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第39話 作戦

「これって、日本刀だよね、びの?」


「ああ、そうだな」


 こくりと頷くびの。


 魔法剣というから、西洋風のソードかと思っていたが、まさか日本刀とは思わなかったよ……


「その日本刀……いや、魔法剣、びのにも使えそう?」


 一般的な中学生が日本刀なんか扱ったことないでしょ?


 キデギスの私物なんか必要ないでしょ?


 キデギスに返そうよ……


 ……という意味も含めて、私はびのに尋ねた。


「手にしっくりとくる。おそらくオレにも使えるだろう」


「そうだよね。手にしっくりとくるから使えるよね……って、使えるの?」


 使えるんかいっ!!


 驚きを隠せなくてノリ突っ込みまでしちゃったよ……


「ああ、使えるな。まるで、オレのために創られたような刀だ」


 さも当然と言わんばかりのびの。


「それなら、君が使ってくれ」


 にっこりとした笑顔でキデギスは勧める。


「ああ、ありがたく使わせてもらうぜ」


「どうか私の代わりに魔王・増強を倒してくれ」


 懇願するキデギス。


「この剣に誓って」


 びのは、丁重に剣をかしゃりと鞘にしまう。


「ありがとう」


「さて、そろそろ行くか、覧」


 言いながら、びのは部屋から出る。


「待ってよ。びの」


「どうした、覧?」


「新しい剣をもらってはしゃぎ過ぎだよ」


「はしゃいで……いるな。妙にしっくりとくる日本刀だったからな」


 まさか、キデギスの私物だからじゃないよね?


『そうだ、その通りだ。キデギスの私物だから手にしっくりくるんだ。よくわかったな、覧』……なんて言いいかねないから訊かないけど。


 もしも、似たようなことを言い出したら、私、びのをこのジオフの世界に置いて、家に帰るからね……


 いや、ダメだ。そんなことしたら、びのとキデギスが赤い屋根の大きなお家を買って、そこに、【愛の巣・フロンティア】なんて名前までつけて、普通に幸せに暮らしちゃうかもしれないじゃないか。


 もしそんなことを言い出したら、びのだけは首に縄を縛ってでも元の世界に連れて帰ろう。


「やっぱり中二病だね、びのは」


 こうなったら、徹底的にびのを茶化してやれ。


「いや、違うから」


 即座に否定するびの。


 うんうん、素直でよろしい。


 でも、こんなもんじゃ、ダメだ。


 もっと徹底的に茶化さないと。


「日本刀もってはしゃぐのは、お土産の木刀ではしゃぐ男の子と同じですー」


 こうやって茶化せば、キデギスの私物に愛着がわきにくいだろう。


「同じじゃないだろ」


「同じですー。増強を倒す策もないのに、その貰った刀ではしゃいでいいところを見せようとするのは、中二病の特徴ですー」


「おいおい、オレ達、何年のつきあいだよ。無策でオレが鬼退治にいくわけないだろ」


 大げさに肩をすくめるびの。


「何か策があるの?」


 もう、無策でキデギスの魔法剣を使うためだけに、増強を倒しに行くのだと勘違いしていたじゃないか。


 もう、そういうことは早く言ってよね。


「ああ。とっておきのがな」


「え、何々?」


 すっごい気になる……


「ちょっと耳貸せ」


 びのはちょいちょいと手招きをする。


「魔王を倒す算段なんか誰も聞いてないと思うけど……」


 べ……別に、びのと内緒話するのが恥ずかしいとか、そういうんじゃないんだからね?


 ……って、誰に言い訳してるの自分。


「聞いてないかもしれないが、魔王の手下にでも聞かれたら困るだろ?」


「魔王の手下が王宮内にはびこる世界なら滅びてしまえばいいと思うけどね」


「そう言うなって。近況のことがあるだろ?」


 近況?


 ああ、この城に来たんだっけ……


 確かに、そんなこともあったなぁ。


 面倒だけど、びのの言う通りにするか……


 まったく、なんてことをしてくれたんだ、近況……


 本当に近況は最悪だ。


 私はびのの唇に耳を近づけた。


「キーパーソンは、お前だ。覧」


 耳元で囁かれて、ドキッする。


 これが噂の音萌、ASMRってやつですか?


 しかも、キーパーソンは私?


「~して、~すれば増強を倒せると思うんだが、どうだ?」


 びのが私の耳元で囁いている間は、幸せタイム。


 心がふわふわしてぴょんぴょんした。


 まったく、近況はなんて功績を残してくれたんだ。


 まじ、近況、神。


 近況は素晴らしい。


「ああ、なるほど。うん、その作戦ならいけるかも」


 ステータスがマイナスの人間を探すよりは現実的だ。


「ま、倒せるかどうかは、五分五分だがな」


 びのは私の耳から顔を遠ざけ、ウィンクした。


 ウィンクもいいけど、もう少し、耳元で囁いてくれてもよかったんだからね……


「いや、絶対大丈夫、私とびのなら倒せるよ」


「よし、じゃあ、これから魔王二戦目、行きますか」


 びのが右手のひらを私に見せたので、私は思いっきりハイタッチした。


「さてと、作戦も考えたところで、砦まで何で行く?」


「そりゃあ、馬でしょ?」


「覧、馬に乗れるのか?」


「びのに乗せてもらうから問題ない」



「おいおい、オレが馬に乗れるわけないだろ? オレはただの中学生だぞ?」


「大丈夫だよ。全値全能なんだから、馬くらい乗れるって」


 根拠はどこにもないけど、びのならいけるでしょ。


「……それもそうか。よし、とりあえず、近くの牧場で馬を借りるか」


「そう来なくっちゃ」


 私は近くに居た兵士に、馬をどこかで借りれないか尋ねると、城の隣にあるKO牧場を紹介してくれた。


「すみません」


「いらっしゃい」


 木製のカウンター越しに居たのは、西部劇にでてきそうなウェスタンハットを被ったスレンダーな金髪女性だった。


「馬を一頭借りれませんか?」


「おいおい、覧、二頭でいいだろ?」


「ただの小学生が馬なんか乗れるわけないじゃない。だから、びの、二人乗りしよっ」


 私は両手を組んで、祈るようにおねだりをする。


「はあ、仕方ないな。今回だけだぞ?」


「うんうん、そうこなくっちゃ、びの」


「勇者様が乗る馬なんだから、速くてかっこいい名馬をよろしくね」


「もちろんダ。勇者様に乗っていただく馬なら箔が付くというものダ。こちらへ」


 私たちは馬小屋へと案内される。


「この馬なんかどうダ? 速くてかっこいい、最高の名馬ダゾ」


 おおー、白馬だね。


 どこか気品が漂う馬だ。


「そうだな」


 言いながら、びのは紹介された馬のたてがみを手でなでる。


 ヒヒーン。


 馬はとても懐いた様子で、びのの顔にほほずりした。


「おう、バロもお前たちを気に入ったようダ」


「バロ?」


「この馬の名前ダ」


「この馬を借りよう」


「まいど」


「お金は王子のツケで」


 あ、やっぱり王子のツケにするよね。


 さすがびの。


 びのは魔法剣を脇にさし、馬にまたがった。


「ほら、覧、お前も乗ってみろ」


 手を差し出された。


 えへへへ……


 憧れの自転車二人乗りならぬ、馬の二人乗りだよ……


 ご時世がご時世だけに、自転車二人乗りをしたら、交通規則を破ったと怒られるけど、馬なら問題ないもんね。


 さすが、異世界ファンタジー。


 落馬したくないからっていう理由で、びのに思い切り抱き着こう。


 ぐへへへへ……


 …………


 ……


 私たちは業火の砦へと向かった。


「見えてきたね、業火の砦」


「ああ、そうだな」


 ああ、ついに見えてきてしまった。


 びのとぴったりとくっついていられるのは、たったの2時間程度だったか……


 索敵魔法を使って敵を避けてきたとはいえ、速すぎだよ……


 これなら、名馬を借りないで、もっと遅い馬を借りればよかった……


 誰だ?


 名馬を借りようなんて言ったおバカさんは……


 ……私だ。


 本当、私ってバカ。


 まあ、その間、ずっと幸せタイムだったからいいんだけどさ……


 あたりが暗くなる前に到着できてよかったということにしておこう。


「とても大きなモンスターがいる。多分、ドラゴンかな? そろそろ、降りたほうがいい。馬に乗ってると、馬が食べられちゃうかも」


「借りた馬が返せなかったらどうなるんだ?」


「違約金100ゴールドだね。違約金もあの王子が出してくれるとは思わないから、自費かな?」


 日本円にして約100万円。


「そいつは怖い、そりゃ降りなきゃな」


 びのは大げさに肩をすくめ、私と一緒に馬から降りた。


 馬降りて、どちらを見ても、ドラゴン。


 空には、ドラゴン。砦の中にドラゴン。砦の外にはドラゴン。


 ドラゴンは3体ずつ居て、砦を守っている。


 まるで、ヤマタノオロチ分裂バージョンだ。


「やっぱり、大型のドラゴンばかりだったね」


「超大型じゃなくて良かったぜ」


 そりゃ、超大型とか、鎧をまとってるとかじゃなくて良かったけどさ。


「超大型じゃないと言っても、象より大きいんだよ?」


「この世界よりは小さいぜ」


 そりゃそうだ。


 この世界より大きかったら、私たちは宇宙で戦わなければならなくなる。


「そろそろ、アメリカンなノリはやめて真面目に戦おうよ」


「そうだな」


 ジョークでドラゴンが倒されてくれればいいが、さすがにジョークでなんとかなる相手でもないだろう。


「こんなに多くのドラゴン、増強が手なずけたのかな?」


「そうだろうな。相手より100倍の力を手に入れることができるんだ。ドラゴンを手なずけることなんか、お茶の子さいさいだろ」


「最強種のドラゴンを9体も手なずけるなんて、増強の強さがうかがえるね」


「そうだな。子どもだと思っていたら、痛い目にあうだろうな」


「さて、まずは、増強のところまでどうやって到達するかだよ、びの。忍び込む?」


 そう、まずは、増強と対峙しないことにはびのが考えた作戦は使えない。


 なんとか、このドラゴンの中をかいくぐらなければいけないのだ。


「さすがにこの数は無理臭くないか?」


「ほら、こっちにはコンパクトがあるから、行けるところまで行って、みつかったらコンパクトでここに戻って来るの繰り返しをすれば、少しずつ近づけるんじゃないかな?」


 もうあたりは暗くなり、夜になりかけている。


 この暗闇に乗じて、すこしずつ砦に近づくのだ。


 まずは、この場所の位置情報を保存。できるだけ城に近づいて、位置情報を途中セーブ。ピンチになったら、元の場所に戻る。安全を確認してから、セーブポイントからリスタート。そして、できるだけ城に近づく――を繰り返していけばいつかは城に到達できる。


 この方法なら戦闘を回避できるから、ダメージなく行けるはずだ。


「問題点3つもあるだろ。1つ目、途中セーブするのに1~2分の時間がかかる。2つ目、途中セーブしたところにドラゴンが居座ったら、戦闘は避けられない。3つ目、もしも最初のポイントに移動していることがばれたら、これも戦闘は避けられない」


 確かにその通りだ。


「じゃあ、どうするの?」


「倒すか……」


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