47.ないわー
それからは穏やかな毎日だった。
もう狙われる事もないので、ゆっくり眠れるし、夜会でダンスをする必要もなく、お茶会でもにこにこ笑っているだけ。
ラインハルト様は王宮勤めなので領地は家令に任せてあるらしく、義弟のツヴァルツ様が任される予定だそうだ。
学のない私に内政チートなど出来る筈もなく、あまり口出しするのもどうかと思うので、当然領地に行く必要もない。
……つまり暇であり、退屈だった。
一応暇だったので使用人達の様子を偵察し、希望を叶えたりしてたので人望だけは厚くなった。
暇潰しに王都図書館に通ったりもした。でもレベルMAXの記録は一度触れれば中身を覚えてくれるので、あっとゆー間に通うのは終わった。
後は自室で好きな時に読んでたりした。
その結果、引き籠りで溜息ばかりついている、ダメな公爵夫人が出来上がってしまった。
ユノには定期的にスワロウの羽根を採りに行ってもらっている。ついでに討伐もして、少しずつレベルを上げている。
羨ましい。私も行きたい。
はぁ〜。
ダンジョンに行きたいなぁ。
貴族ってつまんない。
ラインハルト様は相変わらず美しく、優しい。
そう、何も変わらなかった。
今でも白い結婚だ。
そろそろ後継を……と周りに言われる事もあったが、出来る訳がないので曖昧に笑うしかなかった。
その内夜会でラインハルト様が、他の方とダンスをするのを見掛けるようになった。
それを見てると少し胸が痛んだが、無視した。
ラインハルト様に好きな方が出来れば、この生活から解放されると思ったから。
◇◇◇
そして結婚して三年が経とうとした頃に、ラインハルト様に呼ばれて言われたのが、コレ。
「紹介しよう、男爵令嬢のマリア・デ・ウィードリスだ。今度マリアを第二夫人に迎える。そのつもりで準備してくれ」
ーーはぁ?!
何で第二夫人?
言ったよね?私、ちゃんと言ったよね?
浮気は許さないって。
先に言ってくれれば離縁したのに。
今はダメダメな公爵夫人だけど、結構頑張ったよ?
なのに、この仕打ち……。
なくない?
いかん、昨日の事を思い出したら苛々してきた。
気分転換に採取にでも行こうかな?
そう思いながら街中を歩いていると、通りの向こうからギルが来るのが見えた。
「ギルっ! 久し振り! こっちに来てたんだ?」
「ルカ? おお、久し振りだな。どうしたんだその格好? 貴族やってたんじゃないのか?」
「まあ……色々あって。ねぇ、時間ある? ご飯でも食べようよ」
「ああ、良いぜ。こっちも結構溜まったぞ。そろそろ渡そうと思ってたんだ。丁度良かった」
「よし、決まりね」
二人で食事をしながら、この三年間の事を話し合う。
「じゃあ、もう貴族はやめたのか?」
「うん、もう良いよ。やっぱり私には冒険者の方が性に合うもん」
「ま、そうだろうな」
「ちょっとー、何よそれ? それはそれで失礼じゃない?」
「何だよ? そんな事ないだろ?」
やっぱりギルと居ると楽だなぁ。
気を張らないで良いし、同い年だし、兄妹……いや従兄弟みたいかな。
「ねえ、今はまだ依頼の途中なんでしょ?」
「ああ、ちょっと寄っただけだ。またすぐに行くぜ」
「じゃあ、それ終わったら私も一緒に行っていい? 確かそろそろ世界樹が紅葉するんでしょ?」
「そうだな、今から向かえば丁度良いくらいかもな。じゃあ一緒に行くか」
「やったぁ。有難うギル」
「戻ってきたら一度アイテムも渡すわ。侯爵家に行けば良いか?」
「あー、今は夕顔亭に居るから、そっちかギルドにいると思う」
「分かった。じゃあ、またな」
「うん」
気分も晴れたし、リハビリを兼ねて依頼でも受けようかと思い、ルティカはキルドに向かった。
依頼を見るのも久し振り〜と喜んでギルドに入れば、受付嬢のタチアナに呼ばれてしまう。
「ルカ、連絡があったわよ」
「……何て?」
「エクセライク公爵から話があるので、五日後に公爵家に来て欲しいって」
「……わかったわ」
「ねぇ、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。心配してくれて有難う」
「そう? 何かあったら言ってね」
「うん、取り敢えず今日は依頼を受けようかな」
「分かった。また持ってきてね」
「はーい」
さて、面倒だけど、このままって訳にもいかない事は分かってる。
話し合ってきますか。
でも今日は依頼だもんね。
久し振りに草刈りもしたいな〜。
そう思いながら、うきうきと依頼ボードに向かうルティカだった。




