32.休息
あれから頻度は減ったが、相変わらず暗殺者はやって来ている。
結構な人数が減ったはず。早く諦めてくれないかなぁ。
そんな私はかなりフラフラだ。緊張状態が続くのと寝不足で、疲れ切っている。王族とかってこんな重責に耐えてるの? 私にはむーりー。
そろそろ打開策を考えねばと思っているのだが、いい案が浮かばない。寝不足で頭が回らない。夜寝れないから、昼に寝ようとしたが、そう考えていたのが分かったように昼間に襲って来たりして、ますます眠れなくなった。
ぼんやりと部屋で紅茶を飲んでいたら、セバスが来客だと伝えに来た。
来客? 先触れもないし、誰か約束してたっけ? と思って聞くと、ギルだと言う。
ギルはあれからリストを埋めるべく、ちょこちょこと素材を採ってきて持ってきてくれている。そのためセバスとも顔見知りだ。
応接室に行くと、ギルがソファーに座って優雅に紅茶を飲んでいた。……イケメンは何をしても様になってズルいですね。訳もなくムカつきます。疲れてんなー、私。
「久し振り、ギル」
「おう! 久し振りだな……って、お前その顔どうしたんだ?」
「……そんなに酷い?」
「ああ、死にそうだぞ。どうした? お前がこんなに疲弊するなんて初めて見たぞ」
防音壁を作ってから、フェリシア様からの一連の事を話す。
「また、厄介な事になってんなぁ。それにしてもお前、そんな事で結婚相手決めて良いのかよ?」
「え? 別に嫌々じゃないし。元々貴族だから政略結婚もしなくちゃいけないかと思っていたくらいだし。まあ、お父様ならそんな事なさらないだろうけど。ラインハルト様の事は、綺麗だし優しいし好きだよ?」
「……まあ、お前がそう言うなら、俺が言う事なんてないけどな」
「心配してくれて有難うね。で、今回はどんな素材が採れたの?」
「ああ、ようやく連絡取れて会えたんだ!」
「連絡って、前に言ってたエルフの友達の事?」
「ああ、やっとだ。あいつに頼んで妖精を呼んでもらったんだ。それでコレ」
見るとキラキラした粉が小瓶の中で煌めいている。それがまた、粉というよりも液体のような動きをしていてとても美しい。
「うわ〜綺麗だね。これは、妖精の粉?」
「そうだ、ようやく分けてもらえんたんだ」
「へぇ、じゃあコレ入れてみても良いの?」
「ああ、頼むよ」
『ピクサーの粉を合成しますか? はい/いいえ』
ん?
『はい』でピッ
『ピクサーの粉(1)× 10 + ピクシーの粉(0)× 10 + ピクスーの粉(0)× 10 + ピクセーの粉(0)× 10 = 妖精の夢』
「おぉ〜、ようやく妖精の夢の内訳が分かったよ!」
「マジか!? で、どうなんだ?」
めっちゃ嬉しそうなんですけど……言い辛い。
「えっと〜……持ってきた粉がピクサーの粉で、コレが後9個と、ピクシー、ピクスー、ピクセーの粉がそれぞれ10個要るね……」
「遠っ!! くっ……そうか。まあ、分かっただけでも良しとするか。もう一回頼みに行くか?いや、同じ個体だとダメっぽいな……いや、うーん」
「何となく其々の属性っぽいね」
「そうだな。今度はその辺を攻めてみるよ」
「うん、頑張って」
「それはそうと、お前今の状況を誰にも言ってないのか?」
「うん、お父様に言うと心配して閉じ込められそう。そうなると逆に動きがとりにくいし……」
「そうだな……じゃあその旦那には?」
「まだ、旦那じゃないよ! うーん……ラインハルト様にはフェリシア様の事も言ってないし、言うと止められるかな〜と思って」
「まあ、止めるだろうな」
「私がしたくてしてる事だから、いっかな〜と」
「お前なぁ……」
ギルは呆れた顔で私を見て、その後暫く何やら考えている。
「なあ、結婚式は何時だ?」
「え? 1ヶ月後だよ」
「そうか……1ヶ月なら何とかなるかな?」
「どうしたの?」
「結婚式までなら、お前の護衛をしてやっても良いぜ?」
「ホント!? 良いの? やったぁー! 有難うギル!!」
「1ヶ月後に俺も用事があるから、それまでしか出来ないけどな」
「ううん、十分だよ! 助かるー。アイツら意外とレベルが高いんだ。下手な護衛だとやられちゃうから、頼めなかったんだよね〜」
「夜は俺が見てるから、ちゃんと寝ろよ。お前その内倒れるぞ」
「有難う〜。じゃあお父様にも伝えておくね。明日から良い?」
「いや、今夜からで良いぞ。」
「わーい、有難う。人数来たら起こしてくれて構わないからね」
「ああ、分かったよ。取り敢えずちょっと寄る所があるから、また夜に来るわ」
「うん、分かった〜」
本当に助かった。伊達に暗殺ギルドを名乗ってないね。レベルが冒険者の高ランクと同レベルだった。高ランクに頼もうかと思っていたが、同時に何人も来る事もあったので諦めた。流石に人数が多いと同じレベルぐらいじゃ不安。その点ギルなら大丈夫。私よりも高ランクで、気配も読める。安心安心。
やったーっ! 今日から眠れる!!
お父様に言うと最初は渋られたが、ここ最近の私のやつれ具合を見て最後には認めてくれた。てか押し切った。眠いんです!
◇
ギルのお陰で夜はちゃんと眠れるようになって一週間。
「顔色も戻ったみたいだな」
「うん、有難うギル」
「それにしてもお前、アレを一人で処理してたのか? 相変わらずすげーな〜」
「そう? 捕まえると皆勝手に死んじゃうから、処理はしてないよ」
「捕まえてたのかっ!? 一体どうやって?」
「ん? コレで」
そう言ってギルを魔力の檻に入れてみる。因みにシールドと名前を付けといた。
「おいっ! コラ! 出せよっ!!」
「どう? 改良して耐熱、耐寒、対魔法、対物理攻撃にしてみたんだ〜。自分の防御にも使えるよ」
「いいから早く出せ!」
「はーい。でもギルなら多分出れるよ。竜になれば」
魔力を霧散させれば消える。
「……全く……規格外なヤツだな。まあ、これがあれば何かあっても大丈夫か」
「うん、大体はイケるんじゃないかな? 1個しか出来ないけど」
「そうなのか?」
「練習してるけど中々ね。 高熱の魔力の塊も1個しか出ない。ファンネルとか夢だったけど、遠いわ〜。魔法みたいに沢山出して当てるだけなら出来るけど、そこから操作となると難しいんだ」
「ファンネル?」
「あ、ううん、前世の話」
「……お前の世界って一体どうなってんだ?」
「やだなぁ、平和な国だったよ?」
「嘘つけっ!」
そんなやり取りをしてると、セバスが手紙が届いたと渡しに来てくれた。
受け取って差出人を見てみると、バルバラ様から。
中を開けて確認してみる。
思った通り、バルバラ様のお茶会のお誘い。
第二ラウンドのご招待ですか。
もう結婚式まで時間もないもんね〜。
手紙を見ているとギルが覗いてきて
「行くのか?」
「もちろん。これで尻尾を掴めれば楽だし」
「大丈夫か? 俺も行くか?」
「ううん、王城だしいいよ。直接戦う訳でもないし」
「そうかぁ? お前ならやりそうなんだけど」
「ちょっとー、流石にそんな事しないよ。……もう面倒だから消しちゃいたいとは思った事あるけど」
「あるのかよ。全く……」
「ギルだってお城の一つや二つ、簡単にぶっとばせるでしょ?」
「まあな、やらんけど」
「同じ同じ。やらないから大丈夫だよ」
「まあ、気を付けろよ」
「うん、有難う」
そうは言ったけど、腹芸は出来ないんだよね〜。
ま、頑張ってみますか。




