テレキャスターと缶ビール
「ねぇ、そのギターかっこいいよね」
「でしょ?俺もそう思うし、よく言われる。ちなみにこれはテレキャスターっていう種類で、細くて刺さるような歪み方をするんだけど、これがカッコイイんだよね。このギターが使われる曲っていうのは……」
「聞いてない聞いてない」
「なんだよ。せっかく気持ちよく説明してるのに」
「あたしには音の良さなんて分からないよ。キミが弾いてるなら全部かっこいいし」
「調子いい事を言っちゃって」
「ほんとだよー。ほんとほんと。ほんとだから、冷蔵庫からビール持ってきて」
「適当過ぎんだろ。……はい、ビール」
「ありがと。……んー、やっぱ暑い夏にはこれだよね〜」
「おっさんかよ」
「ビールも飲めないキミはお子様かよ」
「うるせー。ビールを飲めないだけで子供扱いするんじゃないよ。他の酒なら飲めるんだし、それに俺はギターを弾いていれば酔えるんだから」
「自分にね」
「うるせーっての」
「それより、アコギで何か1曲歌ってよ」
「ではリクエストにお答えして、アジカンの『ソラニン』を」
「別れの曲じゃん、違うのにしてよ」
「では、井上陽水の『傘がない』を」
「選曲センスが壊滅的だね。嫌なことでもあった?」
「別に。どういうのが聞きたいの?」
「こういう、夏の昼下がりに丁度いい曲」
「なにそれ。『雪の華』とか?」
「うん、真冬だね。もういいよ……」
「ごめんごめん、冗談だって。『若者のすべて』でいい?」
「……今はフジファの気分じゃない」
「じゃ、『夏色』ね」
「やれば出来るじゃん」
「そりゃどーも」