表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/193

69

 僕は魔法を使えるのは、ひとえにマシロがいるからです。


 正確に言うと、魔法を使っているのはマシロで、僕は何の魔法を使うかを選択しているに過ぎないのです。


 その魔法の数は、膨大です。

 正直、メニュー画面にある〈魔法〉(スペル)のリストを見たときは、目眩(めまい)がしました。

 攻撃用の魔法は禁じられているため使えないのですが、その分もリストから消されておらずグレーアウトしてあるだけなので、なおさら量が多くなっています。


 並び替え(ソート)できれば良いのですが、五十音だったり、『下級』『中級』『上級』などのランク毎だったりと、微妙に使い辛いのです。


 検索もできますが、魔法名にはどういうわけか英単語が多く(ラテン語もそこそこある)、学生時代に英語の成績が残念だった僕としては、非常に苦労しています。


 そんなこんなで、実は僕は、(マシロが)魔法がどれだけ使えるのか把握していません──把握できない、といった方が正しいでしょうか。


 どれだけ便利なものでも、使いこなせないのでは宝の持ち腐れです。


 例えて言うなら、超高性能コンピュータを与えられた幼稚園児、みたいなものでしょう。

 キーボードの平仮名や片仮名をなんとなく理解して、ポチポチと叩いて、画面に文字や絵が出てきて喜んでいる。

 今の僕は、そんな程度のものです。


 まぁ、それでも絶大な効果を発揮しているわけですが。


 特に、『サモンソイル』と『メイクメタル』の魔法の組み合わせの効果は素晴らしいです。

 よくぞこんな魔法を見付けたものだと、自画自賛したくなりました。


 『サモンソイル』の魔法で土砂を出して、『メイクメタル』で望む金属を抽出、精製する。

 魔力を多く込めれば、『サモンソイル』で出す土砂に金属成分を多く含ませることが可能なので、これだけで鉄などの金属をいくらでも作れるのです。

 ……いや、いくらでもは言い過ぎですが。


 尤も、誤算もあります。

 今、僕がいるこの場所が地球ではなく、異世界であることを忘れていました。


 そうです。

 地球にはない、謎の金属があったのです。


 僕はただの鉄を作りたかったのですが(いずれ玉鋼にも手を出すつもりだった)、何故か魔力を宿した鉄──魔鉄ができてしまいました。


 ここで僕は、マシロの魔法が先程の例で言うところの超高性能コンピュータであることに気が付きました。


 使用者である僕の思惑を超えたものが作られてしまったのです。


 もちろん今回のケースは例外の偶然の産物なのでしょうが、こういったことが起こり得てしまうとなると、様々な金属を作るのに、とても苦労しそうです。


 逆に考えれば、ファンタジー金属──アダマンタイトやオリハルコンなども魔法で作れる可能性もある、ということなのですが。


 ……まぁ、それができるまで、スゴい時間の試行錯誤が必要になるのでしょうね。


 とりあえずは、代表的なファンタジー金属であるミスリルを作るのを試してみたいと思います。

 そうやって、段階的に難易度を上げていきましょう。

 今は試すことすら無理ですが、いずれはオリハルコンにも挑戦したいです。


 超高性能コンピュータを与えられた幼稚園児だって、いつかはそれを使いこなせる日が来るのですからね。






 魔鉄をシアに渡したら、製作意欲が刺激されたのか、工房にすっ飛んで行きました。

 これから徹夜で、みんなの武具を拵えるのでしょう──ヴィッキーの剣以外。

 あとで、食べるものを持っていくとしましょうか。


 さて、ちょっと実験を。


──『サモンソイル』──


──『メイクメタル』──


 意識して鉄を作ろうとしたら……できました。

 敢えて魔力を抑えないと、魔鉄になってしまうみたいです。


 ふむ?

 魔鉄を大量に売るのはシアに禁止されてしまいましたが、鉄なら構わないでしょう──あまりやると値崩れしてしまうから、ほどほどにですけど……。


 でも、まぁ、これでこれからお金に困ることはなさそうです。


 はっ!?

 ピンときましたよ!

 僕の灰色の頭脳が閃きましたよ!


 確か宝石って、岩とか鉱物が熱せられたり冷えたりして結晶化したもの……ではなかったですか?

 自然にできるものなのだとしたら、魔法でもなんとかできるのでは……?


 いやいや、待て。落ち着け。

 ここは冷静になりましょう。


 今はまだ無理ですが、いずれはできるようになりましょう。

 そうなれば……くくく、億万長者ですよ!


 お金があれば、大抵のことは可能になります。


 そうなれば、恋人の家で居候をするなどという情けないことからも、脱却できるのです。


 ふふふ、ははは、ふはははは!

 夢が広がるのです!



「ああ、魔宝石ね。

 結構、流通しているわよ」


「はい?」


 僕の灰色の頭脳が繰り出した、『魔法で宝石を量産、一気に億万長者大作戦』のアイディアを、ヴィッキーに話しました。

 シアにも自慢したかったのですが、忙しそうにしていた(魔鉄を触ってニヤニヤしていました)ので、ティータイム中のヴィッキーを見付けて、自慢したのですが……。


「魔術で作れることが、どれくらい前だったかしら……数百年とかだと思ったけど、かなり前に発見されてね。

 それ以降、天然物の宝石と、魔術製の宝石──魔宝石とが区別されたわ」


 …………。


「見た目はほとんど一緒だけど、魔宝石はその名の通り、魔力を帯びているから、すぐにわかるの。

 最初の頃は、詐欺があったとか習ったけど、今はもう全くないわね。簡単に比較できるし。

 まぁ、そんなことやったら重罪だけど……」


 …………。


「魔宝石は、いろいろなことに使えるから、便利なのよ。

 魔術の行使に補完したり、魔力を貯めておけるのがあるから、それを使えば魔術の使えない人でも使えるようになったり……ああ、魔道具にも使われたりするわね」


 …………。


「だから……そんなに大儲けはできないわよ」


「ぴゅっ……」


 ……ノォォォォッ!?

 なんてことですか!?

 既に同じことを考えた人がいたなんて!


 ぐはぁっ!?

 恥ずかしい!?

 ドヤ顔で自慢しておいて、この様なんて!?


 テーブルに突っ伏して、頭を抱えてプルプルと震えている僕を見て、ヴィッキーはどんな表情をしているのでしょう?


 プークスクス、と笑っているのか。

 はぁ、と溜息を吐いて呆れているのか。


 どちらにせよ、恥ずかしさのあまり、表を歩けません。


 頬の熱が引かないまま僕が悶えていると、頭をポンポンと撫でられました。

 チラリと見ると、慈愛の表情をしたヴィッキーが僕の頭に手を伸ばしています。


「ふふ、別に居候でも良いじゃない。気にすることないわよ」


「ぴゅぴゅぴゅ」


 ……くっ、殺せ!

 ひと思いに、僕のことを殺してください!


 エルフだけど、男である僕の『クッコロ』なんて誰得なんですか、と現実逃避した頭の片隅で考えつつ、僕はイヤンイヤンと悶え続けるのでした……。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ