39.八つ当たり
何だか久し振りにすっきりとした目覚めで、気持ち良く起きられた。
不思議に思って周りを見たら、ユノが不機嫌そうに扉に寄り掛かりながらこちらを見ていた。
「あれ? ユノ、寝なかったの?」
「寝れるかっ!! 何でそんな呑気に寝てんだよっ!」
「えっ? ヤダ、護衛って言ったの本気にしてたの? ごめん」
「そう言う意味じゃねーよ!」
なぜか怒っているユノにハテナを飛ばしていたら
「お前、令嬢じゃねーのかよ? 大体男と一緒の部屋だなんておかしいだろっ!!」
「あぁ……そう言えば私、若かったんだっけ?」
ようやく合点がいった。
そりゃ若い男女が同じ部屋だなんておかしいか。
でもユノは子供に見えるし、全然そんな事考えなかった。
ルティカとして18年生きているが、前世の記憶がある分、自分が若いのをつい忘れてしまう。前世と合わせたら還暦なんてとうに過ぎている。ユノなんて孫どころか曽孫と言ってもいいくらいだ。子供を保護した気分でいたよ。すまん。
「ごめん、自分が若いの忘れてた。ユノは子供だから、全然気付かなかったよ」
「子供じゃねーし!」
「え? ユノって幾つ?」
「……14」
「……子供だよね?」
「うるせーなぁ。ちげーし」
拗ねている所は子供そのものだけど、言うとさらに拗ねそうだから黙っとく。
「ごめんって。でもユノが居たから、久し振りにぐっすり寝れたよ。有難うね」
「! ……それなら、別にいいけどよ……」
「じゃあ、ご飯食べたら、さくっとギルドを潰しに行こっか」
「……簡単に言ってるし……」
二人で屋台で朝ご飯を買って食べる。
昨日も思ったが、この国の料理辛いものが多い。朝はホットドックにたっぷりのチリソースがかかっているものを選んだ。中々癖になる味。でもちょっと辛過ぎて舌がピリピリします。
食べ終わったら移動。
こっそり街から出て、そのまま森の近くを走りながら移動。ただ走るといっても、私のレベルだと本気を出せば馬なんか目じゃない。それはそれで目立つからしないけど。ユノがついて来れそうな速度で走る。
「大丈夫?」
「……これくらい平気だ!」
それでもバドスに着く頃には、ユノの息が上がっていた。
「やっぱ、お前信じらんねーわ……」
「レベルが上がれば問題ないよ?」
「だから……いや、いいよ」
またしてもこっそり入る。入れる場所はユノに聞いた。
ユノはバレると困るので変装してもらった。
案内されて暗殺ギルドに行ってみると、意外としっかりとした建物で一見では普通のギルドっぽかった。もっとこう暗いイメージだったが、いい意味でビジネスなんだろう。
そのまま何気なく通り過ぎ、少し離れた位置の路地裏に移動。
「じゃあ、ちょっと偵察するから周り見ておいて〜」
そうユノにお願いして、目を瞑る。
「……偵察って?」
「ん? 中の事が見えるよ。そうそう、ボスってどんな奴?」
「こんな所から見えんのかよ? 全く……。ボスは剥げてて隻眼だ。黒い眼帯をしてる」
「おっ! いたいた。ふむふむ、2階の奥だね。地下もあるのか。ねえ、地下牢に居るのって……」
「……奴隷だな。今から仕込むのか、何かに使うのか分からないけど」
「ふーん。今ギルドに居る人達って無理やり働かされてる人達?」
「いや、俺達のような下っ端はもっぱら現場だ。そこに居るのは上の奴らだろ」
「消しても問題ない?」
「ああ、全然」
「じゃあ、ちょっと証拠を探してくるよ。隠し金庫的なものがあったし」
「え? 一人で大丈夫か?」
「勿論。見てて」
そう言ってスワロウの扇を出し、強めの魔力を込める。
「あれ? 見えなくなった?」
「ううん、認識阻害だよ。実際には居るし見えてるはずだけど」
「すげ〜な、コレ」
「扇なのは難点だけど、ユノにも作ってあげようか?」
「良いのか?」
「うん、後で説明するね。じゃあ、取りあえず行ってくる。ユノは隠れてて」
「分かった。気を付けてな」
マップを見ながら人を避けつつ進んで、ボスが部屋から出た隙に入る。
ボスの部屋には至る所に散らばった書類があり、更に机の上には書類が乱雑に積み上げられていた。
壁にある絵画を捲れば、隠し金庫発見! ベタ〜。
態々開けるのは面倒なので、金庫に触ってアイテムBOXに丸ごと収納。机も丸ごと。落ちてる書類はいらないかな。
そこまでした所でボスが部屋に戻ってきた。
すかさずシールドに入れて捕獲する。
「! なんだ!! これは! 一体どうなっている?!」
そこで姿を現して微笑むが、フードを深く被っているため口元しか見えていないだろう。
「お初にお目に掛かります。少々お尋ねしたい事がございまして、訪問させて頂きましたわ」
「何だ! お前はっ!」
「ルティカ・ユイ・サーバンドの暗殺を依頼したのは誰ですか?」
「はぁ? 知らん知らん! いいから出さんか!」
「知らないなら必要ないので、このまま処分ですが宜しいですか?」
シールドの中の温度を上げていく。
「うっ、い、……言えん!」
「では、知ってはいるのですね?」
「……」
「別にどちらでも良いのですよ?」
「……知っている」
「では、連れていきましょうか。」
暴れられても困るので、シールド内の酸素濃度を一瞬だけ下げて気を失わせる。そのまま気配を消してボスを連れて、ユノの所まで戻る。
「コイツで間違いない?」
「うぉっ! いきなり現れんなよ! ……おい、ボス捕まえてきたのか?」
「うん、何やら知ってそうだし」
「まあ、ボスが知らない筈ないもんな」
「ちょっと出すから、コイツ縛ってくれる?」
そう言ってシールドを解除し、アイテムBOXから縄を出してユノに渡すと、手早く縛り上げてくれた。
「じゃあ、壊滅させちゃうね〜」
「は?」
「え? ダメ?」
「い、いや、別に良いけど……どうやって?」
「燃やしちゃう? 的な?」
「いや、いいよ。好きにやって」
了承も得られたので、集中する。
建物全体を魔力で包み、温度を上げる。高温に。1000°くらい?
終わった後には地下に続く階段が丸見えの更地があった。
よしっ!
ざまぁみろ〜。
やったっ! と思ってユノを振り返れば、目を見開いて固まってた。
「やり過ぎじゃね?」
「え〜そんな事ないよ。八つ当たりだもん。必要必要。じゃあ、私はもう帰るけど、ユノはどうする?」
「え?」
「いや、もう自由でしょ? 好きな事したら良いんじゃない?」
そう言うとユノは考え出した。
おや、考えてなかったのかな?
「取り敢えずこの街から移動しよ。その内人も集まってくるだろうし」
「そうだな」
ボスを連れて街を出て近くの森に移動する。
そこでボスを革袋に入れて、 黒龍に掴まえさせて移動する。シールドは1個しか出せない。上空は寒いのでそのままだと流石に死んじゃうかなと思って。
夜まで移動して、森で野営する。ボス連れだから宿には泊まれないしね。
ご飯はアイテムBOXから出して食べる。ボスにもちゃんとあげましたよ。もう反抗する気配はないようだし。 黒龍のフライトがかなり効いたみたい。
「ユノ、どうする? このままイリアムラルに戻っても良い?」
「ああ、頼むよ」
浄化をかけて寝る。
明日には戻れるだろう。
さて、どうするかなぁ。




