36.失敗
な〜んの進展もない。捜査もラインハルト様の事も。
何だか疲れて来ちゃった……。
そんなある日、珍しいものを見つけた。
廊下の端で私が通り過ぎるのを、頭を下げて控えている侍女を見た。
ブラウンの髪で眼鏡をし、落ち着いた感じの人だった。
「少し頼みがありますので、私の部屋に来てくださる?」
「畏まりました、奥様」
そのまま彼女を連れて部屋に戻る。
その侍女は壁近くで控え、私の言葉を待っていた。
「それで? 貴女はどなた?」
「え? ……いえ、私は新しくこちらに参りました、マルセラでございます」
『シールド』
彼女を捕獲してから、もう一度にっこりと微笑みながら問いかける。
「それで? 貴女は誰?」
彼女は一瞬で表情を変え、素早く周りを見渡し、魔法を繰り出した。
『ウィンドカッター』
ほ〜、詠唱省略とはかなりの使い手ですね。
でも残念。それは対魔法にもなっているので、当然中からも外に出せません。
彼女の魔法はシールドに当たると霧散して消えてしまった。
それを見て驚愕の彼女。
「それで?」
「……ラナ……」
ふむ、ステータスネームと同じ。
「誰の依頼ですか?」
「……」
「私は機嫌が悪いのです。早めに答える事をお勧めします」
「……」
ビシビシとシールドが凍りついていく。
あー、マジでコントロール出来てないわ。
それでも何も言わない。
やはり神聖契約とかしてるのかも。
「言えないのですか? では、何の目的でこちらに来たのですか?」
「……」
「このまま何も言わないのであれば、消滅させますよ?」
今度はシールドの中の温度を上げていく。
「……ここしばらく密入国者が多く出入りしているのが判明した。そいつらを辿ったら、ここに来ている様なので調べに入った……」
「そうですか。目的は私やフェリシア様達ではないのですね?」
「……それは違います」
ふーん、敵ではなさそう。殺意もないし。
「そう。エドワードは貴方の事知ってるの?」
「いえ、勝手に入ってるから……」
「じゃあ、しばらくここに居て」
そう言ってシールドを解除する。
「……どうして?」
「え? 調べに来たんでしょ? 奴らが来たら言うから。大抵夜に来るよ」
「え?」
「部屋に誰か来たら、何処かに隠れるくらい出来るでしょ?」
「出来るけど……」
「2、3日中には来るんじゃないかな? あ、そうそう逃げても良いけど、次来たら即排除するから。抵抗するなら容赦はしないし」
「……」
大人しくなったのでそのまま放置する。
気付いたら消えていた。
おぉっ! もしかしてリアル隠密ですか!?
マップ上には部屋に居るので、天井裏にでも居るんだろうか?
確認出来ない人物が居たから捕まえてみたんだけど、当たりっぽいね。
ご飯はむかーし買っておいた屋台のご飯を出しておいた。
結構昔のだけど、湯気が出てたし大丈夫。凄いな、アイテムBOX。
食べないかな〜と思っていたけど、気付いたら無くなってたし食べているんじゃないかな?
次の日の夜に、侵入者を発見。
「来たわ、出てきて」
ふっと現れた。もう侍女の格好ではなく、体にフィットした動きやすそうな黒い服を着ていた。
「ついてきて。手は出さずに見ててね」
「……」
最近では面倒くさいので、そのままの格好で窓から出ている。寝巻きはネグリジェ風から、ツーウェイのパンツ風に変えて貰ったので問題なかろう。スカスカするの嫌いなんです。
チラッと後ろを見れば、少し離れてちゃんとついて来ている。
マップを見て真っ直ぐ侵入者に向かい、いつもの様に捕まえる。
『シールド』
ちゃんと詠唱しましたよ。
「彼は?」
「暗殺ギルドだって」
「! 暗殺ギルド!?」
見てたらまた苦しんで動かなくなる。
諦めるの早いなー。
「こうやってやって来て、捕まって、勝手に死んでいくの。迷惑極まりない奴らよ」
「一体何時から……?」
「ん? ラインハルト様と婚約してから」
「そんなに前から?」
そのまま外に放り出してから
「さて、戻りましょうか。良いわよね?」
「……はい」
部屋に戻って、防音壁を作る。
「これで貴女の主人に報告は出来るかしら?」
「……はい」
ふーむ。おそらく王族の隠密かな?
ピコーン!
良〜い事思いついた!
「何時戻るとか言ってあるの?」
「いえ、特には」
「そう。じゃあ貴方の調査に協力したんだから、私にも協力してくれる?」
「! ……拒否権は?」
「ないかな〜」
「……」
「嫌?」
「……どんな事ですか?」
「この屋敷のシュゼット・ド・クロッソと庭師のアーチャーを調べて欲しいの」
「一体何を?」
「シュゼットはフェリシア様に毒を盛っているのよ。誰に命令されてやっているのか調べて欲しい。後アーチャーは偽名だったから怪しいと思う」
「! そんな事がっ!」
「ええ、見つけはしたんだけど、調べる時間がなくて。貴方に頼めば丁度良いと思って。どうかしら?」
「……分かりました」
「そうそう、毒は危ないから無毒化しちゃった。証拠がないと駄目かしら?」
「まあ……大丈夫でしょう。結果をお伝えすれば良いですか?」
「いいえ、その結果を貴女の主人に報告して、対処して欲しいかな。私がするより簡単でしょ?」
「それは……報告してみないと……」
「そうね、もし駄目だと言われたら、私に伝えてくれれば良いわ」
「了承しました。では」
「ああ! それと、貴女の主人にこの事をラインハルト様に言ったら許さない、と伝えておいて。勿論貴女もよ。後、出来るだけ報告する際に私の能力も伏せといてね。余計な事は言わない方が身の為よ」
「! ……分かりました」
「ではよろしく」
悪役っぽいわ! 私。
よーし。これでちょっとは進むかな?
それから暫くラナは邸内をウロウロしていた。
こちらに接触はなかったので、そのままにしていたら見なくなった。
その後王族主体の夜会で王宮に行った際に、マップでラナを確認した。
王族の隠密で間違いなさそう。
3ヶ月後にはシュゼットとアーチャーは公爵家を辞めていた。
とても自然に。
怖っ!!
まあ、取り敢えず一つは解決したのかな。
私は何もしてないけど。
あー、しまった。
誰が指示したか報告してもらえば良かった。
でも〜あの時は雰囲気的にああ言っちゃったのよね〜。
失敗失敗。




