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短いです。
申し訳ありません。
白銀の髪、漆黒の瞳、透けるような白い肌に映える黒いワンピースを纏う少女。
それに相反するかのような、漆黒の髪、白黒反転した眼球、褐色の肌をして純白のドレスを着た女性。
その2人は、なにも言わずに僕たちを眺めています。
特に、白目と黒目が逆転した女性の目は、その異様さからどこか人間味というものが感じられなく、僕たちのことを人ではなく、昆虫でも観察しているかのように思えます。
しわぶき1つない全くの無音の中で、僕たちは見つめ合い──女性はスッと先に視線を外し、
「……おかしなハイエルフじゃな。
容れ物と、中身がここまで一致していないとは……。
これでは使い物にならんではないか」
と、首を横に振りながら言いました。
「他の女どもは、そこそこ役に立ちそうじゃ。少なくとも、盾にはなるのではないかな……む、どうした?」
女性が話している途中で、少女がじっと女性の方を見遣ります。
「なんじゃ? もしや我がお主を捨てるやもしれぬ、と不安になったのか?
ほほほっ! これはおかしなことを考えよるなぁ!
それはないぞ。それだけはあり得んぞ!
これからすることはむしろ、お主を手離さないためにすることじゃからな」
ニヤニヤしながらそう言う女性に、少女はなにも言わずにまた前を向きました。
…………。
全くもって、意味がわかりません。
彼女たちはなにを話しているのでしょうか?
ですが、あまり良い予感がしません。
これからどうする?
会話するべきか? それともなにも考えずに立ち去るべきか?
ただ、僕は以前に目の前の少女と会話を交わしました。
そして、現在の僕たちは彼女の住居(と思われる)に不法侵入した立場です。
それなのに、不穏なことを話しているとはいえ、ここで逃げるような真似をするのは、少々躊躇いがあります。
そんな僕の躊躇を感じ取ったのか、女性は笑って少女を見ていた顔を僕の方に向けて、パチンと指を鳴らしました。
「それでは、ハイエルフはいらんから捨ててしまおう。
女どもはもったいないから有効に利用しよう」
僕がその言葉の意味を理解する前に、突如床から現れた半透明の腕がヴィッキーにシア、ルナの足首を掴みます。
「っ!?」
そのまま彼女たちは、びくんっと背筋を反らして崩れ落ちてしまいました。
「ヴィッキー! シア! ルナ!」
なんだ?
なにが起きた?
なにをしたんだ!?
落ち着け。
彼女たちの胸が上下しているから、死んではいない。
だから、落ち着け!
落ち着いて、回復魔法を使え!
──『キュアオー
「そうはさせんよ」
再び女性が指を鳴らしました。
同時に、僕の身体に衝撃が走ります。
「ぴゅっ!?」
「ぐっ!?」
背中から殴られたかのような痛みがあるのだから、身体はそのまま前に向かわないといけないのに、何故か身体は後ろに吹き飛ばされました。
その乖離が、僕の頭に混乱を生じさせ、受身を取ることはおろか身体を動かすことすらできません。
ゴロゴロと転がり続けて止まったときは、ヴィッキーたちからかなり離れた場所でした。
……なんだ今のは?
そして、考える間もなく、また鳴らされる指の音。
横臥している僕の感じていた石造りの固い床の感触が消えて──そのまま身体が落下していくのがわかりました。
「う、おっ!?」
「ぴゅ、ぴゅー!?」
下を見てみると……真っ暗でなにもわかりません。周囲もなにも見えません。
ひゅっと股間が縮こまりました。
ヒモなしバンジーなんて、シャレになってない!?
ヤバいどうしよう!?
バタバタと外套のはためく音が耳元で騒がしくて、思考が全然纏まらない。
そして僕は──




