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モノクローム浮遊学院  作者: ナール
第一章 入学初日編
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00 プロローグ

挿絵(By みてみん)

ゾルト歴2312年3月30日 午後5時過ぎ。

俺は寂れた遺跡で1人、遠くに見える街並みをぼんやりと眺めていた。


挿絵(By みてみん)


ここに人が来る事は滅多に無い。その割には眺めも良いし空気も澄んでいて、自分的には隠れた名所の1つだ。


遠くに見えるあの沢山の民家を俺はじっくりと眺める。あの全てにはエルフ族が住んでいるはずだ。少なくとも人間族だとか獣人族だとかは、俺が知る限りこの街には住んでいない。


この街は「ウィンド・エルフ族」と呼ばれる種族が多く住んでいるし、俺の母親もウィンド・エルフ族だ。

2000年以上昔までは人間族が地上世界を支配していたそうだが、今や世界で最も数が多い種族はエルフ族だとも言われている。


ここも得に変わったところのない平和な街だし、俺はここが嫌いではなかった。人間族の街に比べたら穏やかだし、綺麗で住みやすい。5年くらい前まで俺が暮らしていた人間族の街は、それはもう何と言うか薄汚れた感じだった。道にはゴミが落ちているし、川の水は濁っていて街の人々は不愛想だ。


じゃ人間族の街はクソで、エルフ族の街は素晴らしいのかって?そんな事も無い。


中にはそう考えるエルフ族も沢山いるが、それはただの偏見に過ぎない。人間族の村や街だって世界を探せば綺麗な場所くらいあるだろう。エルフ族の里や都市にだって、世界を探せば薄汚い場所くらいあるだろう。

人間族の街とエルフ族の街を何度も行ったり来たりしてきた俺だからこそ断言できるし、これに関しては俺も熱くならざるを得ない事情がある。


ここまで話せば察しのいい人なら気づいたかも知れないが、俺はいわゆる「ハーフ・エルフ」って奴だ。…あぁ、あんまり聞きたくない言葉だな。俺の父親は人間族で、母親がエルフ族というわけだ。


この遺跡がこの俺にとっての憩いの場になっている事は、ある意味でも皮肉だと言える。ここは今から約二千年前の『異種族大乱の時代』に人間族からの侵攻を迎撃する為に築かれたエルフ族の主要な砦の1つだそうだ。そんな場所に俺のような存在がいて良いのかどうか。けど永い時が過ぎ去った今となってはもはや関係は無いのだろう。


そんな歴史のあるこの場所で1人過ごしていると稀に旅人や探検家などと遭遇する事があるが、その人達が全員エルフ族というわけでもない。昔に比べたら、異種族間の関係もマシになっているのだと思う。


_____



もうかれこれ20分くらいはこの遺跡をうろついている俺だが、今日くらいはこの憩いの場でゆっくりしてもいいだろうと思う。ここから見渡せる街の景色は綺麗だが、同時に心から好きになれるわけでもなかった。

5年前に引っ越してから暮らしてきたこの場所は、何だかんだいってそれなりの思い入れはある。けどそれと同時に、俺にとってはどこか窮屈で閉鎖的に思える場所でもあった。


だがどちらにしろ、明日の今頃はこの景色を眺める事が出来なくなるのだから、今のうちに目に焼き付けておこうじゃないか。

明日の朝に俺は出発するのだ――あの学園へと。


もうすぐ午後6時になろうとしている。母が夕食を用意してくれている事だろう。ウィンドエルフ族の伝統的な料理も、しばらくは食べれなくなるかと思うと寂しくなる。俺は腰を上げてこの憩いの場を後にした。しばらく数年はここに来ることもないのだろう。


挿絵(By みてみん)


けど最後に俺はもう一度だけ、ここで深呼吸をする事にした。入学前日となるとさすがに気も引き締まってくる。夕闇に包まれようとしているこの景色が、これまでの学校生活を思い起こさせる気がした。

人間族の学校とエルフ族の学校、俺はそのどちらにも通ってきたけど、ハーフエルフの俺にとってはそのどちらも重苦しい場所でしかなかったように思う。


少なくとも自分がハーフエルフだからという理由で苦しむ事のない場所。俺はそんな場所を求めて、思えば世界中の学園を調べてきたものだ。


「ガーディス多種族学園」


それが俺が最終的に入学を決意する事になった学園の名だ。

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