45.ニ度目はない
次の日、気持ちの良い天気だったので四阿でお茶を楽しむ。
態々ここまで運んでもらうのは気が引けたが、折角一つ問題が解決したんだ。密かにお祝いしても良いだろう。
ユノも一緒に……と思ったけど、絶対断られるだろうからやめた。そんなユノを見てみると、何やら思い詰めたような顔をしている。
「どうかしたの?」
「主……主のレベルは幾つなんですか?」
「私? 97よ」
「……97……私は?」
「ユノは……31ね」
「分かるのですね」
「ええ、レベルと体力、魔力は名前と共に見えちゃうわね。それ以外は鑑定しないと分からないけどね」
「見えているモノからして違うのですね」
「どうしたの? ユノは充分強いと思うわよ?」
「でも主の半分にも満たないなんて……従者失格です」
「そんな事ないでしょ? 紅茶、美味しいよ?」
「はぁ……有難うございます」
あら、溜息をつかれちゃいました。
「何? レベルを上げたいの? 簡単よ?」
「出来るんですか?」
「ええ、魔獣を狩れば良いだけだもの。私は素材を集めるために狩っていたら、いつの間にか上がっていたわ」
「そ、それは主だからじゃ……」
「うーん、レベリング出来れば簡単だけど、今は行けないしなぁ」
「レベリング?」
「簡単に言えば効率よくレベルを上げる方法の事。高レベルと一緒に行えば楽に上がるからね」
「そんな方法が……」
「もしいつか行ける機会があったら、一緒に行きましょう」
「はい、有難うございます」
いつか……か。行けるかなぁ?
◇◇◇
暫くすると王族主催の夜会に招待された。
私は基本的にラインハルト様が出る夜会にしか出席しない。お茶会もフェリシア様がいらっしゃる場合のみ。
こんな事で公爵夫人が務まるのかと思いきや、何とかなっている。
と言うのもお茶会や夜会はフェリシア様がたまに開催されているので、私はそれのお手伝いをしている形だ。
社交での私の出現率はかなり低いと思う。
そんな私でも王族主催の夜会を断る事は出来ないので、当然ラインハルト様と出席する。
夜会は面倒だけど、ラインハルト様と踊れるので嬉しい。近くで見ててもおかしくないもん。
ああ、今日もキラキラと綺麗。どうしていつもエフェクトが掛かって見えるのだろう。不思議だ。
踊るのは楽しいが、そう何曲も踊れるわけも無く。一曲踊ればラインハルト様は離れて、交友に行ってしまう。
残された私にダンスの申し込みが来るが、それをのらりくらりと交わして壁の花と化す。女性も話しかけて来ないが、ボッチ上等なので一向に構わない。いつもならこの辺でタイミングを見て、スワロウの扇を発動させ気配を消してしまうのだが、今日はそんな訳にいかなかった。
フェリクス様がにこやかに微笑んで、私に手を差し伸べているからだ。
「私と一曲踊っていただけますか?」
「ええ、勿論ですわ」
断れる訳がないじゃない。
差し出された手に右手を添えると、広間の中央にエスコートされる。
初めて踊るけど、流石に上手いですね。ラインハルト様とは違った少し強引なリードがよく似合います。
「警告、確かに受け取った。母上も反省していたよ」
「そうですか」
「あれで見逃してもらえないだろうか?」
「本当に殿下は甘いですね。私にはなぜ生かしておくのか分かりません」
「……あんなでも母親なんだ」
「だから?」
「……」
「上に立つ者として、考えが甘いように思います。が、まあ良いでしょう。ただ、二度目はありません」
「分かった」
こんな会話ですが、見た目はニ人とも微笑み合っているので仲良さげに見える筈です。
ラインハルト様以外と踊らない私が、珍しく踊っているからか注目されていますが王太子とだから大丈夫でしょう。
断れませんもんね。
フェリクス様から解放されたら早々にお花を摘みに行き、気配を消して夜会の終わりまで雲隠れする。
ラインハルト様が帰りそうなると姿を現して、寄り添い帰る。
私の夜会は大体そんな感じだ。
帰りの馬車の中で、ラインハルト様が尋ねてきた。
「今日は珍しく踊っていましたね」
「はい、フェリクス様に誘われましたので」
「楽しかったですか?」
「え? ええ、流石に殿下はダンスもお上手でしたね」
「……そうか」
そう言ったっきり、ラインハルト様は外を眺めて黙り込んでしまった。
何か機嫌を損ねる事をしてしまったのだろうか?
重い沈黙が続き、馬車が走る音だけが響いていた。
屋敷に戻ってからも、一度も目も合わさず自室に戻ってしまった。
どうしたんだろう?
不安だったが、一晩明けて朝食で顔を合わせたラインハルト様はいつもと変わらなかった。
むしろ何時もより若干笑顔増しだ。何故?
そしてにこやかに告げた。
「ルティカ。今度の休みに一緒に出かけましょう。いいですね」
「はい」
決定事項でしたね。
嬉しいですけど。




