表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/193

77

遅れました。

申し訳ありません。


 ふはははは、僕は風だ!

 風になっているのだ!


 ウィルフレッド(ゴーレム)に乗って、雪原の中をひた走ります。

 一面遮るもののないここは、なにも考えずに、ただ前へと進むことができるから、とても爽快です。


 日本にいた頃は馬に乗ったことがなく、友人から乗馬は最高です、というのを聞いても全くピンと来ませんでしたが、実際にやってみると(乗っているのは馬ではないですが)、その気持ちはとてもよくわかりました。


 初めて乗ったときはあまりの揺れに乗り物酔いしましたが、それは他人(ヴィッキー)の後ろに乗っていたからで、今みたいに自分で操縦していると気持ち悪さなどなく、ただただ楽しいです。


 そういえば、車の免許を取得したときもそうでした。


 教習所の先生によると、加速や停止、曲がるときなどが自分のタイミングでわかるので、三半規管への影響が軽減されるとかなんとか。


 なので、今もそうなのでしょう。


 走らせる前は、酔ったら回復魔法を使えば良いか、と考えていたので、良い意味での誤算でしたね。


 とても気分が最高なので、どんどんウィルフレッドを走らせます。


 天気が良くて積もった雪が眩しいけれど、こういうときはフルフェイスの兜を被っていて助かるなぁ、とか思います。

 魔法なんかの効果で、寒さはほとんど感じられないのもあって、グイグイと速度を上げていきました。

 雪を蹴立てているので、パウダースノーが煙のように巻き上がっていきます。

 端から見たら何事か、と思うような光景かもですね。


 ここで、ピンと閃きました。


──『マリオネットアーム』──


 〈道具〉(アイテム)から魔鉄の巨剣を取り出して、魔力の腕に持たせます。

 それを、ウィルフレッドに乗ったまま、ブンブンと振り回しました。


 両サイドで振ってみたり、あるいは、前方で薙ぎ払ってみたり。


 ふむ?

 これはなかなか良さそうですね。

 大量に魔物が出てきた場合、今みたいに、魔物を殲滅しつつ移動できると、生存確率が大きく違いますからね。


 そういう機会があるのかどうかわかりませんが、想定しておくのは、良いことでしょう。

 備えあれば嬉しいな……ではなく、備えあれば憂いなし、と言いますからね。


 うん。

 やっぱりダンジョンみたいに狭いところでいるよりは、こうやって広い場所で開放的にいた方が楽しいです。


 これからも、たまにはこうやって全力で広い場所を走るのも、アリかもしれないですね!






 しばらくそうしていると、さすがに少々疲れたので、ウィルフレッドを止めて休憩することにしました。


「ぴゅっ!」


 マシロには、丸々と焼けたオーク肉を食べさせ、僕は街で買い込んだ食べ物を取り出して食べます。

 この〈道具〉(アイテム)の中に仕舞うと、温度やなんかは全く変化しないので、とても便利です。

 寒空の下で熱々のものを食べるなんて、最高の贅沢ですなぁ……!


 僕とマシロは黙々と食事をします。

 僕は普段から食事のときはあまり喋らないし、マシロは言わずもがなです。


 いつもワイワイと騒がしかったのはヴィッキーにシア、それとルナがいるからなのだな、と改めて気付きました。


 と、ここで僕の視界の隅になにかが見えました。


 はて……?


 ここは一面遮るもののない雪原のど真ん中です。

 そしてさらに、僕はウィルフレッドに乗ったままなので、その視点はかなり高いです。

 移動モードの地竜型なので3mほどあり、その上に僕が座っているので、恐らく4mくらいに僕の目はあります。


 にも拘わらず、それ(・・)は唐突に僕の目に入りました。


 白い白い雪の中に、ポツンと佇む黒いそれ(・・)


 僕との距離は結構離れているためハッキリとはわかりませんが、どうやら人のように見えます。

 ただ……いくら目を凝らしても、足跡のようなものが見えません。僕の視力は相当良いので、それくらいなら見えると思うのですが……。


 尤も、魔術のような不思議な力があるので、宙に浮いてそこまでやって来た、という可能性もなきにしもあらずですけど。


 それでも、この開けた空間でフワフワと浮いていたら、視界に入りそうなものです。


 それとも……?


 と首を傾げて考えていたら、また新たな闖入者の姿が見えました。


 その黒いそれ(・・)のさらに奥から、ぞろぞろとオークの群れが現れました。


 ……つか、アイツらはどうして、こんな寒い中を群れて歩いているのでしょうか?

 食べ物なんかはそう簡単に見つからないでしょうし、それを求めるなら森とかへ行けば良いのに。


 なんだろうね?

 僕みたいな冒険者がいるのを期待しているのかな?

 だとしたら、かなり効率悪いと思うのですが……。


 まぁ、良いか。

 オークの考えることなんか、全くわかりません。

 気にするだけ、ムダですね。


 ……って、そんなことはどうでも良いです。


 あの黒いなにかに、オークの群れが向かっています。


 あれって、人──それも女性っぽいし、助太刀した方が良いかな?

 クッコロなんて展開になったら、イヤですしね。


 でも、こんな場所に1人でいるくらいだから、それなりに腕に自信があるのかも。

 だとしたら、「横殴りした」だなんて、文句を言われる可能性もあります。


 んー?

 どうしたものかな?


 そうだなぁ……近付いて聞いてみましょうか?

 助けを求められたらそのままオークを倒せば良いし、大丈夫だって言われたら離れて見ていれば良いし。


「よし、行こうか、マシロ」


「ぴゅぴゅっ!」


 僕はマシロを一撫でしてから、横向きだったウィルフレッドを方向転換し走らせ──


「っ!?」


「ぴゅっ!?」


 ──るや否や、()()()()()()()()()()()()()()にぶつかってしまったのでした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ