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42.交渉


 暫くすると侍女がお茶をお菓子を持って来てくれた。

 そんな簡単には時間が空かないと思うので、ゆっくりとお茶を楽しむ。勿論無毒なのは鑑定済みだ。


 ユノを見ると、渡したマントをさわさわと触り心地を試したり、じっくり見たりしてた。



「なあ、これって凄いな!」

「! そうでしょ〜。分かる?」

「ああ、何でフードを下ろしてるのに、前が見えるんだ? 一体どうなってんだ?」

「ふっふ〜ん。それはね、スケルトンナイトの魔石で作った『英勇の影』っていうマントなんだよ。風とかでフードが脱げる事もないし、外からは見えないけど、中からはちゃんと景色見える仕様になってるんだ。肌触りは良いのに、耐水性だから使い勝手も最高なんだ」

「へぇ〜。良いじゃん。色も黒でカッコイイし」

「気に入った? それはユノに上げるよ。お揃いだね」

「良いのか!? 有難う」



 気に入ってもらえたようで良かった。

 これはザザビークのダンジョン周回で、手に入れたスケルトンナイトの魔石500個で合成出来た代物。どうして中から外が見えるのかは分からない。合成で出来る代物は、謎仕様が多いが使い勝手はかなり良い。使えない物も多いが。



 のんびりと待っていたが、夜になっても呼ばれなかった。お腹が空いたな〜と思っていたら、侍女が軽食を持って来てくれた。

 おお、中々の高待遇じゃない。こんな真っ黒のマントの怪しい二人なのに、態度に出さない侍女さん。プロ意識が高いですね。



 

 夜も更けた頃、ようやくラナが迎えに来てくれた。

 そのまま案内されて、ちょっと広めの部屋に向かった。



「これはこれは……」



 つい溢してしまったら、ラナが怪訝な顔をして振り向いた。



「如何なさいましたか?」



 ラナを見る限り、知らされてはいないみたい。

 向う部屋には、奥にニ人、そのニ人の前にニ人。入り口の横にニ人、少し離れて一人。扉手前にニ人。

 ふむ、まあそんなもんでしょう。


 扉に近付く前に、チラと後ろのユノを見る。

 こくりと頷き、私のすぐ後ろに付く。

 ユノ、分かってる〜。

 素早くシールドを展開する。



 扉前に連れられ、ラナがコンコンとノックをする。



「お連れしました」

「入れ」


 

 重そうな扉を横に立つ衛兵が開けてくれる。



「ラナ、貴女は少し離れた方が良いわ」

「え?」



 ユノと部屋の中に入る。


 と同時に近くのニ人が斬り掛かってきた。少し離れた一人はナイフを三本同時に投げつけて来ている。その三人は目しか見えないような服装で、隠密っぽいです。

 どの攻撃もシールドによって弾かれ、近付く事は出来なかった。物理攻撃が効かないと判断して、すぐに魔法攻撃に移り、三人が三様の魔法を打ってきた。

 が、当然魔法も無効。シールドに触れると霧散して消える。


 

「もうよい、止めい」



 その言葉とほぼ同時にその三人はフッと消えた。


 どこ? どこに消えてんの? 地味に知りたい。

 マップ上は一応部屋には居る。天井裏?

 うーん、ユノなら知ってるかな? 後で聞いてみよう。 



「手荒い歓迎ですね」

「いや、すまんな。実力を測り切れていなかったようだ」

「いえ、お忙しいのにお時間をとっていただいて有難うございます」

「かなり無理矢理だったがな」

「まさか陛下だとは思いませんでしたので」

「彼奴はフェリクスの影だが、我も居た方が良いと思ってな」

「そうですね、話が早くて助かります」



 部屋の奥には重厚な机があり、そこの豪華な椅子に座っていたのは陛下だった。

 その横に立っているのは王太子のフェリクス様。

 お二人を守る様に机の手前横に立っているのは近衛衛兵の第一隊長と、副隊長。

 

 中々の布陣ですね。



「不敬である。マントを取れ!」



 隊長が苦々し気に言い放った。



「ではお人払いを」

「貴様っ! 貴様の様な怪しげな奴と陛下を一緒にしておける訳がなかろうっ!」

「そうは仰いましても、陛下にとっても知り得る方は少ない方が良いと思いますよ」

「……下がれ、エイバルディ」

「ですがっ!」

「陛下や殿下に危害は加えませんわ。お約束致します」

「だ、そうだ」

「……畏まりました」


 

 ニ人が部屋から出て、外に待機している。

 シールドを解除し、防音壁を展開する。

 そこでマントを取る。マントの下はドレスと従者服なので大丈夫。



「まさか蒼の宝石とはな」

「恐れ入ります」

「で、何用かな?」

「これをご覧になっていただきたく」



 そういいながら、バルバラ様の証文を風魔法で陛下の前に飛ばし、浮かす。

 破られちゃったら困るもんね。



「……これは……」



 それを見た陛下と殿下は、顔色を悪くしてる。



「私、もう何十回と狙われました。いい加減頭に来ましたので、昨日そのギルドを壊滅させました。でもまた他のギルドに頼まれたのでは堪りませんわ」

「……それで」

「バルバラ様を断罪していただきたいと思っています」

「それはっ!」

「落ち着け、フェリクス。……流石に断罪は出来かねる」

「そうですか? でもバルバラ様は幽閉くらいじゃ効かないでしょう?」

「貴様っ! 母上を愚弄するなっ!」

「殿下、私は沢山狙われて怒っております。今すぐバルバラ様を消してしまっても構わないんですよ? これは私なりの譲歩ですが?」

「何を言ってる!? そんな事出来るはずがなかろう!」

「何故出来ないと? 私にとってバルバラ様は敵でしかありませんが?」

「フェリクス。お前は黙っておれ。相手の実力も分からんのか」

「ですが、父上っ!」

「彼女がその気になれば、この国など無くなるだろう」

「そんなっ!」



 流石に陛下にはレベル差が分かるみたい。

 でも国は滅ぼせませんよ?

 王族を消すくらいです。

 


「態々そんな事はしませんわ。お父様が困りますもの」

「そうであってくれると助かる」

「では、後一つ」



 オールト侯爵の証文も風で浮かせて見せる。



「ま、まさかっ!」

「親子ですね。同じギルドに頼むなんて。これを隣国が知ったらどうなりますかね?」

「……脅す気か?」

「まさか。それに私が今そのお二人を消せば、困るのは陛下だと思いますが」

「……そうだな……」

「殿下には申し訳ございませんが、バルバラ様はどうにもならないと思いますよ? お茶会では即死の毒を盛られましたし。フェシリア様の事もそうなのでしょう?」

「フェリシアがどうした?」



 陛下が怪訝な顔をして聞いてきた。

 呆れて、殿下を見やって問いただす。



「殿下、陛下に報告されてなかったのですか?」

「……まだだ」

「フェリシア様にも毒を盛っていらっしゃいました。こちらは徐々に弱っていくタイプでしたね」

「……」



 陛下も殿下も黙り込んでしまった。

 まあ、確かに直ぐ判断するのは難しいかもしれない。



「では、ひと月待ちます。その間に何か対応をお願いします。何もなされない様でしたら、私が動きます。それで良いですか?」

「……分かった」

「それと、お父様やラインハルト様は何も存じません。私が勝手にやっている事です。彼らに何かする事は許しません。私がここで大人しくしているのは、彼らのお陰だという事をよく理解しておいてくださいね」

「相分かった」

「では、失礼させていただきます」

「うむ。下がってよい」



 浮かした証文達を回収し、マントを着ける。防音壁を解除し、シールドを展開して部屋から出る。

 廊下では隊長が睨んでいた。怖っ。

 早々にスワロウの扇を使い気配を消して、影達を撒き、王城から出る。



「遅くなっちゃったね。お疲れ様。ユノが来てくれて助かったよ」

「そうかぁ? 俺、必要だったか?」

「うん、一人だと待ってる間つまらなかったでしょう?」

「そこかよ! まあ、良いけどさ。取り敢えず主が強いのが分かったよ」

「そう?」

「ああ、色んな意味でな……」



 今日は侯爵家に戻って寝るけど、明日には公爵家に戻れそうね。

 後は、陛下のお手並み拝見といきますか。




誤字報告有難うございます。助かります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 素直に『初夜を潰された怨みです』とぶっちゃければいいのに、と思いました。
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