ちなみに、その時俺はエサを食べ終わった猫になでなでをせがまれていた。
放課後、公園でボケーっとしていると、クロスケがとなりに座った。
「なんか、お前って人間の友達居るのか不安になるよな」
「大丈夫、居ないから心配しなくて良いよ」
「逆なんだよなあ」
クロスケが顔を洗いながら呆れた声を上げる。いいじゃん、別にいなくても。
「ところでさ、こないだ気になったんだけど、クロスケってにゃあにゃあ言わないよな」
「あれは飼い猫の口癖だからな、俺達とは全然違う」
なるほど、育った環境かあ。
「で、お前は何してんだ? 猫の餌でも撒いてくれんのかって期待してるんだが」
「いや、俺もやりたいとは思ったけど、禁止されてるし、それに……」
俺は数日前、ここで餌を撒いてるおじいさんと猫の集団を見た。
「おいクソジジイさっさと餌よこせ!」
「こっちは腹減ってんだ! 早くしろ!」
「うちには子供がいるのよ! その子が飢えたらアンタのせいよ!」
という耳を覆いたくなる罵声に対しておじいさんは
「ほっほっほ、みんな仲良くな、よしよし、お前達は可愛いのう」
という感じで、意思疎通のできない幸せを精一杯噛み締めていた。
「アレを見ると、あげる気も起きないな、と」
「あー……」
クロスケは返す言葉もないとばかりに声を漏らす。猫にも思い当たる節があるらしい。
「まあ、その、あいつらも悪気は無いんだ」
「大丈夫、わかってるよ」
野良は生きるのに必死だ。だからこそああいう振る舞いをしちゃうんだろう。
「うわっ!? っと、な、なん……ふにゃ……」
俺はそう思って、せめてもの出来ることとして、クロスケを撫でてやった。