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【問】と【解】

【問】このしんどさだけを取り除く方法はあるのか

作者: うかびぃ

男性視点って難しいですよね。

 

「もう…、また洗濯物そのままじゃんか。」


 暗い部屋の中聞こえてきた声に意識が浮上する。

 ガサガサと音を立てながらこちらに近寄ってくるのは三ヶ月前から付き合い始めた彼女。

 自分の持ってきた荷物を一度隅に置いて、回したままで干すのを忘れていた洗濯物を籠に移したらしい。


「お仕事お疲れ様。遅くなっちゃってごめんね。干すから電気付けるよー。」


 そう言われて急に明るくなった部屋に目がチカチカする。時間を確認すると20時。帰宅して洗濯を始めたのが18時半くらいだった気がするから、1時間は寝落ちしてたようだ。


「大丈夫。洗濯ありがとう。」

「これくらいやるわよ。今日も大変だったんでしょ?お風呂入ってないなら行って来たら?」


 その間に干してご飯も炊いちゃうからーとハンガー片手に彼女が言う。

 とりあえず一服したいのでベッドから移動して煙草を手に取る。付き合い始めは文句を言われたが今はもう諦めたのか、視線を寄越してはくるがそれだけだ。


「今日はだいぶ遅かったね。」

「うん、途中で電車遅延に巻き込まれちゃって。」


 手際良く自分の服が干されていくのを見つめながら、いつもなら帰宅したら自作のおかずと共に待っているのにと疑問を飛ばす。乗り換え駅で足止めを喰らっていたらしい。

 あっという間に吸い終わった煙草をゴミ箱に捨て、シャワーを浴びる為に部屋を出る。空になったばかりの洗濯機に脱いだ服を放り込んで浴室へ入れば、少しだけ寒かった。


「あ、スマホ忘れたから取ってー。」

「んー?はいよー。スマホいじりすぎて長時間出てこないのは駄目だからねー。」


 扉を少し開けて叫ぶと呆れ笑いな彼女はすぐに渡してくれた。どうやら干し終わったようで、そのままキッチンに向かった。


「………。」


 お気に入りの曲を聴いて熱いシャワーを頭から浴びて、徐々に色んなものがクリアになってくる。

 と同時に襲ってくるもやもや。

 3つ上の彼女は少々口が悪かったり酔うと軽く手が出たりするが、普段はほぼ完璧だ。自分が日々の仕事で疲れ切っていると、こっちに泊まりに来る日は必ず家事をやってくれるし、最近は夕飯用におかずも作ってきてくれる。休みが週一しか無くて疲れて何処にも出掛けられないことが続いても、何も言わずに一緒にお昼まで寝ててくれたりすることも多い。


「それで楽しいのか…?」


 呟いた一言はシャワーの音に掻き消される。

 彼女はとても尽くしてくれる。俺は彼女の為に何もしてあげられてないのに。

 きっともっと自分に要求したいことだってあるはずなのに、「好きだから、何かしてあげたいと思うのよ。譲れない所は私だってちゃんと主張する。」って。その主張を煙草以外で聞いたことはない。

 それが、最近、しんどいと思ってしまっている。


「〜♪」


 一度シャワーを止めると、流している曲とは違う歌が聴こえてくる。彼女が米を研ぎながら歌っているのだろう。

 変われない、何もしてやれないのに、なんでそんなに楽しそうにするんだ。


 好きなのに、しんどい。

 自分のことなのに、どうしたらいいか分からない。

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