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ちょっと残虐なシーンがあります。

苦手な方は、ご注意を。

流し読んでください。

「──『封魔結界』」


 まず僕は床に掌を当てて、〈魔法〉の一覧から検索した魔法を発動しました。


 これは、僕を中心にして設定した範囲内にいる存在が、魔力を身体から放出することができなくなる結界魔法です。


 魔術というのは、身体から溢れて漏れた魔力を利用した技術なので、この結界内にいると、身体から魔力が漏れることがなくなり、魔術が使用できなくなるのです。


 例外は、僕──というかイー君のように、身体内で完全に魔力が閉ざされた状態で使われている魔術のみになります。


 ああ、それと魔法の使用も可です。

 魔法は、大気中の魔力を使うものなので問題ないのです。


 さて。

 僕はゆっくりと立ち上がり、兄エルフたちを睨み付けます。

 そして、魔法を発動しました。


「『ウィンドボール』」


 掲げた僕の掌から、球状の風ができました。

 兄エルフの顔に驚愕が浮かびます。

 まぁ、それはそうですよね。

 使えるはずのないと思っていた魔術を、突然妹が使いだしたのですから。

 使っているのは魔法ですが、違いなんてわからないでしょうけど。


 ちなみに、兄エルフが使ったのと同じような魔法を使ったのは、わざとです。

 使ってみてわかりましたけど、威力とかはこちらの方が断然上みたいです。

 その分、制御に難があるみたいですけど、僕はチートしているので、とても簡単に扱えています。


 うん。

 管理人さんが、気を付けてと忠告してくれましたが、むべなるかなと思います。

 本当に、スイッチ1つ渡されて、これで爆弾が使えるよ、と言われたようです。


 まぁ、目の前のクソエルフたちには躊躇なく使いますけどね。

 それが何か?


 そんなわけで、風でできた球体を放ちます。

 もちろん、兄エルフのみぞおちに、です。

 やられたら、やり返す。

 これは古代からある、自然の摂理なのですよ。


「ぐげふぅ!?」


 愉快な声を出して、兄エルフは崩れ落ちました。

 もうちょっと、頑張れ。


「『ウィンドバレット』」


 今度は、少し小さいですが、その分、数を多くした風の弾丸を放ちます。

 兄エルフの顔や手足を撃ち抜きました。


「ガッ、ゴッ!?」


 これは、ボクシングでいうならジャブみたいなものですので、そこまで痛みはないと思います。

 気絶させないために、撃ったのですよ。


「……テメェ!?」


「何しやがった?」


 他のクソエルフたちが、ようやく事態を把握したのか、声をあげました。

 ……遅いですけどね。


「このやろう! 『ウィンドボール』! ……なんだ、発動しないぞ!?」


「なに、ふざけてんだよ? 『ウィンドボール』! ……どうなってるんだ、これ?」


 クソエルフたちは魔術を使おうとしますが、無駄です。


「『ライトニングボルト』」


 バチィッ!


「ギャッ!?」


「グヒィッ!?」


「ギガッ!?」


 帯状の雷撃が、クソエルフたちの間を駆け巡ります。

 全員、ぶっ倒れました。

 威力は弱めてあるので、動けないだけでしょう。


「グ……『ヒール』! 『ヒール』! 何で使えないんだ!? 『ヒール』『ヒール』『ヒール』!」


 兄エルフは必死で回復しようとしていますが、そんなことはさせませんよ。

 ……実はちょっと懸念があって、自分自身にかける魔術なら使えてしまうのでは? と思いましたが、無理だったようですね。

 あー、良かったです。


「『マギマテリアライズ:アームズ』」


 続いての魔法を使います。

 この魔法は、魔力を物質化させて、武器の形状にするものです。

 かなり頑丈で、仮に壊れても周囲の魔力を利用して簡単に修復ができるという、鍛冶屋泣かせの魔法なのです。

 欠点は、あまり複雑な形状にはできない、ということでしょうか。なので、防具はできません。せいぜい盾くらい、ですかね。


 今回、僕が作った武器は、チャンバラブレードです。

 もちろん、形だけがそうなのであって、ウレタン素材ではないのでふにゃっとはしてません。


 剣なんか使ったことはないので、それに近いものにしました。

 これなら、適当に振り回してもそれなりに扱えるでしょう。


 では、早速。


 ガンッ! バキッ!


「ぎゃあっ!?」


 僕は魔力製チャンバラブレード(ただの棒ともいう)を、思いきり兄エルフの膝に振り下ろして、砕きました。

 これで歩けないですね。

 僕には『身体強化』が発動中なので、これくらい造作もありません。

 ちなみに、兄エルフも『身体強化』の魔術がかかっていたのですが、結界のお陰で無効化されてました。

 結界ってスゴいですね、いやマジで。


 この調子で、他のクソエルフどもの足を砕きます。

 BGMは、彼らの悲鳴でした。

 フンフンと、僕も鼻歌でハミングしますが、全くマッチしませんね。


「グ……何でだ、何で魔術が、使えないんだ……どうして、お前が魔術を使える……んだ?」


 うん?

 兄エルフがなにやら呻いていますね?

 うるさいなぁ。


「『ウインドボール』」


「ぎゃあっ!?」


 あ……股間に直撃してしまいました。

 兄エルフはそこを押さえて、悶絶してます。

 ……黙ったから、まぁ良いか。


 ふむ?

 他のクソエルフどももウルサイですし、同じように黙らせましょうか。


「『ウインドボール』×10」


 ドガガガガッ!


 うん。

 静かになりました。

 まぁ、呻き声くらいは妥協しますよ。


 さて。


「お兄様、いろいろとお世話になりました」


「……」


「何か喋ってくださいよ」


 サッカーボールキックで兄エルフに顎を蹴り上げました。

 感触からいって、顎の骨が折れてしまったようですね。

 これでは喋れないですけど、まぁ何か話されてもウザいだけなので、これはこれで良いでしょう。


「僕──じゃない、私はここから出ていきます。

 もう2度とお兄様と関わることはないですから、これでお別れです。

 さようなら。

 それと、最後に。

 ここで、私にサクッと殺されるのと。

 この建物に火をかけられて、じわじわと死んでいくのと。

 どっちが良いです?」


 二択ですから、話せなくても首を振ることで選べるでしょう。

 さあ、どっちです?


 先ほどとは逆に、僕が兄エルフの髪を掴んで頭を持ち上げました。

 兄エルフの目には、混乱と恐怖が見えます。


 魔術が使えなかったイー君は、いつもあなたたちに対してそう感じていたのですよ?

 それがどれだけのことか、今のあなたにはよく理解できていることでしょう。


 あなたたちは、イー君を自殺にまで追い込みました。

 イー君が死ななかったのは、結果的にそうだったというだけで、あなたたちが手心を加えたからではありません。

 むしろ、死よりも酷い現実があったのです。

 そうした結果、イー君は別の世界に逃げ出し、その存在は消えてしまうこととなりました。


 そこに現れたのは、何故か僕です。

 全く関係ないはずなのに、何で僕はこんなところにいるのでしょう?

 それもこれも、全てあなたたちのせいです。


 だから、これからすることはイー君には関係ありません。

 僕の復讐です。

 誰に言われたのではない、僕自身が決めたことです。


 最初は、これはただの八つ当たりだから止めよう、ここから黙って立ち去るだけで良い、なんて考えていました。


 けれど、やって来たあなたたちが、僕の背中を押してくれました。

 あなたたちが本当にクズで良かった。

 これで心置きなく八つ当たりが、復讐ができます。


 まぁ、こんな事情はどうでも良いでしょう。

 あなたたちは知らなくても良いです。

 むしろ、このまま──混乱したまま死んでいってください。

 理解も、同情もいりません。

 あなたたちにそんな感情を向けられたくないのです。


 ……ふぅ。

 まだ、心が千々と乱れています。

 『何で自分がこんな目に遭うんだ……』とばかり考えていました。

 そして、それは目の前の兄エルフも同じように考えていることが、余計に僕を苛立たせます。


 さっさと選んでくれませんか?

 兄エルフの眼球に指を突き立て、潰しました。


「ッぁぁぁぁあああーーー!?」


 絶叫をあげる兄エルフ。

 ウルサイですよ。

 というわけで、喉を潰します。


「────っ!?」


 よし、静かになりました。

 ところで、そろそろ選んでくれませんか?


 とっとと死ぬか。

 じわじわと死ぬか。


 どっち?

 ……いや、首を振ってばかりではわかりませんよ?

 もう片目も潰しましょうか? えい。


「────」


 さあ、どっちが良いですか?


「……ぉ…………ぃ」


 ん?


「ぃ、ぁ……ぅぅ……ぉ……ぉぃ……ぇ……」


 んー?

 い、あ、う、う、お、お、い、え。

 い、ま、す、ぐ、こ、ろ、し、て。

 『いますぐ、ころして』かな?


 ……ふむ。

 ようやく選びましたか。

 わかりました。


 では、お覚悟を。






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