27.初エスコート
お茶会だと言うのに、朝からセリアとカイナに磨かれる。うきうきと準備をしてくれる二人は私を着飾るのが好きなのだろう。大人しくしておこう。
ドレスは先日のお母様とのお買い物で買ったミントグリーンのシンプルなAライン。ゴテゴテしたのは好きじゃないので、私の持っているドレスは大抵こんなカンジ。
外せない合成の腕輪だが、ゴールドなので似た様な手首用の腕輪をして誤魔化す。割と凝った装飾なので何とかなるだろう。髪はハーフアップにして貰い後ろに流す。お母様譲りのプラチナブロンドはお気に入りだ。綺麗な色。さらっさらで触り心地も良い。ストパーもかけずにこんなに真っ直ぐなんて、異世界スゴイ。
二人のお世話の甲斐もあって素晴らしい出来栄え。私じゃ出来ないわー。
「綺麗ね〜るーちゃん。いっちょラインハルト様を骨抜きにしてきなさいな」
「お母様じゃあるまいし、私じゃ無理ですよ」
「そんな事ないと思うけどな〜。いってらしゃい。楽しみにしてるね」
「はあ、まあ……行ってきます」
公爵家はとても広くて、門から入口までが遠い。お庭も綺麗で見応えがありそうだ。その美しいお庭の四阿に通されてる。
「ようこそ、ルティカ嬢。来てくださって嬉しいです」
「こちらこそお招き有難うございます、フェリシア様」
ああ、今日も儚げです。明るい日差しに透けそうな位美しいです。有り難うございます。
「それでサーバンド侯爵は何と仰っていましたか?」
「はい、私が良ければそれで良いと」
「そうですか。ラインハルトがルティカ嬢のお眼鏡に適えば良いのですが……」
「いえ、そんなっ! そういうつもりでは……」
「ええ、分かっていますよ。大事な事ですもの。フィーリングは大切ですわ」
「は、はい。有り難うございます。それで……ラインハルト様はどう仰っていましたか?」
「あの子は……私が言うのもなんですが、あまり女性に興味がなくて……。以前の婚約者もライズベルトが薦めたら、それで良いと言って決めてしまった位です。あれ以来何も言わなければ言わないで、全て断っている様で……今回も私が言えば、それで良いと……」
ふーん。女嫌いなのかな?
まさか……BL的な?いや、そんな事は……
「お恥ずかしい限りですわ。もしルティカ嬢が気に入らなければ、はっきり言ってくださって構いませんからね!」
「……はい。分かりました」
言えねー。
「あ、来ましたわ」
目線の先を見てみるとキラキラ光ってる。……違った。エフェクトがかかった様にきらきらしいお姿のラインハルト様がいらっしゃった。
輝く銀髪。その左目の泣き黒子を強調するが如く、左側の前髪だけを上げていた。その瞳は冴え冴えしたサファイアブルーで冷たい印象を与えるが、無表情な所にまたよく似合っている。彫刻の様に整った顔は神様に愛されているようだ。
はい、こんなイケメン初めて見ました。
それにしても……好きな色合いだ。
その透き通った瞳をじっくり眺めてみたい。そう思った。
「ようこそ、ラインハルト・フォン・エクセライクです。母を助けていただき本当に有難うございました。お越しくださり、嬉しく思います」
そう微笑みながら挨拶してくれた。
あら、その微笑みも美しいですね。
「はじめまして、ルティカ・ユイ・サーバンドです。こちらこそお招きいただき有り難うございます」
「ラインハルト、折角ですもの。ルティカ嬢にお庭をご案内してさしあげて」
「分かりました。では、行きましょうか?」
そう言って流れる様にエスコートされた。
ふと、家族以外でエスコートされたのが初めてだと気付いた。それがこんなイケメンとは人生何があるか分からないものだ。そう思い苦笑していると。
「どうかされましたか?」
「いえ、エスコートされたのが初めてで嬉しくなりまして」
「初めて?」
「はい、私はデビュタント以外に出席していませんの。社交も全くしておりませんわ」
「そうなのですか。初エスコートをさせていただけるなんて光栄ですね」
「ふふ、お恥ずかしいです」
しばらく美しいお庭を散策し、別の四阿に到着。どんだけ広いんだか。
「ルティカ嬢は……私の噂をご存知で?」
「ええ、存じ上げております。婚約者の方々が次々と不運な目に遭っているそうですね」
「それでも、私の所に来てくれますか?」
「別にラインハルト様が何かされている訳でもないでしょう? ……ラインハルト様こそ私で宜しいのですか? 私は冒険者をしておりましたので、社交もろくに出来ませんし、ご迷惑をお掛けするかしれませんわ?」
「はい、問題ありません。社交などしなくても結構ですよ。母から聞きましたが、ルティカ嬢はお強いのでしょう?」
ラインハルトのステータスバーを確認すると騎士よりは強いが、ランクの高い冒険者には及ばない。
ちなみに有事の際以外に人を鑑定していない。個人情報うんぬん。もちろんこの世界にそんな法律は無いが、誰だって知られたくないものはあるだろう。ステータスバーは勝手に見えちゃうし、HPとMPだけなので許して欲しい。
「そうですね、ラインハルト様より強いですわね」
「ふふ、そうですか。ならば安心です。出来れば我が家に来ていただいて、母と弟を守っていただけると助かります」
ふむ。家族思いですね。
ではさっき気になった事を聞いてみたい。
「……失礼な事をお尋ねしても宜しいでしょうか?」
「ええ、何でも聞いてください」
「あの……女性に興味がないのですか? もしかして男性の方が……」
「! いえ、そんな事はありませんよ。男性に興味はありませんからご安心ください!」
ほ。良かった。この顔でBLなどと言われたら困る。流石にそんな人ととは結婚したくない。
「失礼しました。それなら良かったです。それと……もし私と結婚してくださるのであれば、条件が一つだけあります」
「何でしょう?」
「仮にも結婚するのであれば、浮気はしないでください。それだけです。でも縛りつける訳ではありませんよ。人の心は移ろうものです。他に良い人が出来たなら、ちゃんと離縁してからその方とお付き合いください。それが出来ないのであれば、今回のお話はなかった事にして欲しいのです」
浮気はすんな。するならケジメをつけてから。
「……大丈夫ですよ。そんな事は致しません」
「それなら結構です」
「では、進めても良いので?」
「はい、私が皆様をお守り致しますわ」
そう二人で微笑み合う。
その笑顔が美しいが、何を考えているのか全く分かんないなー。結構失礼な事を言ったつもりだが、表情が変わらない。
好かれているカンジはしない。嫌われてはいなさそうだけど。
これは契約的なものかな?
まあ、ラインハルト様を近くで見れるだけでも良いかな〜。役得だね。
それに……ラインハルト様は大丈夫だったが、やはり今日もフェリシア様は微毒だった。
定期的に様子を見なきゃダメかも。
フェリシア様の所に戻って、宜しくお願いしますとお伝えすれば、大変喜ばれた。またお茶会に来たいと言えば、嬉しそうに了承された。隙を見て治療をかけてから帰った。
◇
それから直ぐにエクセライク侯爵から正式に申し込みがあり、お父様がお受けになった。1ヶ月後に婚約発表のパーティーをして、7ヶ月後に婚姻だそうだ。早くね? まあ、私もフェリシア様のためにも早目に公爵家に行きたかったので良いけどさ。
とりあえず発表前に私のする事といえば、サボっていたダンスと社交だ。ダンスは敵に隙を見せる訳にはいかないので練習あるのみ。必死こいて練習しまくって、改めて貴族序列を頭に叩き込む。と言っても一度聞けばレイが覚えてくれるから楽なのだ。ついでに過去の新聞も読んでおく。
お母様とお茶会にも出席する。夜会はエスコートが必要なため出てない。
ドレスもラインハルト様から贈られてきた。薄いブルーの光沢のあるドレスだ。それに合わせた髪留めとネックレスも。高そー。
そしてあっという間に婚約パーティ。
何もないと良いなー。




