29.初対面
ラインハルト様と共にご挨拶に向かう。勿論腰は抱かれたままだ。何故に?
まあ、煽っといた方が良いかな?
「まさかラインハルトがサーバンド侯爵の蒼の宝石を射止めるとはな。驚いたぞ」
しまった! その件についてお父様に問い詰めるの忘れてた!
「はい、私もルティカ嬢に選んでもらえるとは思いませんでした。幻の宝石を手に入れる事が出来て、嬉しいですね」
ひぇーっ! 私、何様!?
「ラインハルトは良い奴だが、中々についてない男だ。そこも含めて、よろしく頼むぞ、ルティカ嬢」
「はい、畏まりました。勿論大事にする所存ですのでご安心くださいませ」
「はは、頼もしいな。良かったな、ラインハルト」
「はい、有難うございます」
「ルティカ嬢と今度私もお話ししてみたいわ。良かったらお茶会に来てくださいね」
「有難うございます。嬉しいですわ。是非」
フェリクス殿下とアルセナ様が和かに微笑まれて、祝ってくれた。
ホントに仲が良さそうで見てるこっちがほのぼのしちゃう。
そんな中、鋭い声が聞こえた。
「本当に、いつの間にこんな事になったのです? 全く知らなくて驚きました」
バルバラ様を見れば、大袈裟に驚いた様に言っている。
「ルティカ嬢に初めてお会いしたのも最近でしたので、周りも知らないと思いますよ」
「まあ! そんなよく知りもしない者と婚約などして良かったのですか?」
「勿論です。ルティカ嬢に申し込んだのは私の方ですからね」
「……そうなのですか。ルティカ嬢はどうなのです? いきなりだったのでは?」
「そうですね。確かにお会いしたのは最近ですが……こう、会った瞬間に運命みたいなものを感じたのです。私にはこの方しか居られないと。ですから申し込まれて大変嬉しく思っております」
「……」
どんどん煽っていきますよー。ふふ。
私に狙いを定めて欲しいからね。
俯いて恥ずかし気な態度も忘れません。
「そう言えばルティカ嬢は冒険者をなさっているとか。そのような方が公爵夫人なんて大丈夫ですの?」
おっとー、攻め口を変えてきましたね。私の事は調査済みって事か。
私が冒険者って事は大っぴらにしてる訳ではないが、隠している訳でもない。それに冒険者としての活動は抑えてるし、狩っている所を見られるようなヘマもしていない筈。知られて困るような事はない。
「ルティカ嬢の話を聞くのは大変興味深いですよ。冒険者というのも悪くないと思います」
「まぁ! 確か草刈りばかりしてるとか。そんな地味な活躍しかなされていないのに?」
おぅ、そういえばクエストはそれしか受けてないかも。あはは。
「草刈り、楽しいですよ? 一時期は王都の草刈りを全部引き受けていた事もありますわ。でも私などまだまだ駆け出しですので、それ程活躍出来てないのは本当です。活躍する前に終わってしまいましたが」
「あぁ、ルティカ嬢、すまない」
「いいえ! ラインハルト様の方が大切ですもの。余計な事を申しましたわ。忘れてくださいまし」
見つめ合って微笑み合う。
それにしても打ち合わせもしてないのに、ラインハルト様も乗ってくれてるな〜?
「ははは、何だ、仲が良いではないか。安心したぞ」
「はい、有難うございます。結婚式にも是非来てください」
「ああ、楽しみにしてるぞ」
そう言ってフェリクス殿下達が去って行く。
その途中でバルバラ様が振り返りながら。
「私も貴女の話が聞いてみたいわ。是非私の茶会にもいらして」
「はい、有難うございます。喜んで」
そう微笑みながら答える。
第二ラウンドはそこなのですね。分かりました。
取り敢えず今日のミッションは終わりかな〜と改めて周りを見渡す。
こうして貴族の方々を見てしみじみと思う。
レベルは非情だなと。
スキルや魔法、体力など使えば使うだけ其々のレベルは上がる。ではその人自体のレベルが上がるためにはどうしたら良いのか?色々検討した結果、命のやり取りをする事がレベルを上げるために必要なのではないかと思った。それで一番簡単なのが魔獣を討伐する事だ。おそらく戦争など前線で戦った事のある人はレベルが高いと思う。
貴族の男性は自衛と、有事の際のために討伐も教育の一環として受けているから、それなりにレベルが上がっている。それで言えばラインハルト様は高い方になる。狩りもそれに当たるかもしれない。でも女性は当たり前だがそんな事はしない。当然レベルも1が殆どだ。
実際にこの中で一番強いのは私だろう。HPのゲージが桁違いだ。
私がその気になればこの会場に居る人々を殲滅するのに1分もかからない。もっと時間をかけて良いなら、死体も残らず、後も消して、完全犯罪も可能だろう。
勿論やらないけど。
つまり何が言いたかというと、根っからの庶民の私がこんな社交界という魑魅魍魎が闊歩する場で、こんなに強気でいられるもの肉体的に強いから。
じゃなかったら到底無理ですよー。
レベル上げしておいて良かった〜。ホント。
「どうかされましたか? 疲れましたか?」
考え込んでしまったようでラインハルト様に心配されてしまった。
「いいえ、大丈夫です。それにしてもラインハルト様にお話を合わせて頂いて助かりました」
「え? いえ……そうですね。それなら良かったです。それではそろそろ帰りましょうか? お送りしますね」
「はい。よろしく御願い致します」
腰を抱いてのエスコートは慣れないけど、仲良しアピールは出来るのでそのまま帰る。それにしてもラインハルト様は馬車へのエスコートも様になってるし、全てにおいてスマートだ。
こんな人が居るんだなぁと感慨深く馬車の中でラインハルト様を見ていたら、目が合った。
「どうしました?」
にっこり微笑まれる。あぁ、眼福です。
「いえ、本当にラインハルト様は綺麗ですね。見てると幸せになります」
「……褒めて頂けるのは嬉しいですが、綺麗は男性に対する褒め言葉ではありませんよ? むしろルティカ嬢の方が美しいと思います」
「いいえ! それだけはありません! ラインハルト様の方が美しいですっ!!」
そこは譲れません!
鼻息荒く言い切ると、ラインハル様は少し目を見開いた。その後ゆるゆると目を細められ、
「……ふふ、仕方ないですね。それでも構いませんよ。それと……ルティカとお呼びしても?」
「勿論です。お好きなようにお呼びください。ラインハルト様のお声はとても好きなので、どれだけ呼んでくださっても構いませんよ?」
ラインハルト様の声はいわゆるイケボ。低いけれど決して掠れていないイイお声。むしろもっと聞かせていただきたい。
にっこり微笑んでお願いしてみた。
「……そ、そうですか。有難うございます。これからもよろしくお願いしますね、ルティカ」
「はい、こちらこそ」
さてと、バルバラ様はどう出てくるかな?




