第47話 大凶
「さてと、魔王を3体殺したな。あとは1体か。どこにいるんだろうな?」
「大凶は、唯一情報がないからね」
ジオフの世界にいる間は、いつでもどこでもぴったりと一緒に居たんだけどね……
分からないのも無理はない。
「ああ、図書館の資料が何者かの手によって破り取られていたからな。情報なしで戦ったら苦戦するかもしれない……」
「またまた、謙遜しちゃって。びのらしくもない」
「初見で倒すのは難易度高いだろ……」
「色々と情報収集してみたら? 時間はあるわけだし」
「まあ、そうなんだが………」
情報収集なんかしても、時間の無駄だ。
俺に関する痕跡はすべて消させてもらったからな。
「どうしたの? びの、歯切れが悪いね」
「もしかしたら、今から大凶と遭遇するかもしれないじゃないか」
「あはは、今日一日で魔王と3連戦してるのに、来るわけないよ」
「いや、分からんぞ……ってか、その発言、4連戦目のフラグだろ、覧」
これ以上レベルアップされても困るから、今この場で倒してやる、覚悟しろ、びの。
俺は魔法でまばゆい光で演出をする。
「うわっ、眩しいな、何の光?」
「びの様、びの様」
俺は光に紛れ、びのと覧の前に現れた。
「お前は確か、女神カシズだったか?」
「覚えていただけて光栄です」
俺は女神カシズのふりをして、丁寧に対応した。
こんな芝居やりたくないけど、びのと覧ちゃんを絶望に落とすためには仕方ない。
「この女が女神カシズ。こんなところまでびのについてくんな。このストーカー女!!」
「私はストーカーなんかではありません。勘違いなさらないでください、覧様」
どちらかというと、びののストーカーと言うよりは、覧ちゃんのストーカーだしな。
ああ、可愛いな、覧ちゃん。
「勘違いなわけないよ。3体の魔王を倒してすぐに出てくるタイミングがよすぎるじゃないか」
「それは天界から貴女たちを見守っていたからです……」
正確には、影からだけど、そこは言わないでおこう。
「天界から見守ってた……って、やっぱりストーカーじゃないか。びのに近づかないでくれる?」
この女、本当に口だけは達者だ。
ま、そういうところが可愛いんだけどね。
「そんなつもりはありません。びの様と覧様に感謝の意を表明しに来たのです。魔王を3体も倒していただき、ありがとうございます。びの様、覧様」
「そりゃあ、わざわざどうも。んで、本当の目的は?」
「本当の目的? 何のことでしょう?」
まさかこの男、俺の本当の目的が分かっているのか?
いや、まさかそんなはずはない。
この男とは一度夢の中で出会っただけなのだから……
「感謝ついでにオレも倒しに来たんじゃないのか?」
「私は、女神ですよ? 何故、貴方を倒さなければならないんですか?」
本当に俺の目的に気付いているのか?
それとも頭がおかしくなったか、はたまた、はったりをかましてるだけなのか……
「敵だろ、お前。そういう猿芝居はいいから、はやく本当の姿を現せ」
俺を敵だと断定するびの。
はったりではなさそうだ。
しかし、今ここで俺の正体を見破られるわけにはいかない。
俺が正体をばらせば、戦いのアドバンテージが失われる可能性があるからな。
「本当の姿を現すとはどういうことでしょう?」
俺はとぼける。
「お前、嘘つきだな」
「嘘なんかついてないですよ?」
俺はできうる限り平静を装いつつこたえた。
ピー。
何かの音が鳴った。
確か、この音は……
「これはウソ発見器だから。貴女のウソはバレバレだから」
「ちっ」
厄介なものを持ってきてくれたな、覧ちゃん。
こうなってしまっては、隠し立てする必要もない。
俺は女神カシズの姿から、仮の姿へと形を変えた。
びのは俺が敵だとわかっただけで、魔王・大凶だとは思うまい。
「何? この女? 顔も服装も全然違うじゃない。さっきまで、清楚系で女神っぽかったのに、急に、ビキニ姿のサキュバスに変わってる」
「お前、魔王・大凶だろ?」
いや、違う……とこたえたかったが、ウソ発見器がある以上、そうこたえるわけにもいかない。
俺は押し黙った。
「やはり、お前が大凶だったか」
「ああーん、今、何て言った? やはりだと?」
やはり……ということは、最初から俺が魔王・大凶だと思っていたということだ。
ジオフの世界に居る間はずっと心を読んでいたのに、そんなこと一度も思ったことなかったじゃないか……
「ああ。最初からお前がラスボスじゃないかと睨んでいた」
「なんでだよ? そんな素振りは見せてないだろうが」
そうだ、俺の変装はびのの夢に出ても、完璧だった。
「異世界漂流する夢をみたあと、本当に異世界漂流するんだぞ。夢に出てきたやつが怪しくないわけがない」
それをジオフの世界で思って欲しかったぜ。
心を読めてさえすれば、対策も立てやすかったのに……
「さて、俺の正体を見破ったところで、どうするんだ? お前ら勇者の世界とジオフの世界を自由に行き来できるんだろ? お前らは自由に行き来できるから、お前を倒す意味がないのだろ。俺を倒すメリットはなんだ?」
「ただの暇つぶしだ」
そうだろうな。
魔王と戦ってる間も、正義のため……とかではなく、ただただ純粋に楽しんでいたみたいだったしな……
「俺TUEEEE――の道楽ってわけか」
「まあそんなところだ……ふぁー」
あくびをしながら魔法剣を構えるびの。
本当の片手間で世界を救ってます……的な感覚だろう。
オレも自分で自分をドSだと思っていたが、この男も相当だな。
「その暇つぶしが命取りにならないといいな」
「ご忠告ありがとう。ところで、お前は、何故、オレたちの命を狙う?」
「お前の命……にはもうほとんど興味はないんだ。俺が欲しいのは、覧ちゃんが持っているコンパクトだ。それがあればジオフの世界とお前ら勇者の世界の行き来ができるんだろ?」
最初は勇者の命を奪えば、魔界に英雄として凱旋できると吹き込まれたが、今となってはそんなものに興味はない。
興味があるのは、ジオフの世界の支配とこの勇者の世界の支配だ。
俺ならきっとその偉業を達成することができるだろう。
「お前ら、俺の能力は分からないんだろ? そのコンパクトをおとなしく渡せば、命まではとらないが、どうする?」
とりあえず、俺は身の安全を餌に取引をしてみた。
「こたえはノーだ」
「残念だ」
そうだろうな。
うん、わかってた。
「ステータスチェック」
びのは俺のステータスを確認する。
ここは、ステータスを開示してやろう。
大凶LV666
HP:666(+0)
MP:666(+0)
種族:魔王
筋力:666(+0)
体力:666(+0)
耐性:666(+0)
敏捷:666(+0)
魔力:666(+0)
魔耐:666(+0)
運 :666(+0)
「お前、本当に、最後の魔王なのか?」
びのは眉をひそめた。
びのが俺を疑うのも無理はない。
俺の能力は増強や酔狂のようにステータスが青天井になる能力ではないからな。
俺の能力は、俺に敵意を持っている相手が『もしかしたら、こんなことをするんじゃないか……』……と思っていることを実現させる能力だ。
だから、あえてステータスを開示してみせた。
『魔王にしては弱すぎる。もしかしたら、これが大凶の本当のステータスじゃないのかもしれない……』と思え、勇者びの。
もしかしたら……と思いさえすれば、俺の能力、畏怖を発動できる。
「ああ、正真正銘、俺が最後の魔王だ」
「弱すぎる。興覚めだ。帰るぞ、覧」
「おいおい、俺の相手すらしてくれないのか?」
予想外だ。まさか、俺のステータスをそのまま信じるとは。




