表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第一話 退屈

この世界には支配者がいる。俺がそう確信するに至ったのには当然理由があるのだが、「陰謀論を信じるな」だの「民主主義を否定するな」だの大衆の声に耳が痛くなる。


気づかないものかね?


それが君の愚かな大衆たる所以だというのに。


そもそも人間の半分はIQが100に満たないのだ。境界知能という言葉が流行っているが、表向きの誘導をまんま信じちゃうお花畑の君には一生奴隷がお似合いなのさ。


賢明な人間なら、物事の裏側に潜む意図を探れ。何事にも疑ってかかれ。万物の本質を見抜けるようになれ。



ここは東京。湾岸地区。タワーマンション最上階のペントハウス。二層ふきぬけのガラス張り空間に圧巻のオーシャンビューと街並み。


これが俺の家だ。家賃?90万だよ。金利収入で賄えちゃうんだけどね。


正直人生に退屈してる。事業と投資で10億稼いで会社を辞めたのは24歳。もうかれこれ半年間のニート生活だ。


眠くなったら寝て、目が覚めたら起きて、お腹が空いたら好きなものを食べに行く。ゲームしたり、YouTube見たり。ちょくちょくジム行って運動したりして。自由気ままだけど、変わり映えのない日常。


退屈だ。とても、退屈


女遊びは一通りやった。退職と同時に、付き合ってた会社の同期と別れた後、渋谷のクラブやマッチングアプリを使った。クラブはVIPをとれば女が降ってくる。マッチングアプリは、金持ちと美女を繋げる会員制のものがあって意外とレベルが高い女と出会える。


10人くらいと遊んだかな。なんか飽きてしまった。相手はあくまで港区女子。脳みそがお粗末な連中だ。高尚な俺様と対等に話が出来るわけもない。



そんなこんなで


人生に退屈してる


中、


やつらが現れた。




19時ね、良く寝た


最近は昼夜逆転してる。俺の体内時計はネジが外れてんのかな。少しずつ活動時間がズレていくようだ。目覚めと同時に広がる満面の夜景も悪くないけど。


先ずはIPadで投資先のチャートをチェック。特に価格に異常はない。次はTwitterで経済や政治、投資関連の情報を探る。ふーん。来週はCPIの発表か。今日は特にやることないな。


ピコン


通知が鳴った。


「おい、ひきニート」


いらっ


俺様にこんな失礼な事を言ってくるやつは1人しかいない。


きいだ。本名は知らん。ライブ配信アプリで出会ったキッズ。中学2年生らしい。


「なんだよ」


「カエンダケ食べてくださいよ」


「なんだよそれ」


「え?知らないんですか?いいから食べて下さいよ」


画像が送られてきた。


「明らかに毒キノコじゃねーかよ」


「うふふふ…もがき苦しんで死ぬBさんみたいなあ…」


Bさんは俺のこと。適当につけたネットネーム。


B「クソがよ」


きい「ね〜?そう思うよね?メル?」


このグループチャットにはもう1人住人がいる。きいとリア友で同級生だというメルだ。


メル「えーわからんけど、あれの方がいいんじゃね?アイアンメイデン」


B「てめえ」







今日は寿司でも食べに行くか


ピロン


きい「ねえBさんて友達いるんですか?」


B「いるよ。1億2000万人くらい」


きい「ボッチヒキニート」


B「人類みな友達だから」


きい「彼女は?」


B「いねえよ」


きい「でしょうね。ぷぷぷ」


B「きいはどうなんだよ」


きい「友達ならたくさんいますけど」


B「くそが」


きい「なんか嫌なやつ沢山いてストレスたまる」


B「あー、学生は嫌なやつとも仲良くしないといけないから大変」


きい「大人になったらどうなるんですか?」


B「結局類ともだよ。歳取るにつれて気が合う人としかつるまなくなる。」


きい「じゃあBさんは誰とも気が合わないんですね」


B「天才ゆえに俗人とは会話が成り立たないんだよ。」


きい「へっ、カエンダケ食べてください」



暇つぶしにライブ配信をしてたら、たまたま出会したキッズ。いつの間にやら毎日のように話す関係になっていた。



メル「世の中金だよね」


B「どうした急に」


メル「国家予算欲しい」


B「なにいってんだこいつ」


メル「金があれば働かなくて良いじゃん。私ずっと家でゲームして過ごしたいんだよね。」


B「ワシやん」


メル「家事もしたくないし、ご飯は自動で出てきて欲しい。ベッドから降りたくない。」


B「廃人かよ」


メル「Bさんニートなのにどうやって生きてんの」


B「昔稼いだ資産を運用して金利収入があんのよ」


メル「へーどうやって稼いだん」


B「仮想通貨バブルくるのわかってたから、事前に仕込んでおいて、ブログやらSNSやらメディアやらを使って人目を引くようなことを、界隈の「わかってる」やつらと一緒にやったわけ。いわゆるステマってやつ。イノベーティブな市場は先行者特権ゲーだから。単価1円で仕込んだものが300円で売れたよ。」


メル「よくわからないけど成金てやつ?」


B「そうそう。「わかってる」やつらは死ぬほど稼げた良い時代だったね。」


メル「そのわかってるってのはなんなの」


B「世の中の99%の人は詐欺だのギャンブルだの言ってたからな。あと高値で買っちゃう人もいたり。ゲームルールがわかってなかったんだよ。1%のわかってる人だけひたすら美味しいゲームだった。」


メル「ふーん、なるほどね。石油王と結婚したいわ。」





ぷりん「ヨウキャなんなんですか?自習中に騒がないで下さい」


ぷりん。最近ライブ配信で出会ったキッズだ。中学3年生らしい。


B「わかるよ。ヨウキャはほんと○んで欲しい。」


ぷりん「インキャ見下してますよあいつら」


B「でもさ、大人になったら立場が逆転するよ。成功してる投資家や経営者はインキャ気質な人ばかりだよ。」


ぷりん「へえ意外。ヨウキャはどうなるんですか。」


B「ヨウキャは奴隷になる」


ぷりん「奴隷?!」


B「奴隷っていうと大げさだけど、労働に向いてるよね。ヨウキャは。ストレス耐性あるしさ。」


ぷりん「ヨウキャは逆に投資家や経営者には向いてないんですか?」


B「計画性なくノリで決めちゃったら破綻しちゃうよね。あと、ヨウキャは洗脳されやすいんだよ。物事を疑わないから。」


ぷりん「洗脳されてるんですか?」


B「そうそう。学校てさ、9割は労働者を育成する機関だから。そういう場所で違和感なくポジションをとる人=ヨウキャっていうのは、洗脳されてるよね。」


ぷりん「インキャはガリ勉だったり、裏でこそこそ自分のやりたいことやってますもんね。私はイラスト描いたり作詞作曲したりしてます。」


B「芸術家とか専門家タイプの人もインキャ気質が多いよね。」


ぷりん「でもやっぱり言わせてください。」

 

B「?」


ぷりん「人間は醜いですよ」



いつの間にやら、きいメルとちょくちょく通話するようになっていた。

きい「てぇーてぇー!!!てぇーてぇーよう!!!」


B「はい????」


きい「かんもん隊長!!!てぇーてぇ!!!」


B「お、おう…」


きい「かんもん隊長はね、普段はツンツンしてるんだけど、時折見せる優しさがね、ギャップでね、それでそれで、〇〇が△△で!!!…」


B「あれなのかい…君はもしかして…腐女子?…」


きい「はい?違いますけど。私はニョタが好きなだけです」


B「ニョタ…?」


きい「腐女子はメル」


B「ほう」


メル「ばらすなよ」


B「メルは腐女子ね」


メル「ほらきいこれみて」


B「?」


きい「なにこれ女の人が足広げて、男の人が乗っかってるけど…なにやってんのこれ」


メル「きい子どもってどうやったらできんの?」


きい「え、ちゅーしたらできるんじゃないの?」


メル「きいはこういうやつなんですよ」






とある日きいから個人通話がかかってきた。



きい「Bさんってさ、死にたいって思ったことある?


B「自発的に死にたいと思ったことはないけど、このままだと死んじゃうって思ったことはあるね。」


きい「そうなんだ」


B「うん」


きい「私トラウマがずっと頭から離れなくて辛いんだよね」


B「何かあった?」


きい「中学一年生の頃、部活入っててね、先輩に色々理不尽な事されたりしたの。それで辞めたんだけど、なんか今でも辛い。」


B「大変だったね」


きい「つらいんよ」


B「うーん、頭がスッキリするまでに時間かかるとは思うけどさ、そういう辛い経験を早い内に出来て良かったんじゃない?」


きい「そうなの?」


B「うん、底が深いほど山が大きくなるからね。辛いことには学びが大きくて、今すごい成長してるとこなんだと思うよ。」



きい「そっか」




メルとの個人通話にて


メル「Bさんて何属性なんですか?」


B「闇属性だよ。堕天使だからね。」


メル「Bさんて厨二病なんですか?」


B「違うよ。事実を言ってるだけ。天界でゼウスの怒りをかって堕天した」


メル「ふーん、私は雷属性が良い」


B「へえーなんで?」


メル「かっこいいじゃないですか」


B「え?もしかして厨二?」


メル「厨二はもう卒業したんで」


B「元厨二か」


メル「詠唱魔法とか考えますよね」


B「考えるんだ…」


メル「逆になんで考えないんですか」


B「お、おう」


メル「天を裂き地を制す

銀雲より出でるはず黄金の槍

其は暗夜を遍く照らし

其は世界を優雅に裁く

神光は全ての咎を浄化し

森羅万象は無へと帰す


……天雷アメノイカズチ



ぷりん「人間は醜い」


B「どうしたの笑」


ぷりん「クラスのヨウキャがぺちゃくちゃ喋って先生の話を聞かないんですよ。そのくせ後でノート見せてって言ってくるんですよ。自分が悪いくせに。見せたくないです」


B「そんなやついるよね。あいつらは将来苦労するから。内心見下しときな笑」


ぷりん「今すぐあいつらが苦労してるとこが見たいです」


B「草。なんかね、学生と社会でルールが180度違うんだよね。」


ぷりん「はい」


B「学生時代は家とご飯が保障されてるし、お金稼げるわけでもないからさ、自己投資に励んで能力つけてもあまりメリットはなくて、単純に群れて数の力で無能が強かったりするんよ。」


ぷりん「はい、腹立つんですよねそういう感じ」


B「あとね、無能は無能と仲良くなるんよ。類友だから。無能な人間からみたら有能な人はいけすかないし、敵に見えるわけ。無能同士が心地良いんよ。で、無能の群れ(ヨウキャ)VS少数の有能インキャでの争いで無能サイドが勝つことが多い。」


ぷりん「私は有能とは思いませんが、群れないと何もできない奴らは嫌いです」


B「わかる。でも安心してよ。社会にでたら無能の群れは破滅するから笑 なぜなら無能ゆえにお金を稼げず生活に困窮するからね。稼げる有能な人の下っ端になってエサを媚びるようになる。」


ぷりん「いいですね。」


B「で、有能な人はやっぱりインキャ体質な人ばかりなんだよ。世界の大富豪トップ100とか全員投資家&経営者だからね。人柄を見ればわかるけど、ヨウキャとはほど遠い人ばかり。ガリ勉だったり、パソコンオタクだったりね」


ぷりん「インキャの時代がくるんですね。でもやっぱりあいつらは許せないです。」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ