表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/54

第18話 防具

「なあ、武器の次は防具だな。それも見繕ってくれよ」


「了解にゃ」


「白衣、邪魔ね」


私は白衣を床に脱ぎ捨てた。


「あいかわらずの美ボディだな」


口笛を吹いて、茶化すびの。


「まあね。よく言われる」


髪を耳にかき上げ、ポーズをとる。


「じゃあ、俺も制服を脱ぐか……」


びののお着換えタイム。


これは一生目に焼き付けておかないと。


「服を脱ぐより、メイキャップに登録したらどうにゃ?」


「メイキャップ?」


びのは第二ボタンを開けたところで手を止めた。


おい、ミドラ、お前もびのの脱ぐ姿見たいだろ?


何止めてるんだよ?


「覧様もびの様、メイキャップもはじめてかにゃ?」


「ええ」


「これも説明するより、見てもらった方がはやいかにゃ」


言いながら、猫耳メイド店員さんは、手にしていたデニムの帽子を被る。


「なるほどね」


 猫耳メイドが一瞬でカジュアルスーツになった。


 魔法って意外と便利なんだな。


 ……って、ちょっと待った。


 それじゃあ、びののお着換えシーンがみられないじゃない。


 何してくれてんの、ミドラ。


「メイキャップを被ることで、予め登録しておいた服に着かえることができるにゃ」


「これがあれば、着替えは楽だな」


びのは制服のボタンを留め始める。


「それって、1回だけなのか?」


「いやいや、一度登録すれば何度でも使えるにゃ。ちなみに、さっきの服装に戻りたいときは、もう一度被りなおすにゃ」


 言いながら、ミドラはもう一度キャップを被ると、猫耳メイドになった。


「帽子(兜含む)・武器・盾・服(鎧含む)・靴の5つ登録できて、いつでもどこでも着替えができるから、便利にゃ」

 

「これいくら?」


 「10ゴールドにゃ。魔法効果が付与されているキャップだから、いい値段するにゃ」

 10ゴールドって、安い!!


 これなら、いくらでも買える。


 ストレスを買い物で解消してやる!!


 「メイキャップは、このタイプしかないの?」


「大きく分けると、キャップタイプ、ハットタイプ、ベレー帽タイプ、ハンチングタイプ、ニット帽タイプ、シルクハットタイプ、ティアラタイプと全部で7種類。それぞれ4色あるから、28種にゃ」


「毎日違う装備ができるね」


こうなったら作戦変更。


たくさんメイキャップを買って、おしゃれな私をびのにアピール。


ふふふ、毎日違う格好でびのに言い寄れば、そのうち私に惚れるに違いない。

 

「じゃあ、それ、1タイプずつください」


 「お買い上げありがとうございますにゃ! どれも全て似合うと思うにゃ」


 「覧、それは買い過ぎだ」


 これはびのを惚れさせる先行投資。


 買い過ぎなわけないだろ。


 「あれ、でも待って」


 「ん? どうしたんだ、覧?」


 私は何かを見落としている気がする……


 なんだろう?


 ミドラはこれを魔法効果の付与されたキャップだと言った……


 魔法効果……ってことは……


 「私、このメイキャップの魔法使えるんだけど」


 そうだ、私、この魔法使えるじゃん。


 さっき魔法を覚えたんだから。


 「覧、マジで?」


 「うん。マジで」


 「ちょっと、やってみてよ」


 「じゃあ、メイキャップ!!」


 私が呪文を叫ぶと、虚空から魔導書が私の手元にとさっと落ちた。


 「おー、メイキャップなしでもできるじゃないか。よっ、魔法少女、覧」


 まさか、あのびのに魔法少女なんて呼ばれる日が来ようとは思わなかった。


ついに私も中二病になる時がきてしまったというのか……

 

まだ、小学校六年生なのに……


 いや、正確には小学校なんか通ってないんだけれども。


 「そうだったにゃ。覧様は、もはや全ての魔法が使えるのにゃ……ということは……」


 「じゃあ、このメイキャップ、私の分は買わなくていいから」


「にゃーー!! 自慢の商品をたくさんお買い上げしていただけると思っていたのに」


ミドラ、可哀そう。


いや、これは復讐だ。


一種の『ざまぁ』だ。


「でも、結局、着かえるものがないと、この魔法って意味ないにゃ。だから、家でお買い上げをするといいにゃ」


「あ、そっか。さすがに、着かえる装備がないと、この魔法も意味ないか」


「でも、わざわざここで買わなくても、オレたち、元の世界に帰れる予定なんだから、無理して買う必要ないんじゃない?」


「それもそうね」


確かにびのの言う通りだ。


もし、この世界と元の世界を行き来するのであれば、最初から最強の防具を元の世界で装備してからこのジオフの世界に来ればいい。


おそらく、私の魔法は元の世界では使えないはずだ。


「にゃーー!! 自慢の商品をたくさんお買い上げしていただけると思っていたのに」


ミドラ、可哀そう。


いや、これは復讐なのだ。


びののお着換えシーンを……以下略……にしようと思ったけれど、それじゃあ、私の怒りは収まらない。


何度でも言おう。


びののお着換えシーンをカットしたミドラへの復讐なのだ。


びののお着換えシーンをカットしたミドラへの復讐なのだ。


びののお着換えシーンをカットしたミドラへの復讐なのだ。


うん、3回も思ったから、スッキリ。



「さて、覧がメイキャップの魔法を使えることが分かったところで、防具を選ばないとな」


「高いのを売りつけてやるにゃ」


キラリとミドラの目が商人のものとなった。


「「え? そりゃ、いい防具なら高値で買わせてもらうけど?」」


私とびの、声がハモった。


「にゃーー!! 2人はお客様の鑑にゃ」


「客の鑑だ? 大げさなんだよ。そんなの当たり前だろ?」


びのの言う通り、いい商品を適正な値段買うなんて、当たり前のことじゃないか。


何なら、少し高くたって文句言わない。


こんな風に仕立て上げるには、職人の並大抵じゃない苦労がうかがえるというのに、ミドラは何を言ってるんだろう?


この世界では、良いものを安く買うという文化がはびこっているのだろうか?


それじゃあ、経済が回って行かないじゃないか。


働けど働けど、なお我が暮らし楽にならざり、じっと手を見る……みたいな世界になっていくじゃないか。


「ここで出し惜しみするようなら、商人はできないにゃ。良い防具を紹介してやるにゃ」


「サンキュ」

 

「まずは、今装備しているものがどの程度の防具かを確認するにゃ」


 「確認って、具体的に何をするんだ?」


 「ちょっと、触らせるにゃ」


 私のほうに顔を動かし、怪しげに目を光らせ手をわきわきと動かすミドラ。


 それは間違いなく、裁縫士の目つきであった。


 「私の白衣はダメよ。猫に触らせたと考えただけでおぞましい」


 鳥肌案件だ。


 「じゃあ、オレの制服を……」


「もっとダメ。私の白衣にしなさい」


びのの衣服を他の女に触らせるなんて、言語道断なんだから。


何のためにクリーニング屋さんにも持って行かずに、私が手ずからびのの制服をクリーニングしていると思っているんだ。


びのの服はびののお母さんにもさわらせたことないのに。


私は床に落ちていた白衣を拾って、肩に羽織った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ