66.お似合い
不定期更新ですが、よろしくお願いします。
ダンジョン特有の広くない通路の先に、三匹のオークと交戦中のパーティを見つけたラインハルト。
「助けはいるか!?」
「! だ、大丈夫です!!」
そう返事が返ってきたので、そのまま壁を蹴って一団を避け、通り過ぎる。
そのまま階段を目指し、黒いマントを靡かせて二人は走り去っていった。
それを目の端で確認しながらパーティは戦い続け、何とかオークを倒して一息つく。
「やっべぇ……今日は三回も漆黒の両翼に会っちゃったよ。一体何周してるんだろうな?」
「さあな〜。でも相変わらず、すげーなぁ」
「そうよね! 格好良いわぁ〜。この前の助けてくれた時なんてもうっ!!」
「そうだよな〜。トドメを刺さず、倒してくれるなんて有り難いよな」
「さて、俺たちも頑張ろうぜ」
「そうだな、そろそろ行くか」
そう言い合って立ち上がり、階下を目指す一行だった。
◇◇◇
ラインハルトとルティカはしばらく王都でのんびりした後、レベリングと収集を兼ねてザザビークのダンジョンに行く事にした。
ラインハルトには隠す必要もないので、偵察で地図マップが見える事や浄化や治療などのスキルを話すと、便利で良いと羨ましがられた。
当然のように二人で走ってザザビークに向かい、途中の魔獣は殲滅する。
ラインハルトは魔法も使うが、主に剣で戦うスタイル。
あっという間に敵を斬ってしまうので、さくさく進んだ。
ザザビークに着き、そのままダンジョンに直行。
ルティカが以前に殲滅し過ぎたので30階まではスルーしていたと言うと、ラインハルトもそこまでは何度も行ったから、それ以降に行きたいとの事。
やはり31階以降は、臭さがネックで進めなかったらしい。
シールドで匂いを気にせず進めるよと言えば、目をキラキラさせてくれていた。
以前、ラインハルトもこのダンジョンでレベルを上げていたが、範囲が限られているとはいえ魔物を探すのにそこそこの時間を要していたため、ルティカがマップを見て的確に敵の位置を把握し、殲滅するこの効率重視のレベリングを気に入ったようだった。
それならと、収集のためウォーウルフのみ殲滅し、サクッと最下層まで行きラスボスをクリアして地上に戻り、宿をとって夜は一緒に眠る。
次の日から、朝に食料を買い込み、日が暮れるまでダンジョンを周回し、夜には宿に戻って二人で過ごす。
ラインハルトはレベル上げのために、ルティカは収集のために周回を続けた。
特にラインハルトはルティカにレベルで負けているのが悔しいらしく、積極的に周回していた。
レベルを上げるための経験値は、基本的に魔獣を倒した者に入るため、止めは全てラインハルトが行う。
ではルティカは何をしているかというと──
ペーペーの弓のスキルをせっせと上げていた。
今まで攻撃スキルに関心を寄せてこなかったルティカだが、ラインハルトの剣術スキルを見て知り、自分にも何か攻撃スキルが必要ではないかと思い至った。
今までに魔法を封じるトラップは見た事がなかったが、ギルバートはあると言っていたし、万が一にも魔法が使えない事態に陥った時に、何も出来ないのも困ると思ったからだ。
ルティカは近距離があまり得意ではなかったので、遠距離の弓矢を選んだ。
弓術のスキルを取ってみると、レベル1で『10m先の50cmの的に当たる』だった。
最初は持っていた木の矢を使ってみたが、万が一でもラルフに当たるのは嫌だったので、魔力で水の矢を作り射つようにした。
そうは言ってもルティカのレベルで本気で射てば、たとえ水の矢でも半端ない威力になるので、そこら辺は気を付けて射っているので問題ない。
スキルは使えば使う程にレベルが上がるので、暇さえあれば弓を射ちまくるルティカ。
ルティカによって魔獣までの最短ルートを導かれ、サクサク倒して経験値を貯めるラインハルト。
中々にお似合いの夫婦である。
ルティカはスキルの、ラインハルトは自分自身のレベルを上げる目的で、ダンジョンを一日に何周も回る。
誰も調べていないが、最短記録があるとすれば、更新しまくっている夫婦であった。
そうなると30階までの間で探索している冒険者のパーティとは、何度も遭遇するハメになる。
誰も二人のスピードに追いつけないのだから、当然と言えば当然の結果だった。
最初の頃はそんな彼らを避けて通っていたが、いつだったか苦戦しているのをみて手助けした事をきっかけに、声掛けをして通り過ぎるようになった。
何度も続けば、誰もが二人を認識し、ついにはボス部屋まで一緒に入るようになっていった。
流石にボス戦に手助けはしない。
ただ、どうしても倒せない場合のみ、交替して倒したりしたが基本的に素通りさせてもらっている。
このダンジョンのボスの 再出現は一時間だったので、他の冒険者達の協力により、ルティカ達の周回速度はさらに上がった。
毎日飽きもせず、ダンジョンの周回を繰り返す二人組は冒険者達の間ですぐに有名になった。
二人ともフードのついた真っ黒なマントを羽織り、風のように通り過ぎていく様からいつしか『漆黒の両翼』と呼ばれるようになった。
後にそれをギルドで聞いて、ルティカは「誰よ? そんな厨二病の名前つけたの……」と頭を抱えたが、ラインハルトは思いの外気に入ったようだったので、ま、いっかとあっさり切り替えたとか。




