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 現状の確認の話し合いを兼ねた昼食を終え、しっかりとデザート(焼きプリン)まで食べてお腹も満足したので、そろそろ探索に行くとしましょう。


 ……と思ったら、みんなはまだ食べていました。

 絢爛豪華なプリンアラモードを、です。


 どういうことかと言うと、エマーソン家に雇われているコックさんは腕が良いのですが、たまに(たが)が外れてしまい、作りたいものを作りたいだけ作るという暴走癖があるのです。


 それが食べきれる量ならともかく、とてもではないですがそうはならないので、いつも余ってしまっています。


 お屋敷で働くメイドさんたちも、余らせてはもったいないので頑張って食べていたそうですが、次の日は必ず体調を悪くしてしまい、さらにその次の日にはダイエットに励むという状態だった、とのことでした。


 しかし、今では、僕の〈道具〉(アイテム)に仕舞ってしまえば時間経過による劣化はないので、食べ物をムダにすることはなくなり、作り過ぎちゃったコックさんや、メイドさんたちの身体(胃袋と体重)に負担がなくなったので、みんなとても喜んでいます。


 その代わり、僕の〈道具〉(アイテム)には食べ物が十二分に入っているのです。


 今、みんなが食べているプリンアラモードもそのうちの1つで、僕としてはこんなに贅沢にいろいろと乗っかっているプリンを冒険の途中で食べるというのは如何なものか、と持っていたくなかったのですが、作り過ぎたコックさんに泣いて頼まれたので、断りきれませんでした。


 そんなプリンアラモードを嬉々として食べているみんなは、ここが猛吹雪の中だということを忘れているのでしょうか?

 ……お腹を壊しても、知らないですよ──まぁ、魔法で治せますけど。


「ごちそうさま」


「美味しかったわあぁ……」


「お代わりは……我慢するです」


「ぴゅっ!」


 まだ食べる気だったルナを一睨みして、食べ終わった食器を回収します。


──『クリーン』──


 魔法で綺麗にしてから、〈道具〉(アイテム)に仕舞い、僕は立ち上がります。

 そろそろ行かないと、日が暮れるまでそんなに時間がないです。

 さぁ、行きましょう!






 万が一に備えてカマクラはそのままにして、僕たちは出発しました。

 それは目印にもなりますし、避難場所にもなりますからね。


 僕は『マップ』で確認しつつ、前へと足を進めます。


 相変わらずの猛吹雪で、視界が全く利かないので、気が付くとどこに向かっているのかすぐにわからなくなりそうです。


 みんなとははぐれないようにロープで身体をくくりつけていますけど、これ、やってから気が付きましたが、魔物が出てきたらどうしようか?


 シアとルナの銃と魔術に任せるしか手段がないのですよね……。

 僕の弓矢だと、この吹雪の中では真っ直ぐ飛ぶか不安だし。


 今のところ、『サーチエネミー』の魔法には魔物の反応がないので安心して歩けていますけど、油断はできないですからね。

 慎重に進みたい所存です。


 問題は……どこに向かって歩けば良いのかさっぱりわからない、ということですね。

 だから、勘に任せて北に向かっていますけど、正解かどうかわかりません。

 なにもなかったら、最初の地点のカマクラに戻ることになるでしょう。

 尤も、どこまで進めばなにもない、と判断できるのかすらわかりませんけどね。

 ……まぁ、時間を見て、判断するしかないか。


 歩き始めたのが午後1時だったから……午後3時くらいになったら引き返しますかね。

 みんなに聞いたら、それで良いということだったし。


 そんな感じで、黙々と歩いています。

 最初のうちは、この吹雪に対して文句や愚痴を言っていましたが、口を開くのも億劫になってきて、今ではすっかり無口になっていました。

 

 こまめに休憩したいのですが……こんな吹雪の中ではろくに休めないだろうし、どうしたものかな?


 かと言って、このままではヴィッキーやルナはともかく、シアが保たないでしょうね。

 チラリと見ると、息も絶え絶えです。


 んー?

 なんか、こんなときに使える便利な魔法はないですかね……?


 ……だんだん、この魔法を使えるマシロのことを、某青猫ロボットに思えてきました。

 問題は、あの青猫ロボットと違って、「助けて」の一言では意を汲んでくれず、適切なものを自分で探さなければならないことでしょうか。


 ……っと、なんて考えながら探していたら、良いものを発見しました。『ウィンドウォール』というものです。

 他にも、『ファイアウォール』や『ウォーターウォール』、『アースウォール』とありますので、恐らくですが、属性のある攻撃を防げるようになるのではないでしょうか。


 このような猛吹雪に、こういった防御魔法が効果があるのかわかりませんけど、試してみても良さそうです。

 風を防ぐだけでは心許ないので、『アイスウォール』で冷気も同時に防いでみましょう。


 ヴィッキーたちに目配せして……では、参ります!


──『ウィンドウォール』──


──『アイスウォール』──


 バシュ!

 ガキン!


 魔法を使うと、僕たちの周囲に風が渦巻き、氷の壁がそびえ立ち並びました。


 あれ?


 えと……『ウィンドウォール』は、まぁ良い。風が壁のようになって、吹雪を防いでいます。

 でも、『アイスウォール』は……ああ、そうだよね。氷壁(・・)ができるんだよね。

 うん、間違っていません……。

 間違ってないですけど……魔法の選択を間違えた!


「シータ! さささ、寒いのです!」


 ルナが自分の身体を抱き締めるようにして、叫びました。


 ひんやりとする氷の壁が、ますます体温を下げてくれます。


 夏ならともかく、こんなときに使うものじゃなかった!


 急いで、『アイスウォール』は解除します。

 風壁のできる『ウィンドウォール』で、十分に周囲の吹雪から身を守ることができます。


 低い気温はどうしようもないですけど、それは別の手段でなんとかなりますからね。


 いや、待てよ……?


──『ファイアウォール』──


 轟、と僕たちの周囲に火の壁が巻き上がりました。

 吹雪が火の壁に当たり、シュウシュウと蒸気を発しています。


「シータ! 暑いわよ!」


 ヴィッキーが外套の襟首を開けて、手で扇ぎながら言います。


 ふむ?

 一気に温度が上昇しました。

 少し暑いくらいですね。


 『ウィンドウォール』の外側に『ファイアウォール』を展開したのでこの程度で済んだけど、もしかしたら、もっと熱いかもしれません。

 『ファイアウォール』は解除します。


 あ、ついでなので、これもやっちゃいましょう!


──『アースウォール』──


 ズゴゴゴ、ズン!


 低い音が響いたかと思うと、地面から土の壁が現れました。

 

 おおー!

 これは一番良いかも!


 物質的な壁だから、完全に風雪をシャットアウトできるし。

 天井の部分は開いているけど、まぁ、これくらいは妥協できます。


 うん。

 これらの魔法を使ってみてようやく、ちょっと勘違いしていたのに気付きました。

 この『〜ウォール』系の魔法は、『〜』の壁ができるのであって、『〜』を防ぐ魔法ではないのですね。

 だから、土の壁でも、火の属性の攻撃を防ごうと思えば、できないことはないのでしょう。

 もちろん、土の壁の強度にもよりますし、壁が熱を持って内部が蒸し焼きになる可能性はあるでしょうけど。


 現在の状況なら、風雪を防ぐのなら、土の壁が一番ですね。

 氷の壁だと冷たいし、火の壁は暑い上に蒸気が発生してしまい蒸すし、水の壁は試してないけど凍りそうです。


 うむ。

 満足のいく魔法実験でした!


「それよりもぉ……温かいお茶でも淹れてくれないかしらぁ……?

 早く休憩しましょう……」


 顔色の悪いシアが、今にも倒れそうになりながら僕にもたれ掛かり、囁きました。


 ……ごもっともですね。






 何度か休憩を挟んで歩いていたら、目の前になにかを発見しました。

 どうやら大きな建造物のようですが、吹雪で全貌はわかりません。


──『ホークアイ』──


 鳥瞰の視点が得られる魔法で上空から見てみました。

 はっきりとはわかりませんけど……どうもお城のように思えます。


 ……となると、目の前のは城壁でしょうか?


 雪が積もっていたのでなかなか気付けませんでしたが、いつの間にか足元が土の地面から石畳になっていました。

 ……お城の周辺だから、舗装されているのかな?


「どう、思います?」


「決まっているわ」


「入るわよぉ……」


「緊急避難、なのです!」


「ぴゅぴゅっ!」


 ……危険かどうか、聞きたかったのですが。

 まぁ、良いか。

 確かに、それよりもこの猛吹雪の中にいる方が危険ですしね。


 僕はお城らしき建造物を見上げて、思わずブルッと身体を震わせました。


 ──この震えが、どうか寒さによるものであって、イヤな予感とかなんかじゃありませんように。


 そう、僕は心の中で祈るのでした。






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