41.お話合い
書類を整理するだけで、日が暮れ夕食の時間になってしまった。机の方の書類は、ボスの言った通り奴隷の書類や、現在引き受けている暗殺の報告、今後の計画などが主だった。
ユノはセバスに連れられて、使用人達のダイニングに行ってしまった。そこで他の人達と一緒に食べるそうだ。
私は久々にうきうきしてるセリアによって、問答無用でドレスに着替えさせられ、夕食へと向かわされた。
「るーちゃん、お帰り〜。こっちに居ても良いの? 帰らなくて大丈夫?」
「ただいまです、お母様。まだやる事があるので帰れないんですよ」
「そうなの? そう言えば可愛い子を拾ってきたみたいね。やるじゃない」
「そういうつもりではなかったのですが、成り行きで……」
「その事も含めて、後から話を聞こう。いいね?」
「はい、お父様」
夕食後セバスに、ユノは使用人の部屋を与えて寝かす旨を聞いた。
暫くしてお父様に執務室に呼ばれた。
長椅子に座り、メイドが紅茶を入れて下がり、セバスにも退出させる。
ささっと防音壁を作る。
「さて、ルティカ。全部喋ってもらおうか」
むむ? 清々しい笑顔なのに、怒ってるのが分かります。おかしいなぁ。
私はレーラの毒混入から後、暗殺者に日々狙われていた事を話した。
話すにつれお父様の顔色が、赤、青、白と次々に変わっていった。
「だからあんな顔色だったのか……どうして言ってくれなかったんだい?」
「言ったら止めるでしょう? それに下手に抵抗してお父様達に何かあったら、困りますもの」
「でも、私はルティカの父親なんだよ? もっと頼って欲しかったよ」
「大丈夫です。充分頼ってますから。それで昨日暗殺ギルドを壊滅させてきたんですが……」
「壊滅っ!?」
「はい、跡形も無く。あ、ちゃんと密入国して証拠は何も残してませんので、ご安ください」
「密入国……」
「それで訓練場に置いてあるのは、そこのボスです。証言として使えるかと持ってきました。ついでに片っ端から書類を持ってきて、さっきようやく見つけたのがコレです」
そう言って先程見つけた、バルバラ様の証文を見せる。
「これは……」
「それでバルバラ様を断罪する事は可能ですか?」
「……正直難しいと思う。私が申立てた所で握り潰されてしまうだろう。……すまない。あんな偉そうな事を言ったのに役に立てずに……」
「いえ、良いんです。それが分かっただけでも十分です。握り潰されないようにすれば良いだけの事です」
安心させるためににっこりと微笑みながら答える。
あら? お父様のお顔色がより悪くなりましたね。
「私が言えた事じゃないが……あまり無茶はしないでくれ」
「大丈夫ですよ。もう奴らは潰しましたし」
「いや、大丈夫じゃないから言ってるのだが……」
「そうそう他にはこんな証文がありましたよ。見ます?」
「……はぁ〜、どれどれ?」
隠し金庫に入っていた証文達を見せてみると、益々難しい顔になってしまった。
「これは……これだけで、何カ国をも脅せる内容だぞ」
「ではその中に、この国の王族を脅せる内容はありますか?」
「それは……これだな」
そう言って取り出したのは、この国の宰相でありバルバラ様の父であるマルコス・ユイ・オールトが、隣国の王女の暗殺を依頼したものだった。
確かに隣国の王女は、かなり以前に病死で亡くなっている。
「バルバラ様が第二妃となる際に、もう一人第二妃候補が居たんだ。それが隣国の王女だったんだ。でも打診する前に亡くなられてしまって、結果バルバラ様に決定したんだ」
「ではオールト侯爵が娘を第二妃にするために?」
「そうだろうね。この国の宰相がこんな事をしたと隣国が知れば、開戦も避けられないかもしれない」
「なるほど……有益な情報、有り難うございます、お父様」
「……何をするか知らんが、程々にな」
そんな〜。大した事しませんよー。
「分かっております。それとユノの事です。私の従者になりたいと言っているのですが、公爵家に連れていっても大丈夫だと思いますか?」
「うーん、まだ小さいから何とか教育も出来るんじゃないか? どこで拾ったんだい?」
「ああ、私を暗殺に来て、死にそうになってたのを助けたんです。そしたら懐かれまして」
「はぁっ!? 暗殺者なのか? あんなに小さいのに?」
「ええ、中々のレベルですよ」
「だ、大丈夫なのか!?」
「ええ、元々奴隷で無理矢理させられていたようですし、悪い子ではなさそうです」
「気に入ったのか?」
「助けた責任を果たせと言われました。暗殺以外で生きていく術を覚えるのも良いかと思いまして」
「そうか。ならもし公爵家で何か言われたら、家で何とかしよう」
「有り難うございます」
「それでどう動くのかね?」
「はい、明日にでも伝手を探して、ちょっと脅してきますわ」
「……ほ、程々にな」
「ふふ、大丈夫ですって。そうそうバルバラ様がどうにかなる際には、ついでにトレハス侯爵の事もよろしくお願いしますね」
「分かった。準備しておこう」
◇◇◇
次の日、ある人物を探しに行くと言うと、ユノもついて行くときかなかったので連れて行く事にした。ユノはかなり目立つ風貌なので、お揃いの深いフードの付いたマントを渡す。何やら嬉しそうに着けていた。
目的の人物はおそらく王城に居る筈。
二人で王城に侵入する。警備がザルだよ?大丈夫?
マップで確認すると、王族の住む居住区に居た。偵察で見てみると侍女の格好で働いていた。
私が連れてくるので、ユノには空いている部屋を確保して貰った。
サクッとシールドで捕獲し、使われていない客室に移動する。
ささっと防音壁を展開して、お話し合い。
「お久し振りですね、ラナ」
「貴方様は……一体どういう事ですか? 私はお約束通り、誰にも話していませんよ」
「それは、有り難うございます。でも今日は貴方にお願いがあって、訪ねて来ました。いきなり捕まえてしまって御免なさいね」
「お願いですか……拒否権は?」
「ないわね」
「はぁ〜……何でしょうか?」
「貴方の主人と話がしたいのです。時間をとって貰ってください」
「それは……簡単には……」
「今日中に。よろしく願いします」
「……」
「私も態々王宮を壊したくはないのですよ?」
「……分かりました。お茶をご用意致しますので、ここで暫くお待ちください」
「よろしくね」
さて、どちらがやって来ますかね〜?




