぶリタの隣でティオは疑問を抱いていた。
テレシーというのは何者なのかという疑問が…
「お姉ちゃん、"テレシー"って?」
「あ、あのね、お姉ちゃんのお友達!一番の!」
「一番の?」
更なる疑問を抱いた後、今度はサイガから説明が来た。
「テレシー嬢はリタの小さい頃からの幼馴染なんだ、とっても良い子だからきっとティオもすぐに打ち解けられるはずだ…」
「でも、結構人見知りするんだよな…この前来た時の事覚えてるか、俺らが来たらカーテンに隠れてたよな…」
「そういえば、お付きのメイドにもくっついている事もあるよね…」
色んな事を聞いたティオはますます疑問を感じるようになってしまうのだった。
夕食を終えた一家。
入浴と歯磨きを終えて、ティオはリタと共に彼女の部屋でくつろいでいた。
「ねえお姉ちゃん…」
「なあに?」
「さっき言っていたテレシーって人、怖い人じゃないよね?」
「あはは!ティオってば、初めて会う人みんな怖い人ってわけじゃないから!テレシーはとっても良い子だよ!何でも話せるお姉ちゃんの親友なんだ!」
「親友?」
「よく手紙でやりとりしているんだけど…実はこの前、ティオの事を手紙で伝えたんだ!」
「え!?」
ティオはすごく驚いた表情をした。
まさか既に自分の事をテレシーという人物に知られてしまった事からである。
だが、反面リタは笑顔で言った。
「家族以外でね、テレシーに一番最初に紹介したかったんだ、ティオの事…だから、次会ったら紹介させて、『私の義弟』って…」
「お…義弟義弟…!?」
ティオは『テレシーに早く会いたい』という気持ちと『どんな人なのか』という気持ちが内心に現れてしまい、不安が増したのだった…。




