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今まで戦うことのできなかったシアでも扱える武器はなにか?
そう考えて、出した答えは銃器です。
銃器と言っても、火薬を使った地球由来のものではなく、魔術を利用したものはどうだろうか、と考え、いろいろと試行錯誤してみました。
調べてみたところ、過去に幾人もの日本人が転移、もしくは召喚されたことで様々な技術が広まっていて(特に料理法)、テンプレですが火薬なども作られたようです。
しかし、魔術があるこの世界において、作るのに手間暇がかかる火薬は、さほど有用ではなかったようで、銃器は発展しなかったみたいです。
それでも銃器はロマンなのか、いろいろ研究が行われたようです。
火薬が面倒なら、魔術を使って銃弾を飛ばせば……という発想が出てきました。
しかし、たかだか小さい弾丸を飛ばすのに魔術を使うくらいなら、普通に魔術で攻撃すれば良いのでは……? ということで却下になりました。
そもそも、『ストーンバレット』という下級魔術があり、これが日本人の知る一般的な銃器よりもよっぽど強力であったため、結局、銃器の開発は頓挫したのでした。
銃器のメリットとして、魔術の使えない人でも使える強力な武器、というのもないではないですが、それだって魔道具と呼ばれるアイテムで十分だったため、デメリットだけが目立ったのが失敗の原因ですね。
そこで、僕たちは考えました。
商売だったり、量産を考えるからダメなんだ。
どうせ自分専用の武器なのだから、コストやその他諸々のことは無視してみよう、と。
というわけで、できたのがこれです。
形状は、ほぼショットガンです。
中折れ式水平二連型ショットガン、というやつだったかと記憶しています(定かではありません)。
まぁ、形はそれほど関係ありません。
ただ、僕が見たことがあった(田舎の祖父の友人が持ってたので、見せてもらった)ので馴染みがあったことことと、弾がとある理由からどうしても大きくなってしまい実包みたくなったことで、銃身もショットガンっぽくなりました。
その銃弾が大きくなった理由というのが、この武器のキモです。
ところで、魔術というのは、使用の際に基本的に術者を起点に術が発動します。
例えば、『ストーンバレット』は、石礫が術者のかざした掌から射出されるのです。
もちろん、魔道具も同様です。
一般的な攻撃魔術用の魔道具は、杖型や指輪型、ペンダント型をしていますが、いずれもそれを起点に魔術が発動して、火の玉や石礫を飛ばしたりします。
では、銃弾を起点に魔術を発動できたらどうだろうか?
銃弾それ自体が、魔道具という考えです。
銃口から銃弾型魔道具が高速で射出され、着弾と同時に、衝撃によってその銃弾に付与された魔術が発動するのです。
これはかなり強力だと思います。
例えば、単純に火炎が発動する銃弾を撃ったら、それが身体内に侵入し、そこで魔術が発動、直接身体の中を火炎で炙られるというわけですから。
自分で考えといてなんですけど、かなりエグいです、これ。
いろいろな種類の銃弾型魔道具を用意しておけば、結構有利に戦えると思います。
もちろん、この武器は欠点だらけです。
銃弾を魔道具にするので、弾がどうしても大きくなり、実包みたくなったことで、速度や飛距離に若干の難があります。
それは、命中率に影響しますので、魔物に当てるのが難しくなりました。
銃身に工夫をして、当てやすくなる細工を凝らしまくり、落ち着いて狙えばかなりの命中率になりましたけど、その分、扱いにくく整備が大変です。
銃自体が、撃ち出したものを真っ直ぐ飛ばすだけの魔道具になってしまったのでした。
また、魔道具というのは作るのが大変なのでとても高価な代物ですが、その高級品を使い捨てにしているので、コストが尋常ではなくなりました。
ぶっちゃけ、普通に材料を集めていたら、即座に赤字だらけの借金まみれになるでしょう。
……まぁ、実包のための真鍮やその他の金属は僕の魔法でいくらでも作れるし、魔道具化に必要なあれこれも、シアが安い材料から作れるので、なんとかなっています(それでも、撃ちまくれば確実に赤字ですけど)。
銃の整備も、シアならそこまで苦労することなくできるので、そこまでのデメリットではありません。
そうなのです。
量産など考えず、完全に僕とシアありきの武器としてなら、なんとか運用可能になるのです。
ある意味、欠陥だらけのこの銃を魔銃、弾は魔術弾と呼んで、完全に専用の武器となるのでした。
「じゃあ……手頃な魔物が出てきたから、魔銃の試射をするわぁ……」
ちょうど1匹だけフラフラとゴブリンが近寄ってきたので、これ幸いというものにばかりに、シアは魔銃を両手でしっかりと構えます。
練習として的には何度も撃っていましたが、生物を狙うのは初めてなので、シアは慎重に狙いを付けます。
ドン!
そして、ゆっくりと引き金を引くと、発射音と共に銃口から魔術弾が飛び出しました。
それはゴブリンを腹に狙い違わず直撃し、その瞬間、魔術弾は魔道具として魔術を発動──せずに、ゴブリンを貫通しました。
あれ?
「あらぁ……?」
少ししてから、ボガンという爆音と、わずかに振動が伝わりました。
「今のって……?」
「『ファイアーボール』の魔術が付与された魔術弾よぉ……」
んー?
もしかして、貫通していった魔術弾が壁かなんかに当たり、そこで魔術が発動したのかな?
倒れているゴブリンはマシロの胃袋行きにして、テクテクと歩いていくと、案の定そこは曲がり角になっていて、突き当たりの壁は軽く焦げていました。
ふむ?
「もしかして……威力が強くて、ゴブリン程度だと貫通してしまうから、魔道具として上手く魔術が発動できない?」
おかしいな……。
着弾したら、衝撃で魔術が発動するようにしたのだけど……。
ゴブリンを貫いたくらいでは、ダメなのかな?
「うぅん……それなら、この魔術弾は切り札みたいな扱いにして、強力な魔物のときに使うようにするわぁ……。
あとは、気軽に使える普通の銃弾を用意しておけば良いかしらぁ……?」
まぁ、そうなってしまいますか……。
あまり軽い衝撃でも魔術が発動するようになってしまうと、持ち運びの際や、銃に弾を込める際に、暴発してしまう可能性がありますからね……。
普通の銃弾──単発弾とかでも、十分強力なはずですし、普段使い用のならそれでも問題ないですかね。
「あ……この先にも魔物が1匹います。
もう1回くらい、試してみましょう」
「そうね……」
そう言って向かってみると、そこにいたのはオークでした。
「あれなら腹の脂肪は分厚いから、そう簡単に貫通しないと思います。
やってみましょう!」
「わかったわぁ……」
シアは両手で魔銃を構えると、しっかりと狙って──
ドン!
ボゥン!
魔術弾が直撃したオークの腹から炎が吹き上がり、体内から肉片が爆ぜました。
大穴が空いた自らの身体を見下ろして──ゆっくりとオークは倒れます。
…………。
グロい!
「むぅ……即死しなかったわぁ……。
もう少し、改良の余地があるかしらぁ……?」
いやいや!
十分じゃないですか!?
結構エグい威力がありましたけど!?
「でもぉ……オーガとかなら、あれくらい耐えられそうよぉ……」
そう言われて、僕は先日戦ったオーガを思い起こします。
…………。
あれ?
確かにそうかも……。
オーガなら、腹に穴が空いて燃えたくらいでは死なないか。
でもなぁ……。
「今のは『ファイアーボール』だったから、他にもいろいろ試してみようかしらぁ……?
『ウィンドカッター』とかぁ……あ、『ストーンバレット』だとお腹に石礫が出てくるから、面白いかもぉ……?」
……うーん?
これでシアも戦闘に参加できるようになったから、パーティーの戦力は上がったのだけど……なんか失敗した気がひしひしとします。
僕は、ブツブツと呟き、惨たらしく魔物を殺そうという計算を嬉々として思い浮かべるシアを見て、なんか開いてはいけない扉を開けてしまったのかも……と、背筋がひんやりとするのが止まらなくなってしまったのでした。




