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大デンキウナギの戦闘から数時間後、僕は何事もなく無事に地底から脱出できました。
……なんて、ダイジェストっぽく物事が進んだら、人生楽なんですけどね。
生憎そうはならずに、未だに地底をフラフラしています。
『マップ』で確認すると、この地底は落とされたお城の真下にあるようなので、上に向かえば辿り着くはずなのですが、その上に向かうルートが見付かりません。
グネグネと曲がりくねり、いくつもの分岐があるので、先を見通すことができず、完全に迷子となりました。
幸い、『マップ』があるため現在地がわからずにいる、という状況ではなく、地底湖のあった場所まで戻ることはできるので、最悪の事態であるわけではないのですが。
魔物──とりわけ、ゴブリンが多くて、辟易しています。
出てくる魔物の9割がゴブリンで、ここはゴブリンの国か! とツッコミたいです。
大体、2〜6匹で纏まって出てきて、たまにソロがいるくらいです。
通路は広く、天井もかなり高いので、武器を振り回すのに支障がないのが救いと言えるでしょうか。
なので、戦闘にそこまで苦労はしませんが、面倒臭いです。
弓矢を使うと、矢がもったいないので、基本的に投石が攻撃手段となります。
『マギマテリアライズアームズ』で矢を創り出すことは可能ですが、いちいち矢を放つ度に魔法を使うのは迂遠なので、手軽な投石がベターだと思います。
たまに盾を持った個体がいて、投げられた石を受けるので、そういう場合には、巨剣を振り回すことにしています。
矢はなるべく温存する方向でいるので。
そうやって地底を進んでいるのですが、アリの巣のように複雑な構造をしていて、進んでは行き止まりにぶつかり戻る、を繰り返しています。
──って、愚痴っているそばから、また行き止まりですよ……。
はぁ……。
さすがに、ちょっと疲れました。
一旦、休憩しましょう。
「ぴゅ〜……」
マシロも疲れた様子なので、倒しまくったゴブリンをオヤツ代わりに出しました。
いつもなら喜んで食べるのですが、モソモソと食べているので、相当堪えているみたいですね。
そういう僕も、ちょっとキツいです。
肉体的な負担よりも、精神的にキテいます。
こんなところでウロウロしているヒマはないのに……。
捕まってしまったみんなのことを考えると、焦燥感で一杯になります。
つか、今更ですけど……ここは地上に繋がっているのでしょうか?
出られない、とかないですよね?
……不安になってきた。
確かにここはお城の真下だけど、それが上に繋がっている保証は全然ないです。
思えば、落下の直前に「捨てる」と聞こえました。
通常、ゴミ捨て場は隔離しますよね……?
マズイ……。
なにをこんなところでノンビリしてたのでしょう?
もっと形振り構わず、焦らなくてはならない場面じゃないですか!
ゲームじゃないのだから、この先があるだなんて思うなよ!
僕は立ち上がりました。
マシロが不思議そうに見上げるので、そのもふもふの身体を撫でます。
そうだ……。
ゲームじゃない。
なのに、なんで僕は普通にこんな複雑な道を歩いているんだろうか?
僕には、魔法が使えるマシロがいます。
行き止まりで進む道がないなら──道を作ってしまいましょう!
──『ディグ』──
掘削する魔法です。
僕は今までこれで落とし穴を作って来ましたが……今回はトンネルを掘ることに使います。
──『ディグ』──
魔法を使う毎に、ゴリゴリとトンネルが穿たれていきます。
まるで、見えないボーリングマシンがあるみたいです。
削られた分の土砂はどこにいったのだろうか、と気になりますが、まぁ、今はどうでも良いでしょう。
縦も横も手を伸ばせばギリギリ届くくらいの大きさのトンネルなので、いささか狭くて圧迫感がありますが、妥協しましょう。
飛ぶことができれば、真上に一直線にトンネルを掘るのですが……できないことを言っても仕方ありません。
えっと……1回魔法を使う毎に数m掘れるから、何度か使って直線のトンネルを傾斜を付けて掘って。
そこから90度直角に曲げていって、同じようにトンネルを渦を巻くように掘っていけば、いずれ地上に到達できるはずです。
よし!
さくさくいきましょう!
果たして、何回魔法を使ったのでしょうか?
果たして、何m上ったでしょうか?
ウンザリしてきましたが、思ったより早くゴールに到達できました。
いえ、正確に言うなら、ゴールかどうかはまだわかりません。
『ディグ』の魔法では掘れない場所にぶつかったのです。
頭上に手を伸ばして触ってみると石みたいなので、あのお城の底だろうか、と思って、ゴールと表現してみました。
ただの石なら『ディグ』で掘削できると思うのですが……いくらやっても穴を穿つことができません。
さて、どうしたものか……。
あ!
閃いた!
──『ファイアウォール』──
──『ウォーターウォール』──
石を火で熱したあとに、水で冷やしたらどうでしょう?
温度変化によって脆くすれば、あとは強引に破壊できなくもありませんからね。
はてさて?
結果はどうかな?
…………。
失敗しました。
こんな狭い場所でやるもんじゃなかったですね。
僕の身が保ちません。
「ぴゅ〜」
マシロにも悪いことをしました。
ごめん。
「ぴゅっ!」
許してくれたので、反省はこれくらいにして……と。
しかし、今のはヒントになりました。
キーワードは「脆い」です。
そうですよ。
魔法で脆くしてしまえば良いのです。
探せばあるはず。
…………。
……。
ふむ?
これかな?
──『フラジャイル』──
あれ?
見た目に変化がない。
ダメなのかな……? と思って叩いてみたら、ぼろっと崩れました。
よっしゃ!
これでイケる!
──『フラジャイル』──
──『フラジャイル』──
──『フラジャイル』──
何度も使って、ボロボロにしてから一気に砕きました。
ガラガラと落ちてくる石を〈道具〉に仕舞い、落ち着いたところでようやくお城の中に戻ってこれました。
はて?
ここは……なんでしょう?
あのお城の地下に、こんな場所があったなんて……驚きです。
とっても広い空間です。
野球場2面くらいありますね。
天井があるから、ドーム球場を思い出します。
僕が出てきたのはかなり端の方ですが、中央には大きな台座があり、そこには物凄い大きなクリスタルが安置されていました。
……一瞬、某有名なRPGのテーマソングが頭に過ったのは、内緒です。
僕は、恐る恐るその台座に近付きした。
近くに行けば行くほど、クリスタルの大きさに圧倒されます。
六角柱の形をしていて、キラキラと反対側まで透き通るような……?
ん?
なんだろう、あれ?
それまで離れていたのと、クリスタルがあまりにも大きいのでよくわからなかったけれど。
クリスタルの中心に、なにか……ある?
…………。
いや、あれは……人だ。
人の身体が、クリスタルに埋め込まれている!?
20代半ばくらいの女性です。
肩くらいまでの漆黒の髪に、褐色の肌。
そして、なによりも特徴的な──白目と黒目の反転した瞳。
そうです。
悪魔だというあの女性が、クリスタルの中に埋め込まれ、瞬きすらしないでピクリとも動かずに、そこにいたのでした。




