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大恥をかいた日の翌日。
僕は、食堂でモグモグと朝食を食べています。
一晩ぐっすりと眠り、起きてから思いきりトレーニングして身体を動かして、たっぷりと汗をかいて、熱いお風呂に入ったら、昨日のことは忘れました。
ええ、すっかりと忘れたので、掘り返さないようにしましょうね。
……でないと、また頭を抱えてプルプルと震えそうですから。
こほん。
それはさておいて。
朝食の献立は、白米と野菜たっぷりの味噌汁、鯵っぽい魚の干物、生卵、冷奴、お漬物です。
旅館の朝食に出てきそうな定番の和食で、ここが異世界だったことを忘れそうになるほどです。
まぁ、お米は日本の米とは別の種類なので匂いや味が違うし、味噌汁も、昆布や鰹節の出汁ではなく、具となった野菜が出汁になっているから、味噌汁というよりはミソスープという感じでしょうか。
そもそも、味噌も使われている豆が大豆じゃないらしいので、そこも違うわけですし。
だからか、食べてみると、まず違和感を感じて。
でも、そのうちに慣れてくると、美味しく頂けるようになりました。
大体、違和感を感じるのは、日本の食べ物を覚えているからで、それがなくなってくると、この土地の食材ならではの調理法なのだなと思えるようになったのです。
そうしてようやく「あ、ここは日本とは違う場所……異世界にいるのだな」と実感したのでした。
……正直、遅いなぁと思わなくもないですけど、まぁ、こんなもんじゃないですかね。
ちなみにこの国では、過去に日本人が多くいたために、食事文化が完全に侵略されています。
和洋中、なんでもありますので、正直、この国の食事がどのようなものだったか、逆に気になります。
それと、鶏の卵は魔術で殺菌されているらしく、生で食べても安心です。むしろ日本のそれよりも安全かもしれないですね。
また、魚も魔術での冷凍技術がしっかりしているため、鮮度抜群で離れた場所まで輸送できるそうです。
今食べているのは干物ですが、生でも食べる習慣があるのは嬉しい限りですね。
魔術を使うことで、野菜の栽培なども日本と同じかそれ以上に発展していそうです。
全く自重しなかったんだなぁ、日本人……と、しみじみとさせられました。
閑話休題。
生卵でご飯を1杯、魚の干物でご飯を1杯頂き、最後に使用人の女性に緑茶を入れてもらい、それをお代わりしたご飯にかけて、お茶漬けにして、お漬物と一緒にズズッと啜ります。
食べ過ぎかな? 行儀が悪いかな? と思うのですが、ご飯が美味しいから仕方ないのです。
まぁ、朝から身体を動かしたし、たくさん食べても問題ないよね?
まだ八分目ですし……。
ただ、僕の身体が大きくないからか、側にいる使用人の女性は、そんなに食べて大丈夫? みたいな目でいつも心配そうに見てきてます。
……毎朝のことなので、いい加減慣れてくれても良さそうですが、見た目と違ってたくさん食べるので、おかしく感じられるそうです。
それもこれも、食事が美味しいからなんですけどね……。
調理担当の使用人の方に「ご馳走さま」と言って、僕は食堂を出ました。
朝食を食べたあとは、冒険者ギルドに行きます。
今日は、シアは工房でずっと作業をするそうですし、ヴィッキーとルナは一緒に訓練をしていました。
なんでも、連携についてみっちりと身体に覚え込ませるんだ、と気炎を上げてましたからね。
練習相手のヴィルヘルムさんのお身体が心配になりますが、あとでお酒を持って晩酌に付き合いつつ、回復魔法で癒してあげたいと思います。
さて、そんなわけでマシロと2人でなにかすることないかなぁ、とギルドにやって来た次第ですが。
建物の中に入ると、新たに発見されたダンジョンの話題で持ちきりです。
まだ、調査が終わってないのでどういったダンジョンかわかってないのですが、だからこそ、皆さんは気になっているのでしょう。
もちろん、僕も気になりますが。
ま、入ることは禁じられているので、今日は別のことをしましょう。
冬の季節だけあって、あまり依頼がありません。
寒いから、魔物もいないのですかね?
それでも、ゴブリンなんかはポツポツと出てくるので、倒しておかないと、暖かくなったときに一気に増えてしまうため、ゴブリン退治の依頼がなくなることはありませんね。
全く、ゴキブリみたいな連中です……。
「ぴゅっ」
まぁ、マシロのおやつにはなるので、見付けたら倒しておきましょう。
僕のお小遣いにもなりますからね。
他には……と、薬草採取がありますね。
これにしますか。
雪の下に生えているのを探すのは骨で、他の冒険者たちは受けたがらないので、この季節はちょっと高めの依頼料なんです。
僕は魔法で探せますから、お得な依頼ですので、受けましょう。
ふむ。
これくらいにしますか。
どうせマシロと2人だから、あまり本腰を入れてやるつもりもないですし。
のんびりと過ごして、昼過ぎくらいに終わらせられたら良いですかね?
では、行きましょうか。
薬草はポーションの原料であり、そのままでも薬効のある草です。
正式には、快癒草という名称があるのですが、ほとんど誰もが薬草と言っているくらいメジャーでポピュラーでありふれたものです。
怪我をしたら、薬草を使うというのは当然のことで、それは魔物──とりわけ人型の、ゴブリンやコボルトのような──でも同様なのです。
魔物たちはどういうわけか薬草の在りかに精通していて、その近辺にたむろしていることが多いのです。
というわけで、僕は『サーチエネミー』の魔法で魔物を探し、離れた場所から矢で死なない程度の怪我を負わせると、その魔物は薬草のところまで行き怪我を癒そうとするので、その薬草を横取りする、という作戦を決行して、いくつかの薬草を得ました。
まぁ、そんなに効率が良いわけではなのですが、雪の下に生えている薬草をいちいち掘って探し回るよりかはマシですね。
ついでに、ゴブリンなどの魔物も倒せてますし。
「ぴゅ〜」
依頼が思ったよりも早く完了してしまったので、マシロにおやつを食べさせつつ、僕はウサギ狩りをします。
この時期は、ジャイアントラビットという大きな(小さめの牛くらいのサイズ)ウサギがいるから、そいつをゲットして、晩御飯の一品に加えてもらおうと思います。
ただ、大きいだけあって、ゴブリンなんかよりも強くて危険な魔物です。
毛皮も真っ白なので見付けにくいから、ノコノコと雪原を歩いていたら背後から強襲された、という話をギルドでもよく聞きます。
尤も、僕は魔法で見付けられるので、とってもおいしい相手なのですが。
離れた場所から矢で狙う良い練習にもなりますし、その意味でも率先して倒したい魔物です。
なのですが……。
…………。
……。
見付かりませんね……。
2時間ほど周辺をフラフラしていましたが、いたのは相変わらずのゴブリンだけです。
満たされているのはマシロの胃袋だけで、午後1時を過ぎた段階で、お腹が空いたので僕は諦めて帰ることにします。
得られた収穫は、薬草とゴブリンのみ。
かなりショボいですが、まぁ、たまにはこんな1日も良いでしょう。
寒いし早く戻って、美味しいものでも食べ歩きしまくりますか!
僕はそんなことを考えながら、踵を返したのでした。




