14.orz
ステファン先生が水の鳥を飛ばせる様になった頃、古代魔法が書かれたと思われる巻物を持ってきてくれた。まだ解明されていない古語で書かれており、おそらく重要な事が書かれているであろう品。
「そんな大事な物を持ってきて大丈夫なんですか?」
「大丈夫、大丈夫。私が管理してる物だからね」
それって……ダメなヤツじゃない?
「さ、見てみて。ルティカなら何か分かるかな?」
ちょっと気が咎めるが、実は私も楽しみにしてた。ワクワクと巻物を開いて見てみる。
「どう? 読める?」
「……はい、読めます」
「ホント?! 凄いっ! これで一気に研究が進むよ!」
転生ボーナスなのか、生まれた時からこの世界の言語が分かった私。どうやらどんな言語も読めるみたい。集中すると字幕の様に日本語が見える。
しかし、あれだね。英語で書いてあるとカッコ良く見えるのに、日本語だと様にならないみたいに、雰囲気のある巻物が一気に実用的に見える。しかも、これって…。
「……ステファン先生、残念ながら研究は進まないと思います」
「えっ? どうして? 読めるんでしょ?」
「はい、でもこれ……おそらく昔の料理のレシピだと思います」
「!! ……本当に? じゃ、じゃあ、こっちは?」
「……これは、誰かの日記ですかね?」
「……」
持ってきた巻物全てが、当時の情勢とか、誰某への手紙とか、魔法に関するものはなかった。唯一歴史について書いてある書に、昔大規模魔法が行われたと書いてあったけど、詳細はなし。
両手両膝を突いてガックリと落ち込むステファン先生。
リアルでその格好、初めて見ました。
「で、でも魔法陣はさすがに魔法でしょう! 今度見せてくださいね!」
はっとして顔を上げる先生。
「そ……そうですよね。魔法陣なら……。で、では今度そっちを持ってきますね」
ちょっとは復活したかな?
でもとっても雰囲気のある巻物だったもんね。残念。
◇◇◇
魔法操作の訓練の結果、なんちゃって結界みたいなのが出来た。
魔力の球を薄く広くして、自分を包むと出来上がり。強度を上げれば炎も防御出来るし、二重にすれば防音の結界にもなるんじゃない?
落ち込んでいるステファン先生にも教えてみた。
「防音の結界ですか?」
「はい、結界もどきですけど。イメージとしては風盾を薄く伸ばして自分を包む感じです。それを二重にして、間の空気を抜けば完成です」
「空気を抜く?」
「はい。空気を抜いて真空空間を作ります。音は振動なので真空では伝わりません。こんなカンジです」
実際にやって見せる。でもまだ確認した事ないので、ちょっと不安。
大きな声で話しかけてみるが、反応がないから大丈夫かな?
「どうでした? 何か聞こえましたか?」
「いや、全然聞こえなかった。……ちょっとやってみるね」
ステファン先生はすでに魔力の操作は完璧で、どんな形にも出来るそう。ただ体外に魔力だけを出す事は出来ないみたい。どうしても属性が付いてしまうらしい。
私は魔力と属性は別だと思っていたので抵抗はないが、最初から属性ありきの考え方だと難しいのかもしれない。
そんな事を考えている内に、ステファン先生はあっという間に結界もどきを仕上げてしまった。何やら言っているみたいだけど、口だけパクパクしてる〜。ホントに聞こえないや。
「凄いです、もう完璧ですね」
結界もどきを解いたステファン先生に話しかける。が、何の反応もない。
じっと見つめられるだけだ。あれ? 面白くなかったかな?
「どうしたのですか?」
「ルティカ……君は本当に凄いですね。……これは何と言うのですか?」
「えっ?! えっと……『防音壁』かな?」
「そうですか。私も使っても良いのですか?」
「はい、もちろん良いですよ」
にっこりと笑えば、ステファン先生も笑い返してくれた。少しは気分転換になったかな?
◇◇◇
後日、古代の魔法陣を見せてもらった。
でも流石にこれは読めなかった。何て言うか……草書? みたいに字を崩してあるのではっきりと読めない。
「これは読めませんね……何となくしか分かりません」
「何となくでも構いません。これは?」
「えっと……深い? 闇かな? こっちは鎖っぽいですね。でも自信がありません」
色々と聞かれた事に答えていると、ふいに黙られた。不思議に思い、顔を上げてステファン先生を見れば、またしてもじっと見られていた。
「どうかされましたか?」
向き合って問い掛ければ、右手をとられてそのまま指にキスされた。
「ルティカ嬢、私と結婚してください」
「えっ? 嫌です」
「そんな〜。どうしてですか?」
「だってステファン先生と結婚したら、ずっと研究の手伝いをさせられるに決まってます」
「良いじゃないですか。一緒に研究しましょうよ〜」
「やだやだ。私は冒険者になって世界を見て回りたいんですー」
ぶーぶー言うステファン先生は可愛いけどね。
もちろん冗談と分かっているし、気兼ねなく話せるので楽しい。
それから何度もプロポーズ、お断り、を繰り返しながら、魔法の訓練や研究を続けていた。
が、どうもその会話がお父様の耳に入ったらしい。
ステファン先生が出禁になった。
あーあ。冗談なのに〜。




