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第37話 デート

「覧、今、何が起こったんだ?」


 にやにやしながら訊いてくるびの。


「現象だけで言うなら、凍らせた近況が消えた……かな? 一度の現象だけじゃ、確実なことは言えないけど」


 きっと欲しい答えはこれだろう。


 私は呆れ口調でこたえる。




「魔王が虚空へ消えたということは、オレ達の勝利でいいんだよな?」


「うん、私たちの勝利だね」


 パチン。


 無言で顔を見合わせ、びのとハイタッチ。


 その瞬間、新しかった城が古い城へと変わっていった。


「この城、やっぱりぼろぼろだったんだな」


 びのの言う通り、廃屋といっても過言ではないほどだった。


 城には屋根すらなく、青い空を見上げることもできる。


 外の光って、こんなにも眩しかったんだね……


「新しかった城は、近況の幻想魔法だったみたいだね。その魔法が解けたから、魔素が離散したんだ」


「とりあえず、帰るか」


「そうだね、それじゃあ、今度は来た道を戻ろうか」


 びのとののんびりデート第2弾、ここに開幕!!


「おいおい。冗談きついぜ、覧。コンパクトで城の前まで一瞬でワープできるじゃないか」


 そして、びのとののんびりデート第2弾、ここで閉幕!!


 くすん……


 いいじゃないか。


 少しくらいご褒美タイムがあったって。


 あ、そうだ。


「城は兵士たちが厳戒態勢をとってるよね? 私たちが急に現れたら、パニックになりかねないよ?」


「それもそうだな……それじゃあ、ナルがいたところはどうだ?」


「そうだね、そこなら良さそうだ」


 表向きは何もない町を演出してもらっているから、あそこまで厳戒態勢はとっていないはずだ。


 人通りも少ないし、ちょうどいいだろう。


 名付けて、人気の少ない城下町をのんびりデートしてしまおう作戦!!


 これで、デートができる。


 人前で堂々と。


 そうと決まれば、すぐに町へ戻ろう。


 私はコンパクトを取り出し、びのと一緒に覗き込んだ。


 …………


 ……


「よし、城壁前に到着!!」


「もう、コンパクトの移動にも慣れてきたな」


 本当にこのコンパクトは便利だ。


 ちょっと便利すぎて、びのとの移動が楽しめないのが玉に瑕だけど……


 まあ、いいや。


 作戦通り、これから、びのとののんびりデート第2弾、ここに開幕!!


「お帰り。びのに覧」


 振り返るとそこには、ナルがいた。


 びのとののんびりデート第2弾、ここで閉幕!!


 速っ。


 秒で終わったんですけど。


 ワープした瞬間お邪魔虫が湧いて出てきたし。


 私とびののデートを邪魔するなんて、なんて厚かましい子!!


「お前、今日は暇なのか?」


「やだなー、王子様の命令で、待ってたんじゃないか」


「オレたちが帰ってくるのをか?」


 いつ帰ってくるかもわからなかったのに、待っていたのか。


 なんて健気な子なんだろう……とか思わないから。


 なんてストーカー気質な子。


 本当に恐ろしい……


「びの達の活動を報告すれば、お金をもらえんるんだよ」


 あ、お金ね。


 お金が欲しいから、ずっとここで待ってたんだね。


 なんて分かりやすい子。


「で、どうだったの? 魔王・近況を倒したの?」


 また情報が漏洩してる……


 なんで、ただの一般人が魔王を倒しに行ったことを知ってるんだ?


 ここの国の情報管理、本当に大丈夫か?


「もちろんだ」


「さすが、勇者様。それなら、祝賀会だ」


 やったーと喜びながら、ナルはびのの手を握る。


 その手を握るのはヒロインである私の役目なんですけど。


 なんであんたが手を握ってるんですかね?


 当てつけですかね?


「まだ、3体も魔王が残っているのに、はやすぎるだろ、祝賀会」


 びのは握った手を振り払ってこたえた。


「私もそう思う」


 ここの国の危機管理、本当に大丈夫か?


 まだ、3体もいるんだぞ。


「えー、お二人さん、つれないなー。ごちそうがでるんだよ、ごちそうが」


 ごちそうってアレでしょ?


 ここの名物……とか言って出してくる、最近出てきたドラゴンを売りにした食べ物でしょ?


 ドラゴンって言ってるけど、どうせ、スパイスを効かせて熟成させた高級牛肉か高級豚肉でしょ?


 ドラゴンは最強種なんだよ?


 一般人がドラゴンなんか狩れるわけないもん。


 仮に狩れたとしても、1週間で名物になるわけないし、ドラゴンがたくさんいるとも思えないし。


 ドラゴン風の味付けをしたまがい物に決まってる。


 そんなのにびのも私も騙されないんだからね。


「いや、ごちそうはいらない。オレはスパゲッティがあれば、それでいいしな」


「いらないかもしれないけど、王子様には倒したことをびのと覧が直接報告しないと、ナルが怒られちゃうよ……」


 食い下がる、ナル。


「まあ、とりあえず、報告には行くか」


「そうこなくっちゃ」


 言いながら、ナルはナチュラルにびのの腕をつかみ、城へと誘導するナル。


 おい、何してるんだ、ナル。


 そこには私が居る予定だったんだぞ。


 もう、怒った。


 それなら、剣を持っている片方の腕は私のものなんだから。


 ナチュラルに私がびのの腕を取ろうとすると、


「おい、ナル、暑苦しいから手を離してくれないか?」


 びのが言い出した。


「そうよ、ナル、びのも困ってるじゃない」


 びのの腕を掴もうとした瞬間、空を掴んで、ナルの腕を指摘する。


 ああ、私もナチュラルにびのと腕を組むチャンスがーーー。


「ああ、ごめん。ごちそうが食べられるってわかったら嬉しくなっちゃって……」


「ナル、オレたちがするのは、報告だけだからな」


「うん、分かってるって」


 本当に分かっているのだろうか?


 私たちはナルと一緒にまた城へと向かった。


 …………


 ……


「王子、とりあえず、近況は倒したぞ」


「さすが、よくやった」


 よくやった……って、上から目線過ぎるだろ。


「それでは褒美の晩餐会を開いてやる」


「あ、オレ、そういうの興味ないんで」


「私もパス」


 どうせ、晩餐会に出席したところで、権力の見せつけあいが始まるだろうことは予想できるし。


 王子が褒美を勇者に与えた……とか、貴族が私たちとお近づきになりたい……とか。


 そんな晩餐会に出たら、びのはモテモテになるに決まっている。


 貴族の娘の紹介とかされるんだ。


 そんなのダメだ。


 絶対、阻止しなければ。


「おい、褒美の晩餐会を開いてやるって言ってるんだから、出ろよ!! 何が欲しいか言ってみろ」


 本当に上から目線だな……


 ここで、びのが欲しいのは『お前の命だ』とか言ったら、本当に面白い展開になるのに……


 まあ、びのは言わないだろうけど。


 ……ってか、この王子、いい加減、自分の立場くらいわきまえろよ……と思っていると、すーっと大臣が現れて、王子に耳打ちをし始めた。


 何かあったのか?


 私たちに聞こえないように話しているところを見ると、知られたくはない何かなのだろう。


「何? キデギス総司令が目を覚ましただと?」


 大声で叫ぶ王子。


 せっかく大臣が耳打ちしたのに、台無しだ。


 ……ってか、この国には情報保護という概念さえないのか?


「キデギス? 確か、この国の最強剣士だっけか?」


 びのが独りごちる。


 確か、ミドラが言ってたな。


 最強剣士がいて、魔王にぼこぼこにされたって。


「ああ、そうだ」


 王子が頷いた。


「そいつが倒そうとした魔王は、近況か?」


「いや、違うな。確か他の魔王だったはずだ」


「それなら、そいつに訊きたいことがある。いいか?」


「おいおい、この次期王様と謁見の途中だろ? そんなの許されるわけが――」


 びのはギロッと王子を睨みつけた。


「――ないとは言い切れないだろう。さあ、キデギスと心行くまで楽しんで来い。この次期王様の心の広さに感謝するんだな」


 本当に、この国の未来は大丈夫なのだろうか……


 この国に住んでいるわけじゃないから関係ないが。


「私について来てください」


 大臣が道案内をしてくれるらしい。


 私たちは顔を見合わせ、頷いた。


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