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第25話 お風呂

「あら、どうしたの? 覧ちゃん。こんなに汚して。それになんか、血なまぐさいわね」


びののお母さんは鼻を左手でつまみながら、匂いを自分に来ないように右手でぱたぱたとあおぐ。


「異世界で、スライムに食べられそうになったのさ」


「あらあら、スライムは覧ちゃんがおいしそうに見えたのね。健康的な体してるものね」


鼻をつまみながらびののお母さんは言う。


「えへへ……そんなことないよ」


美味しそうだったのかな?


私、美味しそうに見えてるのかな?


「いや、覧、そこは照れる場面じゃないからな。モンスターにモテて喜ぶな」


「もうびの、覧ちゃんが食べられてるのに、あんた何してたのよ?」


びののお母さんは、びのの肩をばしんと叩いた。


「覧の救出」


「もっとはやく助けなさい。覧ちゃんに何かあったらどうするの?」


「ああ、次からはそうするよ」


「あんたも、汗臭いわね、びの。お風呂沸いてるから、覧ちゃんと一緒にお風呂入ったら?」


びのと一緒にお風呂……


何ていい響きだろう。


入る前からのぼせちゃうよ……


「おい、覧、顔を赤らめるな。母さんの冗談だ。一緒には入んないからな」

 

 えー?

 

冗談なの?


 びののいけずー!


 いや、びのは何も言っていない。


 言ったのは、びののお母さんだ。


 もしかして、マウントを取りに来てる?


「あら? 覧ちゃんとお風呂入んないの? なんなら、びの、母さんと一緒に入る?」


あ、やっぱり、マウントを取りに来てるな、確実に。


「お断りだ」


ふふふ、これでイーブンなのだよ、びののお母さん。


……って、びの、何でそんなに顔を真っ赤にしてるの?


まさか、びの、マザコン……


……って、そんなわけないよね。


中学二年生の男の子がお母さんと一緒にお風呂なんてことあり得ない。


もし一緒に入るんだとしたら、私とだよね。


まずはお風呂入っちゃおう。


私は脱衣所で汚れてしまった衣類を洗濯機に入れ、洗剤と柔軟剤を入れてスタートしてから浴室に入った。

 

 髪と体を洗い、湯船に入って、人の気配をうかがう。

 

はー、やっぱり、びの君は来ない。


いや、別に、期待しているわけじゃないんだからね……


……って、誰に言い訳してるの、私。


いや、もしかしたら、『覧、一緒に入るか?』……なんてことを想像しちゃったのは確かだけど。


あ、そうだ。


電気を消して、入れば、もしかしたら、浴室には誰もいないと勘違いしたびのが間違って入って来るかもしれない。


長時間お風呂に入ってゆでだこになりそうな私はふらふらとした足取りで浴室の電気を消そうとして、手を止めた。


いやいや、それだと、お母さんやお父さんだって勘違いするじゃないか。


典型的なマンガ展開じゃないか。


そんな展開にはさせないんだから。


そもそも、停電でもないのに、電気を消して入ったら、びのに変な子だと思われてしまう……


私はそのままお風呂から上がった。


その後、びののお母さんが電気をつけないままお風呂に入っていたが、もしかして、私、びののお母さんと同じ思考だった……


……いや、深く考えておくのはよそう。


…………


……



翌日


「びの、母さんからお弁当作ってもらったよ」

 

びのに作ってもらった弁当箱を見せつける。


 「よし、忘れないうちにバッグにいれてしまおう」


 「了解」


 私はすぐにバッグに詰め込む。


 「白衣は乾燥できたか?」


 「うん、匂いもとれた」


 本当に良かった。


 昨日洗剤で一生懸命下洗いした甲斐があったというものだ。


 これで匂いが取れなかったら、大変だったよ。


 きっと、異世界探索はクリーニングに出したあとからだったな。間違いなく。


 この世界の洗剤、万歳!


……って、オリジナル洗剤を作ったのは私か。


私、万歳!!


「今日は土曜日だし、一日中異世界を楽しむか」


「異議なし。それで、今日は何する?」


「とりあえず、図書館だな」


「そうだね。魔法はもう使えるようになったからいいとして、伝説か何かで魔王のことがわかると良いね」


情報集めは大切だ。


情報を知っているか知っていないかで生死をわけることもある。


「まあ、期待は薄いよな。予言書でもない限り、魔王のことが書いてある文献なんかあるはずがない」


「そうだね。タイムリープしているならともかく、魔王の情報は期待できないね」


「魔導書なしでも、魔法の知識があればオレも魔法がつかえるんだがな……」


「大丈夫。もし魔法の文献がなかったとしても、私がびのに教えてあげるよ」


手取り、足取り。


「図書館の後は何する?」


「ナルからハードスライムが多いと言われている穴場を教えてもらって、レベルアップといくか。二人で1匹倒したんだから、他のもいけるだろ。オレはレベルアップしてるしな」


「近いのは……昨日の狩場か……図書館の位置情報入力しておいてよかった」


「ちなみに、そのコンパクトに位置情報は、最大何か所登録できるんだ?」


びのは私が何回か登録しているから気になったのだろう。


「現実世界の家の他に、5か所保存できるよ」


「5か所か……少ないな」


「そうだね。でもないよりはましでしょ?」


1か所しか登録できなければ、目的地があってもわざわざそこまで行かなければならない。


それを思えば、ワープ地点を5か所もつくれるのだ。


そこまで見越してこのシステムをつくった私を褒めてもいいくらいだ。


本当は、ハワイとかを登録するつもりだったんだけどね。


「確かに。だが、無暗やたらに保存はできないな……保存は上書きできるのか?」


「当然。上書きする度に2~3分の時間はかかるけどね」


「そうか……1秒でも無駄にできないから考えて位置情報を入力しないとな」


「そうだね」


私は魔導書をびのはロングソードを持ち、ジオフの世界への図書館へと移動した。



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