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26.嫉妬の向かう先


 公爵家までお送りして、是非お茶をというのを丁寧にお断りし、侯爵家に帰る。

 セバスにお父様がお帰りになったら、話があると伝えて貰い、お母様のもとへ。



「ただ今帰りました、お母様」

「あら、るーちゃん、お帰り〜。どうしたの?」

「お母様にお聞きしたい事がありまして」

「珍しー。るーちゃんが聞きたい事があるなんて。何かしら?」

「ラインハルト様の噂ってご存知ですか?」

「ラインハルト様ってエクセライク公爵の事?」

「はい。婚約が3回無くなったとか」

「ああ、それね。婚約者の方々が次々とご病気になったり、怪我をなされたりされてしまい、呪われてるんじゃないかって噂よ。バカバカしいわよね〜」



 最初の方は婚約してから暫くして病に倒れ、起きられなくなってしまい遠慮され、二人目の方は旅行中に馬車が崖から落ち、その怪我で歩けなくなってしまったらしい。三人目の方は、その噂からか心を病まれてしまい、辞退されたそうだ。

 それでも『爽涼の貴公子』と呼ばれる程の美貌と公爵という高い地位のため、婚約を望む者は後を絶たないらしい。肝心のラインハルト様は女性に興味はないらしく、その三人の後は素気無く断り続けているそうだ。



 うーむ、色々とありそうだ。



「どうして、るーちゃんがラインハルト様の事を?」

「はい、実は今日偶然フェリシア様をお助けしまして、少しお話しした所ラインハルト様の事を仰っていたので」

「あら〜そうなの。うふふ、るーちゃんとラインハルト様はお似合いだと思うわ〜。るーちゃんはどうなの?」

「どう、と言われましても、会った事もございませんので分かりません」

「ふーん。ま、楽しみにしておくね」



 何がでしょう?

 え? 今の会話で何か分かっちゃったの?

 ……お母様、侮りがたし。





 お父様が戻られて、久々に家族で夕食を食べる。

 侯爵家でご飯は久し振り。勿論ドレスを着てますよー。食べ辛い。


 食後にお父様の執務室に呼ばれて、二人で向かい合わせでソファーに座って紅茶を飲む。 

 

 

「それで、話とは何だね?」

「はい、お父様は私がエクセライク公爵に嫁ぐ事になったらどうなりますか?」

「なにぃーっ!?」

 

 

 ガチャンっと音を立てて紅茶が溢れる。

 あら? こんな慌てたお父様は初めて見ました。レアです。



「どどど、ど、どうして、そんな話になってるんだい?」



 吃りすぎですよ、お父様。

 取り敢えず今日あった事を伝える。



「そうか……フェリシア様が……」

「お父様は何故フェリシア様が狙われるのかご存知ですか?」

「ああ、おそらく第二妃のバルバラ様だろう。色々と噂のある方でな」



 この国イリアムラルの王様フィリップ様にはお妃様が二人いらっしゃる。

 元々王妃のリゼット様と熱愛で結婚されたのだが、王女のフランチェスカ様をお産みになった際に体調を崩され、次のお子が出来なくなってしまったそうだ。

 それでもフィリップ様はリゼット様を大事になされた。だが、お世継ぎが居ない事で貴族達から、宰相の娘であるバルバラ様を第二妃にするよう圧力をかけられたらしい。リゼット様に次のお子様が望めないので仕方なく娶り、王子のフェリクス様が生まれた。だがそれ以来フィリップ様はバルバラ様の所には訪れなかった。勿論無下にしている訳ではないが、お心がないのは明らかだった。

 それからフェリクス様は立派になられ王太子として活躍している。誰が見ても安泰だった。



「ラインハルト様に王位継承権があるからでしょうか?」

「いや、そうではない。バルバラ様は前公爵ライズベルト様に懸想されていてな。若い頃から有名だったのだよ。でもライズベルト様とフェリシア様は仲がよろしくて、バルバラ様に目もくれなかったんだ。だからかな、第二妃になってから、フェリシア様に些細な嫌がらせをしだした。公爵が亡くなってからは、更に拍車がかかったらしい。それにライズベルト様に瓜二つのラインハルト様に目をつけてるという噂だ」


 

 て事は、嫉妬で殺そうとしてる訳ね。怖っ。

 愛する人が居なくなって、それでも尚思うのか。

 いや、だからこそなのかもしれない。



「ではラインハルト様の婚約者達に何かしたのも、バルバラ様でしょうか?」

「いや、確証は何一つない。フェリシア様への嫌がらせと言っても些細なものらしいし、証拠もないので誰も何も出来ないようだ。流石に今回の事は行き過ぎだが、おそらく証拠は出ないだろう」


「そうですか。……私が婚約者になったら、お父様達にご迷惑がかかりますか?」

「自分が狙われるかもしれないのに、なるのか? それにルティカは社交界が嫌いだろう?」

「あれ、バレてましたか。なるかどうかはまだ分かりませんよ。一度お会いしてから、と思っています」

「ルティカが社交界よりラインハルト様を選ぶなら、それでも構わないよ。家なら文句を言う輩も少なかろう。でも……大丈夫なのか?」

「私が狙われる事ですか? 大丈夫ですよ。私は強いですから。返討ちにしてみせますわ」

「はは、そうか。今のレベルは幾つなんだい?」

「97ですわ」

「!! ……それは……強いね」

「はい、お父様よりも強いですわよ。ふふ。そんな簡単にやられませんから安心してください」


「まあ、公爵家から話が来たらその時もう一度話そう。……本当は嫁になんて行って欲しくないんだけどね」

「有難うございます、お父様。私もお父様が大好きですわ。もしお受けするなら、お母様の安全には十分気を配ってくださいね」

「ああ、分かっているよ。はぁ〜。ルティカが行っちゃうのか……寂しい」

「まだ決まった訳ではありませんよ。それに暫くはこちらに居ますので」

「そうか! じゃあ暫く早く帰って来なきゃな」

「ふふ、そうしてください」



 それから久しぶりに侯爵家でゆっくりとした時間を過ごす。お母様とお買い物を楽しんだり、お父様とも一緒にお茶をしたり。

 そんな折、公爵家からお茶会の招待状が届いた。もちろんフェリシア様から。



 さてと、ラインハルト様に会いに行きますか。





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