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僕たちはとある依頼を達成し、いざ帰ろうかと転移魔法を使ったところ、何故か全く見知らぬ場所に来てしまいました。
魔法の失敗なのか事故なのか、はたまたなんらかの作為なのか。
猛吹雪に見舞われる中、ようやく辿り着いたのは、どうにも怪しげなお城でした。
童話などの物語なんかでこんなシーンはよくありますけど、実際に目の当たりにすると、本当に怪しいですね。
でも、周囲の環境が引き返させることを拒み、中に入らざるを得ません。
これから一体、どうなってしまうのでしょうか?
「なにをボンヤリしているのぉ……?
ヴィッキーちゃんを援護しなきゃダメよぉ……」
ボンヤリって……。
今日1日あったことを振り返っていただけですよ。
それに、ヴィッキーなら大丈夫です。
あれくらいでは、やられないはずですから。
ルナもいますしね。
「ぴゅ?」
そう? と首を傾げるマシロです。
相変わらずカワイイなぁ……。
僕はマシロのもふもふの身体を撫でました。
「ちょっと! なんでそんなに落ち着いて観戦してるのよ!?」
「そうです! そもそも、なんで、そっちには襲い掛からないのです、コイツらは!?」
ヴィッキーが細剣で目前のゾンビの首を斬り落とすと、ルナがその背後に迫るスケルトンの頭蓋骨を短槍の柄で叩き割りました。
返す刀で忍び寄るゴーストを竜言語魔術で消滅させるルナに、ハルバードを叩き付けようとするリビングアーマーを【魔術剣】で撫で斬るヴィッキー。
うん、良いコンビネーションですね。
僕とシアは、その2人の奮闘の様子を離れた場所で見ていました。
序盤こそ援護魔法を使いましたし、今だって実は、阻害魔法で襲い掛かる魔物をコントロールしているのです。
アンデッドなのに意外に状態異常魔法の効果があるのだな、と不思議に思っているところなのですよ、これでも。
「まぁ、知らない場所に無闇に駆け出すということをした結果、魔物に襲われてるのだから、自業自得では?」
「そうかもしれないけどぉ……」
そうなのです。
僕たちは猛吹雪の中でお城を見付けたので、緊急避難だとして勝手にお邪魔することにしました。
城門に続く長い一本道の坂道を登り、ようやく辿り着いたのですが、ノックをしても当然のように門は開かないので、ルナの魔術で扉の鍵を破壊し無理矢理に重い扉を開けて、お城の中に入りました。
石造りの城内は寒いかな? と思っていましたが、中は想像以上に暖かく、また明るかったのです。
この時点で、ものすごいイヤな予感がしました。
明るいということは、その明るさが必要な誰かがいることになるからです。
僕は入り口付近でキョロキョロと周囲を見渡します。
そこはエントランスホールというのか、吹き抜けになっているかなり広い空間で、高い天井には大きなシャンデリアが下がっていました。
明るいのは、このシャンデリアが皓々と光を放っていたからでした。
正面には広い階段があり、それを登った先に、大きくて立派な扉がありました。
お城の間取りなんかよく知りませんけど、あそこが謁見の間とかでしょうか?
確認してみたいけど、どうしようか?
勝手に入って良いものなのか?
それとも、もう今更のことなのかな?
なんて僕が悩んでいると、ヴィッキーとルナの2人がホールの中央付近まで足を前へと進めていました。
……止める暇がなかったです。
それでも、ちょっと待って、と声をかけようとしたその瞬間、『マップ』に大量の魔物の反応が!?
僕とシア、ヴィッキーとルナを分断するように魔物──アンデッドが突然どこからともなく現れ、ホールの中央にいるヴィッキーとルナに襲い掛かりました。
慌てて援護魔法を使い、僕たちは2人の元に駆け寄ろうと思いましたが、どうにもおかしいです。
アンデッドの魔物たちはヴィッキーとルナに集ろうとするばかりで、僕とシアには目もくれないのです。
無防備に背中を向けているヤツもいるくらいです。
僕とシアは目を見合わせ、いろいろと試してみました。
結果的に、扉の前から離れようとすると、魔物が僕たちに反応し出すので、恐らくですが、この扉の前がいわゆる安全地帯なのだろうと判断しました。
なので、僕たちはそこから離れずに、ヴィッキーたちを援護することにしたのでした。
そして、今に至ります。
ここにいるアンデッドの魔物たちはそんなに強くないし、ヴィッキーとルナならそう簡単にやられないだろうと思って、少し気が抜けて、今日あったことを振り返ってしまいました。
……あ、全滅した。
そういえば、倒したアンデッドの死骸(変な表現だけど)がなくなっているなぁ……?
コイツらはどこからやって来て、どこに行っちゃったのだろう?
ふむ?
心当たり……じゃないけど、こういうのに思い当たるものがあります。
──空間転移です。
そう考えると、いきなり出現して来たのに、説明がつきます。
誰かがいて、ここのことを監視してて、僕たちが現れたから、アンデッドを送り込んだ、とか。
あるいは、トラップみたいな形で、ホールの中央にやって来た侵入者を迎撃するための仕掛け、とか。
んー?
前者だと、扉の前にいた僕とシアを無視する理由がわからないから、後者が最もそれらしいですかね?
まぁ、他にもあるかもですけど、今は良いか……。
僕は警戒しながら、ヴィッキーたちの方に向かいました。
念のため、シアにはその場にいてもらいます。
ゆっくりと歩きますが、なにも起こりません。
となると、あれは一度きりなのかな?
「お疲れさま」
ホールの真ん中で座り込んでいる2人に声をかけます。
ちょっと気になって足元を確認しました。
……ゾンビの残骸は残ってないようで、綺麗な絨毯が敷かれています……安心しました。
「もう……酷くない? 早く助けに来てくれても良いじゃないの……」
「全く、なのです。マシロもそう思うです?」
「ぴゅっ?」
そうは言うけど、2人は思ったよりも消耗してないようですね。
そんなに息が切れている様子もないし。
「シアがいましたからね。
あまり強引なことはできなかったし、する必要もなかったでしょう。
2人だって、まだ余裕があったみたいだし……」
そう言うと2人は不満そうな顔をしましたが、僕の言い分もわかるのか、それ以上はなにも言いませんでした。
特になにもなかったので、シアも近付いてきました。
「大丈夫……? 2人とも怪我はないかしらぁ……?」
「ええ」
「はいです。それよりもお腹が空いたです」
シアに返事してますけど、ルナは僕の顔を見て言いました。
魔力がなくなってきたみたい、ですね。
──『ディバイドマギパワー』──
魔法で魔力を与えますが、ルナは不満そうな顔をしますが、
「もっと安全な場所を見付けたい。
食事はそれから、です」
気持ちはわかりますけど、こんな危険かもしれない場所にいつまでもいたくありません。
早く移動しましょう。
僕の言いたいことがわかったのか、ルナはなにも言わずに立ち上がりました……口の先を尖らせていますが。
「それで? どうするのぉ……?」
シアが聞いてきましたが、僕はなにも言わずに、指をある方向に向けました。
──階段の先の大きな扉へ。
まぁ、言わずもがな、というやつですね。
いかにも怪しいですし、あそこを調べないという選択はないでしょう。
「最後じゃなくて良いのかしらぁ……?」
んー……。
それも考えましたが、不安な場所をまず確認しておきたいです。
ゲームだったらそれでも良いんですけどね。
トリガーを引かなければ、シナリオは進行しないのだから。
でも、現実はそうもいかないだろうから、なにかあるにしろ、ないにしろ、確認はしておきたいのです。
「ん。じゃあ、さっさと行って、それからご飯にするです!」
「ふふ……古城探険だ……お宝はあるかしら……?」
「ヴィッキーちゃん……ううん、なんでもないわぁ……」
なにか言いかけたシアだけど、口を閉ざしました。
賢明……なのかな?
まぁ、ヴィッキーの目が爛々と輝いているのには、若干引きますからね。
意外な一面……でもないのか。
冒険者になりたくて家出したくらいですから、こういった探険にも興味があるのでしょう。
……願わくば、安全に過ごせますように。
その上で、ヴィッキーの好奇心も満たせますように。
僕はそんなことを考えながら、階段に向けて歩き出したのでした。




