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第7話 ウソ発見器

  「鞄、持つぜ」


「ありがとう」


 おじいさんと別れた瞬間、鞄を持ってくれるびの。


「異世界でも言葉が通じてよかったな」


「まあ、言葉が通じなかったら、通訳してすぐに覚える予定だったけどね」


「いくら、天才な覧でも、それはできないだろ?」


 それは妄言だと言い張る、びの。


「ちっちっちっ、できるんだなー、これが」


 天才覧様を舐めちゃいけないよ、びの。


「おいおい、まじかよ。やり方教えろよ」


「じゃあ、ロールプレイングでやってみよう! びの、現地の人ね」


「OK」


 よし、ここは覧様の能力の一端をみせてやろう。


「たとえば、適当な絵を描きます」


 私は落ちていた木の枝を拾い、ぐちゃぐちゃな絵を描いた。


「現地人に、それを見せます」


「何だ、これ?」


 びのは現地人になりきって答える。


「はい、『何だ、これ?』いただきました」


 私は持っていた木の棒を差し出し、びのに『何だ、これ?』と訊く。


「木の棒」


「はい、木の棒いただきました」


「……そうか!! この要領で訊いていけばいいのか!!」


 興奮するびの。


「もっと褒めたたえてかまわないんだからね? びの」


 言いながら私はびののほっぺをぎゅっとにぎった。


「何だよ、突然?」


「いや、痛いかなって」


「痛くないって言って欲しいのか?」


「正直に答えて欲しい」


「正直と言われたら、痛いと答えるしかないな」


「やっぱり夢じゃないんだね」


 夢であればどれほど楽だったか……


「今、確認することか?」


「いや、ふと思っちゃって」


「覧、夢じゃないってことは、ここ現実で、おそらく異世界だぞ?」


「うん、そうだね」


「おいおい、ここは異世界で当たり前みたいな顔してるけど、喜ぶとか、喚くとか、そういうリアクションはないのか?」


「ない」


 この異世界のことを論文で研究を発表したとしても、誰も信じてくれなさそうだし。


 コンパクトですぐに元の世界に帰れるとはいえ、びのを危険な異世界へ連れてきたのは私の責任だ。


 もしかしたら、そのコンパクトも誤作動を起こして、他の異世界へと転移するかもしれない。


「おいおい、なんで絶望したような顔してるんだよ? お前、本当に12歳だよな?」


「見て分からない? 身長は165cmで高めだけど、見紛うことなく、12歳だよ。びのには私が老婆にでも見えるの?」


 実年齢より長く生きていますなんてことあるわけないじゃないか。


「いや、12歳が異世界来たら、もっとリアクションとるだろ?」


「異世界に一喜一憂する年頃でもないでしょ? 宇宙には地球に似た惑星があることも分かってるんだし」


「だから生のゴブリン見ても驚かない……ってか?」


「当然だよ」


 驚かない。


 滅茶苦茶引いたけど。


 さすがにゴブリンはないわー。


 うん、ない。


 誰も見たことのない宇宙人ならわかるけど、ゴブリンだもん。


「異世界だろうがなんだろうが、前人未到の地球人初の異世界じゃんか。もっと喜べよ」


「ワーイ、ヤッター、トッテモ、ウレシー」


 私は片言と万歳で、嬉しさを表現する。


「出たよ、口だけ。本当に子どもっぽくない」


「そういうびのだって、中二のくせに中二病っぽくないじゃない」


「中二病は、中二の誰もが罹患する病気ではないんだぜ」


「じゃあ、子どもっぽさも、子どもの誰もがもってるわけじゃないじゃない?」


「ああ言えば、こう言う……子どもっぽくないぞ、覧」


「何? びのは子どもっぽい私のほうがいいわけ? もしかして、ロリコン?」


 私はびのを置いてけぼりにするために、少しだけ速足で移動した。


「そうは言ってないだろ」


 びのは私と同じ速度でついてくる。


「そう言ってるのと同じですー」


「違いますー」


 私はもっと速足になり、びのはそれについてきた。


 私とびのは競うかのように、森の中を歩き続けた。


「……なあ、覧、この道であってるんだよな?」


 黙々と競って歩いて、どれくらいになっただろうか?


 びのの言う通り、先ほどから結構歩いているけど、なかなか町につきそうにない。


 鬱蒼とした森の中なので、木々が乱立しているのはもちろんなのだが、モンスターどころか動物や虫がいないのも気になるところだ。


 あ、虫は虫よけスプレーのせいかもしれないけど……


「多分ね」


「あのじいさん、嘘ついたんじゃねーか?」


「それはない。嘘をつけば、私のウソ発見器が見破るから」


「ウソ発見器? やけに鞄が重いと思ったら、そんなものまでいれてたのか」


「だって、あのおじいさんに騙されてたら嫌じゃない」


 万が一移動装置が誤作動を起こして、他国に行った時のためにウソ発見器を入れておいてよかった。


 まさか異世界で使うとは思わなかったけど。


「いや、そうかもしれないけど、荷物になるだけだろ、そんなの」


「約500グラム。冷蔵庫に比べれば全然重くない」


「いや、冷蔵庫に比べればな。比較対象がおかしくないか?」


「それじゃあ、何と比べるの?」


 掃除機? テレビ? パソコン?


「他の家電と比べること自体が間違いなんだよ。鞄が重くなれば大変な思いをするのは覧なんだぞ?」


「鞄が重かったら、びのが持ってくれるでしょ?」


「いや、そうなんだけどさ……でも、ここは異世界だぜ? 地球のウソ発見器が使えるのか?」


「異世界も想定して、ウソ発見器は作ってあります」


 ピー。


 機械音が鳴った。


「はい、覧、今のウソ。たった今、ウソ発見器が作動しました」


「わざわざウソ発見器を鞄から取り出してスイッチを入れないでよ。電池が切れちゃう。この世界には電気がないみたいだから充電もできそうにないし」


 森の中ということもあるかもしれないが、電灯はおろか、電信柱も見当たらない。


「異世界まで想定してないじゃん」


「でも、人が嘘ついたなら、反応します」


「異世界だから、異世界人には反応しないかもしれないだろ?」


「じゃあ、もし仮に、嘘をついていたとして、おじいさんに何か得があるのかな?」


「得は……ないな」


 びのは少し考えたようだが、考える必要あったのか?


「じゃあ、本当でしょ?」


「自分では自覚してなくて嘘をついたかもしれないぜ?」


「実は、あのおじいさんがジキルとハイド並の二重人格者で、私たちを騙して、ゴブリンのアジトへとご案内していた……とか?」


「そうそう」


「さすがにそれはないでしょ」


 もしそうだとしたら、私たちは今頃ゴブリンか他のモンスターの餌食になってるだろうし。


「じゃあ、耄碌してて間違った道を教えたとか、ありえそうじゃね?」


「あるいは、誰かさんにお昼ご飯を食べられた腹いせに、嘘の道を教えたとか?」


「もしかして、オレのせい?」


 焦るびの。


「びののせいだ。あーあ、びのがおじいさんのお昼ご飯を食べちゃったせいだー」


 私はここぞとばかりに追い打ちをかける。


「いや、オレのせいじゃないから。もし嘘ついていたとしたら、そのウソ発見器が作動するんだろ?」


「いやー、異世界だからなー、きちんと発動するかなー」


 私は白々しく答えた。


「おいおい、さっきまでは自身満々だったじゃないか」


「びの君が私のウソ発見器の性能を疑うから、自信なくなっちゃったな」


 心にも思ってないことを言う。


「オレは、覧の発明品は世界一だと思ってるから」


「今更、おだてても遅い」


 私はびのに軽くチョップをしようと手を振り下ろしたところで止めた。


「あれ? もしかして、森の出口じゃない?」


 私はそのまま森の出口らしきところを指さす。


 指さしたところに木々はなく、草原だけがあるように見えた。


「本当だ。じいさん悪い。オレ、じいさんを疑っちまった」


「びの、本当にそういうところあるよね」


「いや、マジで反省してる……って、覧も最初疑ってたから、ウソ発見器の電源をいれてたんだよな?」


 私はぷいっとそっぽを向いた。


「おい、無視はずるいぞ、覧」


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