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第15話 ステータス

「おい、店長が適当なこと言うから、覧がへそ曲げたぞ。この責任どうとるんだよ?」


 びのはミドラの耳元で囁く。


「あ、耳元で何を囁いてるの? びのまで私を裏切るの?」


「何が裏切りなんだよ?」


 びのはとぼけた態度で訊いてくる。


「猫耳女と、内緒話してる。もしかして、二人でデートのお約束ですか?」


「初対面の人とデートの約束するはずないだろ」


「私の目の前でナンパとか、まじありえない」


 会話は聞き取れてはいたが、耳元で囁くなんて浮気行為は絶対許さないんだから。


 絶対に、絶対に、絶対に、絶対に許さない。


「違うよ。覧に合いそうな服を注文したの。覧をサプライズで驚かせようかと思ったの」


「もう、それならそうとはやく言ってよね。女の人に耳元で囁くから勘違いしちゃったじゃない」


「ごめん、次から気を付けるよ」


 ははは……と笑ってるけど、私にはわかる。


 嘘だ。


 びのは嘘をついている。


 聞こえていたもの。


『お前のせいで覧のへそが曲がったんだ。お前責任取って、オレとデートしろ』……って。


 そうやって乙女心を弄ぶつもりね。


 いや、オレとデートしろとは言ってなかったけどさ。


「このセクシーなドレスなんていかがかにゃ?」


 私の心など微塵も察する様子もなく、ミドラは私に純白の絹で造られたようなドレスを勧めてきた。


 確かに、似合いそうだけど、ところどころ肌が露わになるドレスだ。


 小学生の私には少しセクシー過ぎはしないだろうか。


「お、これは似合いそうだな」


 くいつくびの。


 びのの服のセンスは半端ない。


 びのが似合うと言ったら、ほぼ100%似合うのだ。


 この服も私が袖を通せば似合うのだろう。


 でも、これはちょっと恥ずかしいかな。


「似合うかもしれないけど、おしゃれ重視で、装備としては心もとないんじゃない?」


 びのの言葉よりも羞恥心が勝り、やんわりと断る。


「このドレスは、ファイヤーモスの蛹が紡ぐ希少な糸で作られているから、10ゴールドとお高めで露出面も多いけれど、耐火の効果が付与されてるにゃ」


「まあ、こういうのを着た覧も見てみたいかな」


 びのは片目でウィンク。


「もう、びのったら、仕方ないなー」


 べ……別に、びののウィンクにつられたわけじゃないんだからね。


 あのウィンクはとりあえず、これを買う意志を示すことで、ミドラがオススメの商品を持ってくるかもしれないぜ……っていう意味合いが含まれていることに気付いただけなんだから……


 ……って、誰に言い訳してるの、自分。


「これ、購入するわ」


 手にしたドレスをミドラに渡す。


「ありがとうにゃ」


「こういうのもいいんだけど、やっぱり本格的なものも欲しいわね」


 私はそれとなく話を切り出した。


「そうだな。できるだけ強い武具が欲しい」


 びのも私の意見に同意する。


 さすがびの。


 自然に強い武具の話にもっていけた。


「にゃ? お兄さんたち、魔王を本気で倒そうとしているガチ勢にゃ? 全然そんな風には見えないにゃ」


 ミドラは子どもが大人の真似事をするために装備を買いにきたとでも思っていたのだろう。


 だから、おしゃれな防具を勧めた。


 こちとら、勇者と、その御一行なんだぞ。


 御一行と言っても、パーティーはびのと私の二人だけどね。


「当たり前じゃない。お城の王子様にここの評判を聞いてきたんだから」


 嘘だ。


 そんな評判は聞いていない。


 でも、おだてれば良い装備品を紹介してくれるかもしれない。


 びのに目線で合図すると、びのはこくりと頷いた。


「にゃにゃ? 王子様と仲がいいのかにゃ?」


「当たり前じゃない。さっき、びのが喧嘩を売ってきたっていったじゃない? 喧嘩をするほど仲がいいって、言うじゃない?」


 この世界でも、喧嘩をするほど仲がいいというかどうかはわかんないけど、喧嘩をしてきたのは嘘ではない。


「じゃあ、本当に王子様がミドラのお店のことを知ってるのかにゃ?」


「うん、あそこの店はいいものを揃えてるって言ってたよ。ねえ、びの?」


「ああ、買うなら、ここで買えってな」


 王子様はそんなこと一言も言ってないけど、今はおだてるのが一番だ。


「にゃにゃ? そんなに有名になっていたのかにゃ?」


「もう、有名、有名」


 びのはミドラにゴマすりをしまくっている。


「装備はミドラ店長に任せれば安心だって……」


 言ってないけど、とりあえず、こんなにおだてればいい装備がでてくるはず。


「それなら、スクロールマニアでステータスマスターのミドラに、ステータスを見せるにゃ」


「スクロールマニアでステータスマニア、それは頼もしいな」


 さすがびの。


 スクロールマニアもステータスマニアもよくわからない単語だけど、とりあえず復唱しておだててる。


 多分、スクロールマニアは、巻物マニアで、ステータスマニアはステータスのマニアってそのまんまの意味だと思うけど。


「でも……私たち、できればステータスは人に見せたくないんだよ」


 ステータスにはびのの適職が勇者だと書いてある。


 それがばれると色々と面倒だ。


 ミドラなら『お前、勇者だったのかにゃ? それなら勇者御用達のお店として売り出すから、サインを書くにゃ』……とか言いかねない。


 最悪、ストーカーとかに発展してしまうかもしれないし……


「大丈夫にゃ。秘密は守るにゃ」


「スクロールを見ずに、見繕ってくれない?」


 なんとか食い下がる私。


 スクロールをみせないに越したことはない。


「それは難しいにゃ。もし、その人に合わない武器だと、自分で自分を傷つけることもあるにゃ。それに防具は、その人の体力に合わない防具を着れば、戦闘はおろか、呼吸もできなくなっちゃうにゃ!!」


 びののステータスなら、何でも着こなせるから大丈夫だろうけど、私のは平均くらいだから、さすがに見せないとまずいか……


 びのに目くばせすると、びのはこくりと頷いた。


「じゃあ、絶対秘密ってことで」


「任せるにゃ」


 私はミドラに二人分のスクロールを見せる。


「にゃ? にゃにゃにゃ? どういうことにゃ?」


「ああ、実はオレ、勇者で……」


 勇者だったということに驚いたのだろうと思ったびのは話を切り出した。


「装備が反映されていないにゃ!!」


「それってどういうこと?」


 どうやら、びのが勇者であることよりも装備が反映していないことに驚いたようだ。


「口で説明するより、見たほうがはやいにゃ」


 言いながら、猫耳メイドはステータスのスクロールを見せてくれた。


 ミドラ(ミドラ)LV10 身長:秘密 体重:秘密

 HP:30(+0)

 MP:30(+0)

 天職:縫製士

 筋力:15(+0)

 体力:15(+0)

 耐性:20(+5)

 敏捷:20(+5)

 魔力:25(+10)

 魔耐:30(+10)

 運 :20(+5)

 技能等:大量(ソー)裁縫(マッチ)技能(スキル) レア度:☆


「普通、どんな装備をしていてもステータスの隣に、補正値(+0)がつくはずなのに、ついてないにゃ」


「あ、それ、オレも気になってた」


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